第34話 どこか 暗い 洞窟で
8/16 19:00 連続7話投稿しております。
ご注意くださいませ。
暗闇が包み込むように広がる洞窟。
滴る水滴の音だけが時折響き渡り、その黒々とした空間には不気味な静けさが漂っている。
鳥肌を立てるほど冷たい空気が漂い、闇の中に点在する数々の岩石が洞窟の広大さを物語っていた。
その奥深くに立つ二つの影。
一つはフードを深く被ったシルエット、その顔は闇に飲まれ姿は定かでない。
彼の立ち姿はしっかりと地を踏みしめ、冷静な気配を放っている。
もう一つは漆黒の影から突如として現れる異形の存在。
蠢くような闇そのものであった。
「フレイム・ケルベロスが倒されただと?」
闇からくぐもった声が響く。
その声は驚きとも怒りとも取れた。
「生徒側の被害は?」
フードを被った男が静かに口を開く。
「ゼロ、です……」
「あり得ない」
今度は明確に、驚愕を滲ませた声。
「誰だ、誰がやったのだ」
影から鋭く問い詰められ、フードの男は唇を震わせて答える。
「ユフィア・ビシャスという女生徒です」
「ふざけているのか?」
突如として暗闇から炎にも似た光が飛び出し、男の手首から先を吹き飛ばす。
「ぐああああ!!??」
男は地面に倒れ込み苦痛の悲鳴を上げた。
続け様に男の頭を影が踏みつける。
「本当です……! 信じてください!」
男は涙と汗で顔を歪ませながら訴えた。
「確かに見たのです! 女子生徒が、フレイム・ケルベロスを倒すのを……!!」
一瞬だけ静まり返る影。
ようやく男の頭を解放し、何か触手のようなものを伸ばす。
緑色の光が放たれ、男の手は見る見るうちに元の姿へと戻っていった。
「はあっ……はあっ……」
手を押さえて、男が息を浅くする。
「ユフィ・アビシャス……」
忌々しげな声。
「その者を捕縛しろ」
反論は許さないとばかりに影が強く言う。
「そして、生徒会の人間は残らず抹殺だ。なんとしてでも計画を遂行するのだ」
暗闇からの命令に、男は「わ、わかりました……」と返答を口にする。
「もし失敗したら」
ヒュッと影が伸びて、男の首を岩壁に押さえつける。
「かはっ……!?」
「次は首ごと焼き落とす」
それは冷酷な宣言であり、どうやっても避けられない警告だった。
恐怖と酸欠で生きた心地がしない中、男がこくこくと首を縦に振る。
会話はそれきりで、やがて静寂が到来する。
後には時折弾ける不気味な水滴の音だけが残された。