運命は宿命
________誰か…………
お願いよ……
どうか…………助けて……
誰か________________…………
『いたぞ!! あいつだ!!!! 裏切り者のシェリー・アザレア・ルター侯爵令嬢だ!!!!!!』
急いでどうにか必死に走って城から逃げて来たのに、既にそこら中に騎士達が出回って、私を探していた。私はふらつく体に鞭を打つように、逃げ場を探した。螺旋階段を登って、城の屋上まで急いで逃げた。力の有り余った騎士達は、あっという間に屋上へと辿り着き、私をもう逃げられない場所まで、追い詰める。
『違うの…………私はただ、殿下を守りたかった……』
涙ながらに訴えるが、騎士達に通用する言葉ではなかった。________あぁ、もうこの最期の瞬間を何度経験したことだろうか。……今回こそはと思ったのに。ルキに騙されて、もう同じ人生を10回も繰り返した。私はジーク殿下のことをただ、愛していたのに。何度繰り返す人生も、ジーク殿下ではなく、何故かルキに繋がってしまっていた。
『お前に殿下のお傍にいる資格などない!!』
『そうだ、聖女アネシア様がお前から殿下を救いなさった!!!! なのに、お前はアネシア様を何度も虐げ、陥れようとしたではないか!!!!』
違う
『私は……断ち切りたかっただけ……この呪いを…………ジーク殿下を………………
騎士達が私の言葉に反論しているようだった。彼らの声が遠く聞こえて……私は体の力がもう少しも残っていないのを実感する。
1人の騎士が私に近づき、大声で何かを叫ぶと、私の心臓あたりを突き刺した。
騎士が剣を引き抜くと血が多く滴る。ドバッ____…………胸から溢れ出る生暖かい大量の血に、私は今この敗北という現実を否応にも認めなければいけなかった。……あぁ。__ごめんなさい、殿下。本当はあなたに関わらなければ、良かったんだわ。せめてあなたを守りたいと願っても、所詮はもう何度繰り返しても、私は必ず、最後は死ぬのだから。生きていても、あなたの傍には大切な聖女アネシア様がいらっしゃるのだから。
『血の姫に出血は回復を与えてしまう! もっと……もっと、やれ!!!!!!』
誰がそう言うと、私にまた何度も何度も剣が刺された。痛くて痛くて、もうどうしようもないくらい痛い。もう寿命だってあと少しなのは、自分でもわかっていた。だから、せめてわかってもらえたらと思ったんだ……。ようやく剣を引き抜かれると、足元もおぼつかなくなってきた。
出血の影響で目の前がぼんやりと霞んできた。さすがにもう駄目かもしれない________……私はそのまま、ゆっくりと後退りすると、行き止まりなことも忘れて、低く作られた手すりの城壁を踏み外し、そのまま城の屋上から転落した。
________10回目の人生が終わった。
次もまた、ルキが私につけた呪いの力で、また私を11回目の人生へと引き戻すのだろう。
何度も死んだ。何をしても、何を感じていても。
ルキの呪いは私には解けない。
ならば、もう次こそは殿下やアネシア様やルキと関わらずに死ねるように願おう。
もう私にはその道しか生きる方法がないのだから。
________グシャ。