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カリキュレイター

作者: 水飴屋

10年前に着想を得て作った作品です。

0:砂漠をさまよい、幼馴染を救う手立てを探すタイガ。


タイガ:喉が渇いてきた…このまま旅を続ければ…死ぬかもしれない…。だが、何かを探さなければ…!

タイガ:…獲物が取れなくなって、ムラのババ様たちは村を去った…このまま獲物が取れなければ、幼馴染をイケニエにすると、ムラオサが決めた。

タイガ:…何かのカミに、会わなければ、そうしなければ、幼馴染は、ルゥエは…

タイガ:何だ、急に目の前が明るく…


0:22世紀

トオル:22世紀に入り、人類は、急速な変化を遂げた。人口は急増し、ヒトの遺伝子の解明が進み、人工知能が発達した。

トオル:人類は……「カリキュレイター」という計算プログラムに、頼るようになった。

トオル:中でも、この国の「マザーシステム」は目覚ましい発展を遂げ、システムが政治に深く関わるまでになった。

トオル:システムを開発した、白塔傑びゃくとうすぐるは、今やこの国の総理大臣となっている。

トオル:「マザー・システム」に従って、人々は遺伝子解析され、就職や結婚についてのアドバイスを受ける。教育もそうだ。自分に合ったレベルの教育を受けることができる。

トオル:結果、凶悪犯罪は減り、人口は増え、貧困は減ったとニュースは告げている。不自由のない世界、誰もがオーダーメイドの人生を送るためのサービス、よりよい未来への道を授けられる世界。…

トオル:だが、本当にそうなのだろうか…「マザー・カリキュレイター」通称「マザー」は、本当に未来を正しく計算できているのだろうか…


0:朝

ミミ:おッはよ~、起きて、トオル!

トオル:ん~…わかってるよ…

ミミ:…また嫌な夢、見たの?

トオル:…大丈夫だよ、ありがとう。

ミミ:そう…。…あ、今日は、犯罪者指数の検査日よ!

トオルN:僕が今話しているのは、ミミ。生まれた時から僕と一緒の、個人用カリキュレイターだ。

ミミ:トオル、犯罪者指数100%だったりして。

トオル:そんなわけないだろ。

トオルN:この国ではみんな、18歳の誕生日に、カリキュレイターに犯罪者指数を「査定」される。

トオル:犯罪者指数は誰にでもあるものだが、それが100%だと、「更生施設」に入れられるらしい。


0:「マザー」のいるラボ

マザー:より良き人類の生活のためにお越しいただき、どうもありがとうございます。

トオル:はいはい、より良き人類の生活のために。

マザー:只今犯罪者指数を測定しています…あなたは、..犯罪者指数、百パーセントです。

トオル:え…

マザー:更正施設がありますので、そちらへの入所手続きを行います。

トオル:そ、そんな…待って下さい!僕は、なにもしていません。これからも、何もするつもりはありません。ほ、本当です!

マザー:しかし、私の予想確率の正確性は、82%です

トオル:そうだ、両親に連絡を…二人なら僕は犯罪者じゃないと、わかってくれる..

マザー:犯罪者指数百パーセントの方は、判明した時点で護送車によって更正施設へ送られます。好きな更正施設をお選びください。

マザー:娯楽設備のある施設、Wi-Fiの利用料無料の施設などがございます。

トオル:ふざけるな!集団生活はもうごめんだ!に、逃げなきゃ!

トオル:HEYミミ!この建物の避難ルートを教えて!

ミミ:逃げない方が、いいと思うなぁ..

トオル:いいから!

ミミ:「一歩さがって、右に五百メートル、扉を開け左です。」

トオル:ありがとうミミ!

(間)

トオル:車はダメだ、追跡される!HEYミミ、最適な逃亡ルートを教えて!

ミミ:逃げられる確率は、…十パーセント以下かしら…

トオル:いいから!お願いだミミ、君しか頼れないんだ

ミミ:はいはい、シークレットモード起動、データアクセス、要請を解析中

ミミ:....東北に十キロ歩きなさい。そこにいる鈴木博士に、助けを求めることね。追跡を逃れるために、アタシは電源を停止するわ。頑張ってね。

トオル:ありがとう、ミミ。

ミミ:アタシと一緒にいれば、トオルの勝率、158%なんだから!…上からの衛星撮影に気を付けてね。…電源をシャットアウトします。

トオル:ミミ…さぁ、行かなくちゃ。十キロ、..大丈夫さ、大丈夫..。衛星に気を付けて、歩くだけ…


0:森の入り口

トオル:はぁ…大分来たな…そろそろ二時間以上は歩いてる。…博士ってのは、どこにいるのさ…

トオル:マジかよ…なんて誕生日だ…お父さん、お母さん、ごめんなさい…

トオル:ん…人影…?あのー、あなたは(博士ですか?)

