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もうちょっとだけ

作者: るたーのる

 なぜだろう。一体いつから私は好きになってしまったのか。



特別な出来事があったわけでもないし、少女漫画みたいな甘ったるいことだって言われたわけでも起きたわけでもない。



まだその頃はお互い高校生でさ、恋だなんだと騒ぐ年頃で、その時は私も少し気になっただけだった。



でもそれなりに付き合いがあるうちに、気がついたらね。



ただどうしようもなく止まらなくなっちゃっただけなの。



他の人からしたら大したことないところなんだけどさ、なぜか、どうしようもないくらいに私は君に焦がれちゃって。



後ろから背中をぼんやり見るだけで、全身の血が動きを止めたかのように緊張が迸ってしまうの。



それは止まらなくて、怖い気持ちだったりもひっくるめて私は伝えたのだ。



部活終わりの帰り道、誰も偶然いなかったあの通学路。何をどう言ったかまではもう覚えてないんだけど、今までもこれからもないような勇気で言った気がするんだ。



でも案外それはあっけなく終わって、色々夢見た状況はそのあとどんどん色んな所で満たされていった。一言でいえば、その頃は幸せだった。



卒業しても同じ大学に行きたいって君が言ったから、私頑張って色々教えたんだよね。覚えてないかもだけど。



幸せな日々が続くと思ってたんだ。



でもさ。



ねえ。



いきなりさ。



疲れた、って。



もう私たちってさ、結構な付き合いだと思ってた。それはそうで、もう6、7年くらいずっといたから。



最初のようなどきどきも次第に薄れていったのは確かだよ。



互いをいつまでも求めて、しまいに君と一緒に住んで。



でももうそこまで互いを求め合うことも無くなっちゃったし、大学でも最後はそれなりな関係のまま過ごしてさ。わからなくもないよ?



それでも



なんか、愛を感じなくなって。



なんて、そんな事を君がそんなことを切り出すなんてことは想像もしてなかった。



言われた直後は意外と大丈夫だなと思った。気がついたらもう君はその場からはいなくなってて、一人で私は帰路についた。



生活感の漂う暗くなった部屋で、毛布にくるまってTwitterを見てた。



急に涙が出て、心臓がギュッとしまった感じがした。



これって、どっちが悪かったのかな。いや、案外どちらも悪くはなかったのかもしれない。その答えはもう、わからないし、考えたくもない。



ああ……



私はただ、君の右隣にいたいだけだったのに。



私は君が好きな食べ物が好き。

君のくるんとした寝癖が好き。

君のちょっと下手な車の運転が好き。

君の変なセンスが好き。

君のおかしな笑いのツボが好き。

君の仕草が好き。

君の声が好き。



そんな君が、私は好きなんだ。



「……好き、だったんだよ……!」



大粒の涙が不意に落ちる。



あと、もうちょっと。



もうちょっとだけ、一緒だったら。



そう思って、今は止まない。


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