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トップアタッカーとのコラボ・中

 普段は明るいというか遠慮のないグレイスも流石に真理の迫る松明が来るのは完全に想定外だったらしい。

 二人が注文の紅茶と焼き菓子を置いてカウンターの奥に戻っていった。

 ただグラスを拭きつつ興味津々って感じでこっちを見ているのは分かるが。


 アストンたちはまだ緊張しきった顔でカイエンたちを見ている。

 7割方が埋まっていて普段は賑やかな店内だが、今は微妙な雰囲気だ。ひそひそと話す声が聞こえてくる。

 というか注目を集めている。

 

「時間が無いから単刀直入に聞きたい。いいかな?」


 その雰囲気を意に介さずって感じでカイエンが口を開いた。


「……俺達で答えられることなら」


 俺が答える。

 固まったままのアストンたちは応対できる状態じゃないから仕方ない。


「君達には何が見えているんだ?君たちのアタックはマップがすべてわかっているとしか思えない」


 探るような目でカイエンが言う。


「ああ……誤解しないで。知ってることを教えろとかいってるわけじゃないのよ」

「仮に君がマップを知っているなら、それは君だけの財産。誰にも言わないのは当然だ。単に興味があるだけだよ。

世界は広い。未知のスキルがあるのか、それとも何らかの記録があるのか」

「そうなのよね。それに次に何が出てくるか分かってるってくらいに反応が速いでしょ」


 二人が言うが……それは研究の成果だ。

 すべて、とは言えないが、RTAの記録を取りに行ったステージの敵に出現パターンや攻撃パターンは徹底的に研究した。


 迷いが無いように見えるのは、研究を信じて確率の高い方に動いているだけだ。

 迷いはタイムロスに繋がる。


「RTAをやるのか?」

「いや、やらない」


 カイエンがきっぱりと言う。


「俺たちの客はそういうのを求めてないだろう。

それに俺達のパーティには騎士ナイトがいるから真似は出来ない。

あと、あのスタイルで君達に勝てるとは思えない。俺たちは俺たちのやり方で行くよ」


 カイエンが言う。この辺は流石だ。

 騎士ナイトは耐久力と防御力に優れた前衛クラスだが、その代償として足の速さには難がある。

 バトルでは頼れる必須のポジションだが、RTAではその足の遅さがハンデとなる。

 

 時流に流されず自分の強みと弱みを知っているのはトップクラスだ。

 RTAに限らずゲーム全般でこれは言えると思う。


「俺たちも、皆と同じやり方だと勝てないって思ってこういう風にしてる」

「……若いのになんというか、老成したアタッカーのようなことを言うんだな、アトリ」


 カイエンが感心したように言ってくれるが。

 まあ見た目はモブガンナーだし、トップアタッカーからすれば駆け出しだろう。

 一応世界記録保持者ではあるが。

 

「アトリ。マップを教えてくれ、とは言わないが、相談に乗ってくれるか?」

「相談ってなんだ?」


「バトルが起きやすいルートとか、深層まで行き易いルートとか。派手な戦闘に見栄えがするところについて教えてもらいたい」

「そういうことなら構わない」

 

 直接のライバルじゃないなら教えても差し支えはない。

 ミッドガルドをプレーしている時もRTA走者同士で結構情報交換はしたしな。


 聞かれたダンジョンについていくつかアドバイスする。聞いてくるのが全部SSランクのダンジョンな辺りは流石だ。

 ひとしきり話すとカイエンとイシュテルが大きくため息をついた。


「こんなこと知ってる人いないわよ」

「まったくだ。まさかとは思うが……SSランクダンジョンに君は行ったことがあるのか、アトリ?」

「ああ……どうかな」


 ミッドガルドのプレーでは何度も行ったが、この世界に来てからは行っていない。

 皆の視線が集まる……どう答えるべきか悩ましいな。

 答え難いことと察してくれたのか、カイエンが肩をすくめた。


「アトリ……よかったら俺達と……」


 そう言ってカイエンが言葉を切る。


「いや、止めておこう。話せてよかった。また話を聞きに来ていいかい?」

「ああ、もちろん」



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