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第32話 VSジャック②

「ね、本当だったでしょ?」


 悪戯が成功した子供のように笑うライル。

 一方で、ようやく現実を認識出来たジャックが唇を震わせながら口を開く。


「お、お前……女装男子じゃねえよな?」

「な、なんで皆さん同じこと言うんですか!」


 場の空気にそぐわぬツッコミをユフィがすると、ジャックはニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。


「……どうやら攻撃魔法を使えると言うのは本当だったようだな……おもしれえ……」


 自分の目で見たことは信じるタイプらしいジャックは、すぐさまユフィに向ける警戒度を引き上げ新たな魔法を発現させた。


「ギガス・インフェルノ(炎獣轟焔)!!」


 声高らかに宣言される魔法名。

 同時に、天井に向けて掲げられたジャックの両掌から赤く熱い炎が躍動し始める。


「あれはっ……!!」


 エドワードがギョッと声を上げる。

 瞬く間に発現したそれはただの炎ではない、獣の形を模した炎の巨像。


 赤とオレンジが入り乱れ、灼熱が空気を揺らす。

 炎獣は熾烈に轟き、炎の牙と爪をむき出して野獣のような獰猛さを放っていた。


「この魔法を俺に使わせたことを褒めてやる」


 ニヤリと、ジャックが笑う。


「火、それは絶対的な強さの象徴……この力にガキの頃から魅せられて、今この瞬間まで磨きに磨きかけたとっておきの魔法だ!」


 ジャックが吼え、両腕を振り抜く。

 炎獣はまるで命を持つかのように、ユフィを捕食せんと凄まじい勢いで飛びかかった。


「あんなもの喰らったらひとたまりもないわ! 今すぐ棄権して!」


 エリーナの絶叫が響くもむなしく、炎獣は凶暴に波打ち無慈悲にユフィに迫る。


 その勢いは圧倒的で、炎の魔獣がユフィを呑み込もうとする様は底の無い恐怖を引き起こした。


 ──しかし、当のユフィはいたって平然としていた。


「ロック・シールド(岩石壁)」


 淡々とした表情で手を前に伸ばし、短く告げられた魔法名。

 その刹那、ユフィの両手の前に巨大な土の壁がゴゴゴゴッと現れた。


「なんだと……!?」


 ジャックの驚声は、腹底に響く地鳴り音によって掻き消される。

 まるで一つの巨大な山脈のようにそびえ立った土壁が、巨大な火の獣を迎え撃った。


 鼓膜が破れんばかりの轟音とともに、ギガス・インフェルノ(炎獣轟焔)は土壁に激突した。


「うおっ……!?」


 爆発の衝撃でジャックが後ろに吹っ飛ばされる。

 その衝撃は観客席にまで伝わりエリーナたちは思わず身を守った。


 火獣の怒りに満ちた咆哮が響き渡り、そのまま土壁を破ろうとする。

 しかし無情にも土壁は炎獣の全てを飲み込んだ。


 その様子はまるで古の巨人が小さき者を踏み潰すかのよう。

 堅牢な土壁は一切の破損なく立ち続け、ユフィを攻撃から守り抜いた。


 光と砂塵によって遮られていた視界がほどなくして晴れる。


「これ……現実?」


 ぽつりと、エリーナが呟く。

 ユフィは無傷で、服に焦げ跡ひとつ付いていない。


 ただ土壁に、大きな焦げた痕跡が残っただけ。

 それが、全てを焼き尽くさんと発現した炎獣の証の全てだった。


「あり得ない……」


 エドワードも現実を受け止めきれていない様子だった、そんな中。


「……三属性」


 ぽつりと、ライルが呟いた。

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