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【書籍化・コミカライズ】聖女様になりたいのに攻撃魔法しか使えないんですけど!?  作者: 青季 ふゆ@醜穢令嬢 2巻発売中!
第三章

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第93話 ジャックの好み=???

「ジャック君お疲れー!!」


 演舞会に出る者の控室。

 合流したエリーナがばちーん! とジャックの肩を叩いた。


「いって! 少しは加減しろ骨折れるかと思ったわ!」

「大丈夫、折れても私がすぐに治してあげるから!」

「俺は人形か何かか?」


 そんなやりとりをしている二人の元に、ユフィが駆けつける。


「ジャックさんー!! おめでとうございます!!」

「えっ……?」


 ユフィを見るなり、ジャックが硬直した。

 ぽかんと呆けた顔をして、ユフィに釘付けになっている。


「ジャックさんの勇姿、とても感動しました! 剣の戦いはカッコよかったですし、最後の最後でその剣が伏線回収になっていたなんて私凄く……ジャックさん?」

「あっ、ああ、わりい……俺のファンの子か何かかな?」

「えっ?」


 正気に戻ったジャックが、ユフィの手を優しく取って、妙に甘い声で言う。


「俺の晴れ舞台を見てくれてありがとう。この後時間あるなら、良かったらお茶でも……」

「あ、あの、ジャックさん……?」

「ジャック君、何を勘違いしているのかわからないけどその子、ユフィちゃんよ?」

「……は?」


 エリーナの言葉に、ジャックは素っ頓狂な声を漏らす。


 エリーナの顔とユフィの顔を見比べてから「ああっ!?」と悲鳴にも似た声をあげた。


「ユユユユフィなのか? お前なんて格好してんだ!!」

「あ、悪役令嬢? というコスプレらしいです……」


 どこかズレた回答を口にするユフィの一方で、ジャックの動揺は収まらない。

 そんな二人を見ていたエリーナが、なるほどぉと合点のいったような顔をして言った。


「好みは金髪碧眼でちょっと身長高めで悪そうな子……ねえ」

「やめろエリーナ!」


 顔を羞恥で赤くして語気を強くするジャックに、エリーナがぎゅいんっと顔を近づけて言う。


「ユフィちゃんに手を出したら……わかってるわよね?」

「おい大丈夫かエリーナまた聖女がしちゃ駄目な顔になってるぞ」


 目の前で何の会話が展開されているのかわからないユフィは首を傾げるばかりだが、やがて思い出したように声を張った。


「と、とにかくジャックさん、勝利おめでとうございます!」

「あ、ああ……」


 ごほんと咳払いをして、ジャックはユフィに向き直る。


「お前のおかげだよ、ユフィ」

「いえいえ! 私はそんな……」

「鍛錬中に、言っただろう。パワー以外の部分で戦った方がいいんじゃないかって」


 言いながら、ジャックは以前、鍛錬中にユフィに言われた事を思い出す。


 ──ジャックさんが私に対抗するのは厳しい気がしなくもないので、パワー以外の部分で戦っても良い気がしないでも無い可能性もゼロではありません!


「あ、ああっ!! 確かそんなことを言ったような気がしないでもないですごめんなさい差し出がましいことを……」

「いや、それが正解だったんだ」


 首を振って、涼やかな顔でジャックは言う。


「魔法の純粋なパワーを比べると、俺がハンス先輩に勝つのは厳しい。だからちゃんと、頭を使わなきゃいけなかったんだよな。」


 自分の勝利の要因を振り返りながら、ジャックは棘の取れた顔で言う。


「お陰で一皮剥けたよ。感謝している」

「あ、ありがとうございます……ですが……」


 感謝され慣れていないユフィは、嬉しみを浮かべつつもちょっぴり困ったように


「最後まで諦めずに、考えて、努力して、なんとかして勝利を手にしたのはジャックさん自身ですから、私じゃなくて、ジャックさんは自分を褒めてあげてください……って、凄く上から目線になってしまいましたねごめんなさいごめんなさい」


 ユフィの言葉にジャックは目を瞬かせたが、やがて「くはっ」と笑って。


「……その、諦めずに頑張り抜くことを教えてくれたのも、お前なんだけどな」

「え?」

「なんでもない」


 それからジャックは話を変えて二人に尋ねる。


「そういえば、エドワードを見てないか?」

「エドワード君? 私は見てないわね」

「そうか。演舞会の回復魔法の部で大事な任を任されたって言ってたから、控室にいねえの大丈夫かと思ってな」

「あら、そうなのね。控室は各学年ごとの選手に振り分けられてるって聞いたから、裏方だと別の場所で待機しているのかも」


 言葉の通り、控室にはユフィとエリーナ、そしてジャックしかいない。

 男であるエドワードが回復魔法の部でどんな役割を担うのか不思議に思ったその時。


『10分後に、演舞会、回復魔法の部を始めます! 選手の方は会場に集まってください!』


 司会の声が控室に響き、ユフィの背筋がピンと伸びる。


「いよいよだね、ユフィちゃん」

「は、はいっ……」


 ユフィは緊張と不安を表情に浮かべた。

 ずっと来るなと来るなと心の底から祈っていた時が、ついに来てしまった。


 演舞会、回復魔法の部が始まるのだ──。


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