第22話 一安心……?(なわけ)
ユフィが元の集合場所に到着すると、既に他の生徒たちが集まっていた。
人の輪の中心にいるライルの姿にユフィの目が引き寄せられる。
回復魔法を受けたのだろう、彼の背中は赤くなく元の綺麗な肌を取り戻していた。
(よかった……)
ホッと、ユフィは安堵する。
ライルと視線が合ってしまってはまずいので、ユフィはそそくさとその場を後にする。
キョロキョロとあたりを見渡すと、逸れてしまった班のメンバーを発見した。
(何も言わないのは……よくないよね……)
忽然と姿を消してしまって、皆も心配しているかもしれない。
胃がキリキリさせながら、ユフィはゆっくりとメンバーの元へ歩み寄る。
「あ、ユフィちゃん!」
メンバーの一人、リーファが気づいた。
後ろにアルトとジルもいて、「おいおい探したぞ」と非難めいた視線をユフィに寄越してくる。
「途中から急にいなくなるなんて、びっくりしたじゃない」
「ご、ごめんなさい……道に迷っちゃって」
ユフィが小さくなっていると、アルトとジルが場を明るくする言葉をかけてくれる。
「まあ合流できたからいいってことよ!」
「ちゃんと残りのアルミラージは狩っておいたから! 安心して!」
「あ……ありがとう、ございます」
ユフィがはぐれたことに関するやりとりはそれだけだった。
もともといてもいなくても関係ない存在感だったため、特に感動の再会といった空気もない。
ホッとしたような寂しいような気持ちになっていると、シャロンがやってきて大きな声で宣告する。
「イレギュラーが発生したため、今日の授業はこれにて中止とする!」
具体的な事情説明のない突然の中止に、生徒たちは困惑の表情を浮かべていた。
(どうかこのまま何事もなく終わりますようにどうかこのまま何事もなく終わりますように……)
ユフィは怯えていた。
自分の名前が呼ばれ、暗い部屋に連行されて事情聴取をされるのではないかと。
フレイム・ケルベロスの一件は内緒にしておいてくれと言ったものの所詮は口約束だ。
あれほどの大事を先生に報告しない道理はない。
そんなユフィの心配とは裏腹にそのまま解散の流れになった。
フレイム・ケルベロスに関連した話題も出ずじまいだった。
それは、ライルがちゃんと秘密を守ってくれていた証拠でもあった。
(やっぱり、ライル様はいい人……!!)
心からユフィは感激した。
どうにかこの場を乗り切ったと、ユフィはほっとした。
……遠くの方から、ライルがじっとこちらを見つめていることにも気づかずに。