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第30話 訓練場にて

 魔法学園といえば、広大な訓練場をいくつも保有していることでも有名だ。

 それぞれの訓練場は巨大なドーム状の建造物で、その中は広々とした空間が広がっている。


 壁面は特殊な魔法により強化されており、強力な魔法攻撃でも容易には崩れ落ちることがない。

 そんな訓練場のフィールドに、ユフィとジャックが対峙していた。


(ど、どうしてこんな事に……)


 天井から吊るされた巨大な魔法照明が、ユフィの強張った顔を照す。

 回想する。


 ほんの十分前、ユフィが攻撃魔法を使えることを疑うジャックに、ライルが提案した。


『ちょうど、訓練場が空いている。ジャック、お前がユフィと戦えば、真偽がわかるだろう?』

ジャックは『あ? こんな小娘に俺の魔法を使えってか? 冗談じゃねえ!』と渋っていたが。

『いいのかい? もし本当にユフィが攻撃魔法を使えるとしたら、ジャックは女の子を前にして敵前逃亡した臆病者ってことになるけど』

『なんだと!?』


 クワッと目を見開いてジャックは声を荒げた。


『そこまで言うならやってやろうじゃねえか!』


 回想終了。


(うう……いざ人前で魔法を使うとなると緊張する……)


 周りに何もない広い場所に立っているだけでソワソワしてしまうのに、人の視線があるとなればなおさらだ。


 この戦いは秘密裏に組まれているため、観客席にはライル、エドワード、エリーナの3人しかいないが、ユフィは緊張で喉の奥が熱くなっていた。


(それに……)


 ちらりと、ユフィはフィールドを見渡す。

 確かに広い、が。


(加減しないと、訓練場ごと吹き飛ばしてしまう……!!)


 そんなことを考えていたユフィにジャックが言葉を飛ばす。


「どうした? 恐怖で言葉も出ないのか?」


 ジャックが好戦的に口元を歪めて言う。


「無理もねえ、何せ俺はライルに続いて学年次席の実力! 止めるなら今のうちだぞ?」

「い、いえっ、やめません! 精一杯頑張ります!」


 ぺこぺことユフィは頭を下げて、戦いに対する決意を口にした。


「……ちっ、調子狂うぜ」


 どこか居心地悪そうに、ジャックは頭を掻いた。


「ユフィちゃん、なんだか可愛いわね」


 観客席で、エリーナがくすくすと笑みを溢す。

 慈愛に満ちた瞳は、母親が砂場で遊ぶ我が子に向けるそれのようだ。


「そういえばライル君、ユフィちゃんが攻撃魔法を使えることは聞いてるけど、具体的にはどの属性の魔法を使えるの?」

「それは……」


 少し考える素振りをして、悪戯っぽく笑いながらライルは言う。


「これからのお楽しみって感じかな」

「ええー、そこもったいつけるの?」

「エリーナ、やめてやれ」


 ふんと、エドワードは鼻を鳴らした。


「答えられるわけないだろう、何せ、ユフィが攻撃魔法など使えるわけがないのだからな」


 深く息をついて、エドワードは吐き捨てるように言う。


「さっさと終わらせてくれ。茶番を見ているほど俺も暇ではないんだ」

「大丈夫、失望はさせないよ」

「どうだか」


 取り付く島もないエドワードに、ライルは薄ら笑みを浮かべてからフィールドに一歩踏み出す。


「ルール説明をする! 試合開始後、自由に戦ってもらって構わない! ただし、殺しは絶対厳禁! 訓練場が破損するような魔法も控えるように! 特にユフィ、重々留意してくれ!」

「はっ、はい! 気をつけます!」

「クソッ……舐めやがって……」


 間接的に『ユフィの方が強い』という言い方をされて、ジャックの顔に怒りが滲む。


「勝利条件はどちらかが降参するか、僕の方で戦闘不能になったと判断した場合とする!」

「死なない限りどんな怪我でも治すわ〜!」


 ぶんぶんと手を振って言うエリーナ。


(少なくとも、失望されないように全力でやらなきゃ……)


 覚悟が決まる。

 ユフィの瞳に力が籠った。


「では、始め!」


 ライルの号令で、戦いの火蓋が切って落とされた。

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