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第77話 ばいばいマイホーム

 朝陽が眩しく、辺り一面を黄金色に染めている。

 パーティの翌朝、ミリル村は柔らかな光に満ちていた。


「それじゃ、学校に戻るね」


 家の前、 ユフィはゴボウでパンパンにしたリュックを背負っている。

 ずっしりと感じる重みはゴボウ獲得ミッションを達成したことを表していた。


「本当にもう帰るのか?」

「もっとゆっくりしていったらいいのに」


 二人は寂しそうな表情を浮かべている。

 トムは腕を組み、アイシャはエプロンの裾をきゅっと握りしめていた。


「きょ、今日帰らないと授業に間に合わないから……」


 視線をうろうろさせながらユフィは答える。

 二人には、今回の帰省は学校の連休を利用したもの、という事にしていた。


「なら仕方がないわね。次の長期休みにはゆっくり帰って来るのよ」

「ライル王太子やエリーナさんにもよろしく頼むぞ」

「わ、わかったわ」


 ライルやエリーナが友達になったことは、 なんとか二人に信じてもらえたようでユフィはホッとした。

 昨日、ユフィはライルと知り合ったきっかけとして、生徒会に入ったからだと二人に説明した。


 『お前が生徒会に入れる訳がないだろう!』とトムに指摘され、(ごもっとも!!)と思ったが、そのままハイソウデスネと言うわけにもいかない。


 そこで、成績優秀者とびりっけつの者を一緒にすることによって、より多くの生徒の気持ちに寄り添えるようにする的な制度(エドワードが適当にでっち上げたやつ)を説明したら納得してくれた。


 言ってて悲しくなったが、信じてもらうには無理はない。


 「生徒会」という言葉を聞いて、アイシャは「懐かしいわねえ」と目を細めていた気がするが、トムへの説明に心血を注いでいたため真意まではわからなかった。


「じゃあ、そろそろ行くね」

「ああ、頑張るんだぞ、ユフィ」

「応援しているわ」  


 両親の温かな言葉に、ユフィは思わず目の奥が熱くなった。

 ぼっちの人生の中、ずっとそばにいてくれた二人の存在は大きい。二人がいなければ、魔法学園に入学する事もなかっただろう。


 寂しさがないと言えば嘘になるが、今日も授業があるのでもう行かなければならない。


「ありがとう、ママ、パパ……」


 ぺこりと頭を下げるユフィ。

 その姿に、トムとアイシャは微笑み返した。


「私、立派な聖女になって帰って来るからね」

「期待して待ってるわ」


 両親の期待の言葉が胸に響き、ユフィは改めて決意を固める。

 彼らのためにも、自分のためにも、立派な聖女になることを誓った。


「それじゃあね」  


 二人に背を向け、ユフィはリュックをしっかりと背負い直した。

 フードを被り、ピエロ眼鏡をかけて歩き出す──。


「ユフィ、そのファッションは如何なものだと思うぞ」

「……はっ!」


 トムに言われてユフィは慌てて眼鏡を外し、フードを取り直すのだった。


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