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幕間・探索者の書庫亭のある日・2

「今日は特別なアタックが配信されますよ。どうぞ皆さんご覧あれ」

「うちの目利きの店主、エドワードが自らアルフェリズで契約してきたアタッカーたちだ。お見逃しなく」


 王都ヴァルメイロのメインストリートは今日も人と馬車が行きかっていて賑やかだ。

 メインストリートの一等地に面した老舗、探索者の書庫亭の前で道行く人に店員が声をかける。

  

「どうです、其処を行く奇麗な御婦人。本日のランチは当店で。特製のサンドイッチをご用意しております」

「でもアタックってね……野蛮な感じがしてあまり好きじゃないのよね」


 声を掛けられた二人の身なりの良い女性が言う。


「今日のはそう言うのとは少し違うんですよ。戦闘は行わないスタイルのパーティです。きっとお楽しみいただけます。うちは老舗ですからね。食事も美味しいですよ」

「じゃあ入ってみようかしら」


 そう言いながら二人が店内に入る。

 店内は8割がた埋まっていて、店員がきびきびした動きで料理を乗せたトレイを以て店内にを動き回っていた。


 磨かれた黒いテーブルには白い清潔なクロスが掛けられている。

 注文に応じて、奇麗な白い皿に載せられた料理が次々と運ばれてきた。

  

「ではそろそろ始まります」


 店員が声をかけると、店内に何枚も設置された映し板(ディスプレイ)に揃いの赤い衣装を着た4人の姿が映った。


「おいおい、若いな」

「まだ駆け出しじゃないのか?」


『今日はメリッサの地下牢獄です。目標タイムは35分で25階層』

『今回は新しく見てくれている人がいるかもしれません。俺たちの配信は速さ重視のスタイルです。目標タイムが切れるかどうか、お楽しみに』


「本当に面白いのかよ?戦闘しないんだろ?」

「まあご覧ください。私も見ましたが凄いですよ」


「そして皆さん。これは30年前に消えてしまったアタッカーのスタイル、スピードランの系譜を継ぐものです」

「此処に来られた皆さんは幸運ですよ。伝説の復活を是非ご覧あれ」


 店員が煽るように言う。


「スピードラン?まさか……あの伝説の?」

「知ってんのか?」 

「名前だけならな……だが、継ぐ者は絶えたはずだが……」


 客が言葉を交わし合う。

 見る見るうちに席が埋まり、興味なさげだった客まで画面の前にたむろした。


 

 映し板の中の4人が迷いなく走る。メリッサの地下牢獄の黒い鉄格子と白い月光のような光が飛ぶように過ぎていった。

 側道からくる敵が見えているかのようにガンナーが銃を叩き込む。


『そこを左。すぐに右に支道がある。そこに入るんだ』

『分かった!』

『次はどうするの?』

『そのまま直進。斜めにルートがズレるから注意しろ』


 最後尾のガンナーの指示に従って風のように走る4人は一つの生き物のように見えた。


「なんであそこまでわかるんだ?地図なんてないだろ?」

「わからん」


 ダンジョンのマップを作っているパーティもいるが当然それは門外不出の秘密だ。

 しかしまだ数戦のしかしていない若いパーティがこんな深層までのマップを持っているなんてありえない。


「酒が切れた。ワイン追加してくれ!」

「おいおい、目を離すなよ」


「今何分過ぎた?」

「25分12秒」

「今は19階層か」

「25階層まで行けるか?」


「あとどれだけだ?」

「24階層だ。今は34分10秒」


「行けるのか?」

「ここまで着たら行け!」

「頑張れ!走れ」


「……契約は正解だったな」


 盛り上がる店内と絶え間なく入る注文を見ながらエドワードが満足げに言う

 昼の時間帯は有力パーティが居なかったから客が少ない時間帯だったが、今日は違う

 店内は満席で、夕方の良い時間を超えるほどの盛り上がりだ。


 盛り上がりに呼応するように酒や飲み物、食事の注文がひっきりなしに入り、厨房はフル回転している。

 今日の勘定は幾らくらいになるのか、エドワードは胸の中でそろばんをはじいていた。

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