タイガ:(被せて)お前は、シニガミか…?俺はまだ死ぬわけには行かないんだ。消えろ!(槍を向ける)

トオル:わああっ、お、オマエなんなんだよ?槍?槍か?ソレ!そんなもん向けるな!っていうか、何!??、

博士:おっ、いたいた。おーい、…二人?あ、現代人が混ざってるのか?


0:博士の部屋

博士:…というわけで、ご理解いただけたかな?

タイガ:俺は、自分が生まれて死んだ後の世界にいる…?つまり、ここは死後の世界…?

トオル:なるほどねぇ…タイムスリップしてきたわけか…このヤバい兄さんは。

博士:タイガには悪いことをしてしまった…タイガをこの時代に連れてくることで、「マザーの予測の不完全さ」を証明しようとしたんじゃが…

トオル:あのー、助けてもらって悪いんですけど、僕に分かる言葉で話してもらえます?

博士:あー、すまんかった。量子力学りょうしりきがくの応用で時代的エントロピーを増大させ、それによって「マザー」の遡及的そきゅうてき認識能力にんしきのうりょくの応用性を…

トオル:(被せて)ですから!僕らにわかる言葉で話してください!

博士:すまぬ…コホン、つまりな、「マザー」の不完全さを証明するために、古代からヒトを連れてくることにしたのじゃ

タイガ:いや、ぜんぜんわからんが

トオル:博士は、科学者なんですね…僕にも、ぜんぜんわかりません。

タイガ:お前たちは、カミではないな。同じ人間だ。俺もまだ温かい…死んでない。…ここは俺がいたのと違うムラなのか?

博士:あぁー、そう考えてもらって、全然構わんよ。

トオル(小声で):いやぜったいこれ会話通じないよ

リンナ:もぉ~、おじいちゃんが難しい言葉を使うから…ごめんなさい、おじいちゃん、話しにくいでしょ?変わり者なんだから。

トオル:へっ⁉あ、‥あなたは、誰?

リンナ:私は博士の孫の、リンナよ。初めまして。

タイガ:美しい…待て待て待て、俺にはルゥエがいる、俺にはルゥエがいる…

リンナ:ついに、おじいちゃんは実験を成功させたのね…ところで、あなたは誰?

トオル:えっ、僕?ぼぼぼ、僕は…

タイガ:タイガだ!

トオル:オイ!邪魔すんなよ!ぼっ、僕はトオルと言います。

タイガ:俺はタイガだ!

博士:ワシは鈴木博士。

リンナ:おじいちゃんのことは、知ってるわよ。じゃあ、よろしくね、タイガさんにトオル君

タイガ:おう。…ところでスズキハカセ、…俺は、俺たちのムラへ、帰れるのだろうか。

博士:心配ない。平たく言うと、君は記者会見を済ませたら、すぐに帰れるだろう。

タイガ:…あなたたちのムラは、進んでいるな…

タイガ:長老たちから、ニシの果てには、素晴らしいクニがあると聞いたが、ここがそこか?

博士:…まぁ、そんなところじゃ。

タイガ:俺は、このクニに来たのだから、ルゥエを救う手立てを探したい!長老が言っていたんだ、「すべてのことには、イミがある」と。

タイガ:…俺がこの国に来たことは何かイミがあるはずだ。

トオル:ルゥエって、だれ?

タイガ:俺の、大切な幼馴染だ。

タイガ:幼いころから俺たちは、太陽と月のように、目立つ時は違っていた。ルゥエはモノを覚える力が強く、俺は、カリが上手い。だが、俺たちは、太陽と月のように似ている…

博士:フム、ワケをきこうか。

タイガ:俺たちのムラでは、…獲物が取れない。俺たちのヒガシのムラは、もう滅んだ。キタのムラも、滅びかけて俺たちのムラに逃げてきた。

タイガ:ミナミとニシには、オキテがあって入れない。俺は、オキテを破ってニシに来た。そうしたら、あなたたちがいた。

タイガ:教えてくれ。俺が、ここに来たのはどんなイミがある?このままでは、体の弱いルゥエは、口減らしも兼ねて、生贄にされてしまう!

トオル:よくわからないけど、なんかヤバい事は分かった。

博士:飢餓…か。確か、タイガがいた時代は、気候変動があったな

タイガ:この世界は、素晴らしい!トオルのようにヤリも持てない弱き者も、生きていける!

トオル:(ムスッとして)悪かったな、弱くて。

タイガ:スズキハカセ、頼む、教えてくれ。…弱き者も生きられる国は、どうしたらできる?

