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血の姫は死に際に夢を見る  作者: アトリエユッコ
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殿下とのお約束。

 殿下に本当のことを伝えていいのかしら…………。力については、家の者__マートルに教えられてきたことは私の力を解放するには、王家の理解と力の解放をする許可が必要。即ち、殿下に王家への計らいをしていただけたら、私はルキが仕掛けたこの忌々しいループを断ち切れる? ____かもしれない? ……でも、これまでの人生もずっと変わらなかった。ずっと変わらなかったのだから、これからなんて事はない。


「…………大丈夫だ、私が全て受け止める。言いたくないこともあるかもしれないが、話すことで整理がつけば少しは楽になるだろう?」


「でも……殿下を困惑させてしまうかもしれません……」


 殿下は前から私の肩にそっと両手を触れて、にこりと微笑んだ。……騙されてはいけない。こんな人生が私にあるわけが………………


「話して欲しい」



 騙されているのに、こんなことが都合よく私に起きる訳がないとわかっているのに……私は殿下の表情を見つめると、心の紐が緩んで、自分の思いを、ひと粒ずつ、落としていった。







◇◇◇



「珍しく難しいお顔をしていらっしゃいますわね」


「アネシア」


 ジーク殿下は次の授業への移動中にアネシアに声をかけられる。それほど自分は感情が表に出ていただろうか、と反省しながらもアネシアを見つめる。



「そうかい? 少し考えごとをしてしまっていたんだよ」


「もしかして……シェリー様についてでしょうか?」


「アネシア、聖女は人の心を見抜く力もあるのかい?」


 ジーク殿下は歩きながら微笑むと、アネシアは慣れたように殿下に返した。


「いえ、そのような力はありませんわ。私は人より怪我を治す力に優れているだけですわよ。……大体、殿下はわかりやす過ぎです」


「そうか……王族が心中を悟られすぎなのは困るね。何とかしなくてはね」



「…………本当に……何かありましたの?」


 ジーク殿下はアネシアの心向きに、はっきりとは答えられなかった。


「いや…………今はまだ…………」






◇◇◇◇


 次の日、私はいつも通りライラに傷の手当てをしてもらってから登校する。外の世界は変わらぬ穏やかさを持っていたけれど、私の心の中は騒ついている。


 殿下に話してしまった。……これまでの私の人生を。



『私はずっとシェリー・アザレア・ルターとしての人生を繰り返して生きています。何度も何度も』


 そう伝えると、さすがのジーク殿下も表情をひくつかせる。

動揺しているとみて、やめようと思ったけど、殿下は怯まなかった。


『何故? ……どういうことだ?』


『恐らく、これはルキが私にかけた呪いのせいです。1度目の人生の時に、私の魂に彼は呪いをかけたと言いました。最初の人生はアネシア様を陥れた罪を問われ、処刑されて終わりました。処刑前に私にルキがしかけていた呪い。そのせいで私は死んでも死んでも同じ人生を繰り返しています』



 ジーク殿下は暫くは言葉を発しなかった。それはそうだろう。何でも話してみて、と言ったは良いものの、彼自身が想定していた以上に私の話した内容は、殿下には抱えきれないものなのだから。



『…………では、君は何度も同じ人生を繰り返しているなら、私とも関わっていたのか?』


『えぇ。残念ながら、関わりはありましたわ』


『残念…………』


 ジーク殿下は呟くと、口をつぐむ。私は一瞬でもジーク殿下にルキから守ってもらえて夢を見たなと思えた。でも、夢は夢のままで、私には何も手立てがない。



『私は1度目の人生で、殿下の左目を私を庇った時に傷を負わせ、失明させてしまったことがあったのです。……ですから、今回のようなことがあって、私は私の命などひとたりとも惜しくはなかったのですが、殿下の目だけは治したかったのです。…………勝手な判断に、勝手に私の力の解放をしてしまい申し訳ございませんでした。この事は殿下と私だけの墓場までの秘密にして下さい』



 私はゆっくりとベッドから起き上がり、動揺するジーク殿下の前を通り過ぎて教室へと戻る準備をした。彼は何も言わず、立ち尽くている。堪えていたのか、やっと声が出たのか、両手で握っていた拳を解いて私を見つめる。



『…………それはわかった。だが、バンピル卿が君に呪いをかけた、というのはどうやって? ……呪いを解く手立てはないのか?』


『……呪いがどうやってかけられたかについては答えたくはありません。……ですが、呪いを解く手立てはまだわかりません。私の力の完全解放をするなら、王家の協力が必要だと聞いたことはありますが…………』


