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第37話 ノアとの再会

 翌日の放課後、生徒会室の前。

 相変わらず威圧感の凄い扉を前にして、ユフィはかれこれ十分くらいうろうろしていた。


(ううう、一人でこの扉を開けるのは勇気が……)


 気配を消せる教室と違い、生徒会室には逃げ場がない。

 それどころか、昨日のことを思い出すと、どんな顔をして入ればいいのか余計に悩みが募るユフィであった。


(誰か、この扉を開けてくれるような人がふらっと現れないかな……)


 うろうろうろうろ……。


「不審者ですか?」

「ひゃいっ!?」


 ビクウッとして声のした方を振り向く。


「ノ、ノアさん!?」


 色白の肌、水色の髪。

 長めに切り揃えた前髪から覗く瞳の色は深い森を思わせる緑色。


 入学式の日、学園の裏庭で言葉を交わした上級生、ノアだった。


「また会いましたね」


 ノアは先日と同じようなぼんやりとした無表情で右手を上げる。


「な、なぜノアさんがここに……?」

「なぜって」


 おずおずと尋ねるユフィに、ノアはちらりと生徒会室の扉を見遣って言った。


「僕が、生徒会長だからです」

「へっ……?」


◇◇◇


(本当に、生徒会長だったんだ……)


 生徒会長の席に腰掛けるノアを見て、ユフィは思う。

 先日、緑生い茂る中庭でひとり優雅に読書を決め込んでいたノアを思い起こすと、らしくないと言うか。


 しかし一方で掴みどころのない雰囲気や、何事にも動じなさそうな佇まいは、上に立つ者の特徴を持っているようにも見えた。


「さて、皆集まったね」


 パンッと手を叩き、いつものニコニコ顔でライルが言う。


 部屋中央のソファにはライルの他に、エドワード、ジャック、エリーナ。


「そういえば、ハンス先輩はまだ遠征に?」

「はい。今頃、異国の地で大戦果を上げてらっしゃると思いますよ」


 ライルの質問に、ノアは淡々と答える。

 言葉から推測するに、まだ生徒会のメンバーはいるようだ。


「じゃあ、今日はこの6人で進めようと思う」

(ああ、ついに始まるのね……)


 ライルの隣でユフィは俯き、両膝の上で手をぷるぷるさせている。


 昨日と比べて、生徒会室に漂う空気は鉛のように重い。

 その原因が自分にあると思うと、床に穴を掘って隠れたい気持ちになった。


「今日の議題は、ユフィの今後についてどうするか、だけど、その前に……」


 部屋にいる面々を見渡し、ライルはユフィの魔法を目撃した3人に尋ねる。


「皆、現実を受け止めることは出来たかな?」


 その問いに最初に答えたのはエドワードだった。


「正直、女が攻撃魔法を使えるなど、今でも馬鹿げていると思っている。だがこの目で見た諸々の情報を踏まえると、ユフィ・アビシャスが攻撃魔法を使えるのは紛れもない事実。フレイム・ケルベロスを撃破したというのも、事実なのだろう」


 微かに歯軋りしながらエドワードは続ける。


「信じたくないという気持ちはあるが、それは今まで常識だと思っていたことを理性が変えたくないと主張しているに過ぎない」

「つまり、認めると?」

「この後に及んで首を横に振ると、俺は盲目ということになるからな」

「うんうん、そうだよね、エリーナは?」

「私も、エドワードくんと同じかな。信じられないけど、ユフィちゃんが攻撃魔法を使うところを、私はこの目ではっきりと見た。それを幻か見間違いとして扱うには、流石に無理があるわ」

「ありがとう」


 最後に、ライルがジャックに目を向ける。


「……俺は敗者だ。何も言う資格がねえ」

「ユフィが攻撃魔法を使えることは、認める?」

「俺はユフィと戦い、敗れた張本人だ。ここで認めねえと、俺は自分の魔法に嘘をついちまうことになる。それだけは……我慢ならない」

「ジャックらしいね。じゃあ三人とも、ユフィが攻撃魔法を使えることは認めるということで、話を進めさせてもらうよ」


 その言葉に、ユフィはホッと胸を撫で下ろした。


「とはいえ……」


 軽薄な笑みを消し、ライルは真剣な表情をノアへ向ける。


「この場で決定権を持つ会長は、まだユフィの魔法を見て貰っていない。なので、今から訓練場に移動して、会長にもユフィの魔法を……」

「その必要はありません」


 今まで無言を貫いていたノアがキッパリと言った。

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