 どうやって呪いがついたのか__自分が油断して、許してはいけないことを無理矢理許させてしまったなどとは、話したくない。言葉にしたら、死んでも死に切れないから。


 殿下は何かをずっと考えながら、私の目を見つめる。


『力を解放できれば、君にかけられた呪いもどうにかなるか?』



『…………そうであれば良いのですが……ただ生きていれば、力の解放だけを王家にお願いすれば済んだのです。でも、ルキと関わってしまい呪いをかけられてから、私はどうやってこの呪いの因果を解けばいいのかわかりません。……ですから、私は……何度繰り返しても、魂が消え去ったとしても、ルキの呪いが消えてなくなればいいとさえ願っております』



『だが、死ぬなどと言う馬鹿なことは考えないでくれ。君も私もまだ17だぞ? 成人するまであと1年じゃないか』



『…………殿下、血の姫は噂によれば短命の運命を持っているそうなのです。私が自分で命の終止符をつけたとしても、しなかったとしても、私の寿命はもうすぐそこにゴールが見えているのです。殿下にこの私をどうにかする為に、殿下は王家の皆様に協力をお伺いしていただけますか? 王家の皆様にとって、血の姫と言う謎めいた存在は気味悪く、見ないようにしていたい存在なのです』



『シェリー…………』



 困惑する表情のジーク殿下に私はお礼をすると、医務室をふらふらと出て行く。授業にはもう戻らない。教員の方に相談して、体調不良を理由として屋敷に戻ろう。


 私は一度も殿下を見つめ返すことなく、医務室を出て行った。








◇◇◇◇◇




 数週間後、学校内で事前に予定していたパーティーが開かれることになっている。これは懇親会の一貫で、学校内で年齢差、教師と生徒という立場も関係なく仲良くしていこうという主旨のもので王家と学校が協力して開催する。社交パーティーのようなものだった。私は血の姫なので、どうせ参加したとしても煙たがられるだけだと思っている。体調不良で不参加にしようとしていた。


 でも、昨日殿下からドレスが送られて来た。婚約者でもないのに、どうしたことだろうと家族は驚いていたけれど、私は先日話した内容の謝罪なのかと思った。


 困ったわ…………会合なるものは面倒だから、そこは血の姫で良かったと思っていたのに、これでは断れない。



「お嬢様〜最近ジーク殿下と仲がよろしいんですか? 婚約者でもないのにドレスをプレゼントするなんて、シェリーお嬢様が気になっていらっしゃるんでしょうか〜?」


 ライラは湯上がりの私の髪をタオルで優しく叩きながらうきうきとさせて笑う。


「まさか、先日少し話した程度よ。……アネシア様のが仲が良いわ」


 でも、本当にどうして私にドレスを送ったのだろう。いや……アネシア様と仲睦まじいのだから、殿下はきっとアネシア様にもドレスを送っているはず。皇太子ですもの。これは特別な何かじゃない、社交辞令。…………私に都合の良いことが起きるわけないんだわ。



「そうですか……。でも、どんな理由だとしても、パーティーには出席しないといけませんね。お嬢様を可憐にそして美しくする為に、どんなヘアアレンジにするか私達も提案させてくださいね!!」


「…………ありがとう。私としては体調もあるから、気を遣う場面は避けたかったのだけどね。宜しく頼むわね」


 私は不安材料だけが胸に残りつつも、その場をするりと交わしておいた。





 一方で学校では不穏な動きを見せていた。学校には昔から強い結界が周りに張り巡らされている。〝呼ばれてないものたち〟が校内に侵入することがないように、校長や結界に特化した力を持つ教員やまたは特別な生徒などが、歴代の結界に足すように魔法を掛けている。


 つい何日か前に、結界の一部が破られていたという話が校内に来ていた。校長先生は気にしないように、と私達生徒には朝会で説明してくれたけれど、一体誰の仕業か、と皆それぞれに持ちきりだった。

 結界が破かれた騒動で、パーティーは中止になるかなと悪いけど少し期待していた。でも、せっかくのパーティーなので中止にはせずに実行するみたい。あぁ、残念。



「あのドレスを着なくって良いのなら…………出席するけど……でも、そもそもパーティーって昔から苦手だし、億劫な気持ちになっていくわね」


 青空の下で今日もまたマートルのお見送りで校内に下ろしてもらう。少し気弱な体調だけど、めまいはないのでそう悪くはない。このまま、パーティーに体調不良で参加できないのが残念だわ。

 そう言えば………………


1回目の人生の時も、湖から魔族が出て来たけれど……あれも結界を破かれたことによるものだったのかしら。殿下に傷を負わせてしまったと、自分のことだけで精一杯だったけれど………………アレが人為的なモノだとしたら……



「一体誰が…………? 何のために?」



 私はふと立ち止まって考えたけれど、わからなかった。


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