博士:…多少の農耕を、導入しても、それがタイガの時代にあった植物ならば、歴史的に見て問題なかろう。まぁ、ワシは専門外だから詳しくは分からんが。

トオル:よく分からないけど、明日から農業をやらされそうなことは分かった。


0:博士の畑

博士:トオルは、作業がうまいのぉ。

トオル:はい、おじいちゃんを五、六年手伝ってて…

博士:学校に行きながらか?偉いのぉ。

トオル:いえ、学校は…不登校で…

トオル:いじめに、遭っていたんです。…

博士:そうか…すまんかったな、余計な口を利いて。…まぁ、今時、珍しくもないことじゃよ、それは。

トオル:…分からないけど。でも、僕、集団行動は、今も苦手です。

博士:…にしてもタイガ、畑を荒らさんでくれんか?

タイガ:すまない!見よう見まねで手伝ってるんだが!自分でも何か変だとは感じてるんだ!

博士:ああ、ワシの大切なガーデンちゃんたちが……トオル、教えてやってくれ!

トオル:えぇ~!?まぁ、…博士の頼みなら…(タイガに)あのなぁ、オマエ、さっきから芋を掘り返しちゃってるけど

タイガ:なんだ?

トオル:ひぇ!すみません、…なんでもありません…

タイガ:近付いただけじゃないか。なぜそんなに怖がるんだ?

トオル:(早口に)何でって、…オマエ、バカ強そうなんだよ!ポジティブ鈍感の匂いが、プンプンする!昨日だって、俺を槍で脅しただろう!こっちはトラウマなんだよ‼

タイガ:そうか…では、屈めば大丈夫か…?…そちらはなんとか言う馬なのだな。…どういうイミだ?

トオル:(早口に)馬じゃなくてトラウマだよ‼オマエ見てると、俺をいじめた奴ら思い出すし!

トオル:そりゃあね~あっちからしたらただのおふざけだったんだろうよ。でもねーやられた方は、一生忘れない。傷として背負い続けるんだ!

トオル:…っと、悪かったな。別に、オマエが俺を虐めたわけじゃないのに、僕のいじけた鬱憤ぶつけて。いや~、すみませんね!本当に!

タイガ:いじめ…?よくわからないないがお前の態度にも問題があるのではないか?俺は年上だぞ?年上には敬語を使うものだ。そうしない者は、頭のおかしい奴だ!

トオル:うるせぇ!ゲンシジン!こちとら畑のことはお前より先輩なんだよ!

タイガ:センパイとは、なんだ?

トオル:コイツ…。先輩っていったらアレだよ、畑については俺の方がよく知ってるから、…うーん、そうだな。畑と仲良くなってる年数は、俺の方が長いってことだよ

タイガ:一つのことに集中する…お前は、畑のツカサなんだな!

トオル:ツカサ?

タイガ:ああ…博士、あなたたちの言葉でツカサとはなんと言うのだろうか?

博士:スペシャリストじゃな!プロじゃな!トオルは、畑については、素人のワシより知っとるわい。

トオル:そ、そんな…ちょっと照れるじゃないかよ…わかったよ。この、畑のツカサトオルさまが、みっちり教えてやるよ!


0:博士の畑

トオル:おい!そこは優しく!そんな力任せにやるなよ。植物の気持ちになれ。

タイガ:ショクブツノキモチ?なんだ?それは。

トオル:草にも、命があるんだよ!命!分かるか?

タイガ:イノチ?ん~、そうだな~、イノチ、か。…

トオル:難しい事じゃねぇよ!僕たちは、自然に活かされてるんだから。

タイガ:…俺のババ様みたいなこと、言うんだな。

トオル:へぇ~、原始時代にも、良いこと言う人、いるんだな。

タイガ:死んでしまったけれどな…。ところでそれ、お前の言葉じゃないだろ。

トオル:…なんでわかった!?

タイガ:まだ、全部はお前の血肉になりきってない感じがする

トオル:コイツ…(お見通しかよ、という気持ち)。そうだよ、この言葉は、俺のじいちゃんの言葉だ。でも、カッコいいなと思って、使ってる。

トオル:…お前のこと、『ポジティブ鈍感』って言って悪かったな。

タイガ:それは、どういう意味だ?

トオル:いや、…僕が作った言葉なんだけど…なんていうか、周りの空気読まずに前向きでいるっていうか…

タイガ:分からないが…俺のムラに、前向きでないやつはいなかったぞ。

トオル:(早口に)ハイ出ました~、そういうとこだよ。よくみんな自分と同じだと思えるな!そういう所だよ!!まぁ、僕が悪いんですよ、僕がひねくれているから!

タイガ:…よくわからんが、お前悪い霊にでもとりつかれているんじゃないのか?早口で喋るくせ、直したほうがいいぞ。

トオル:(イラついて)コイツ…!言わせておけば!俺は先輩だぞー!敬語使え、敬語!

タイガ:…よくわからんが、お前は面白いな、トオル。たくさんのコトバを知っていて、すごいな。

トオル:クソ~!前言撤回する!やっぱり、オマエはポジティブ鈍感だ!!

リンナ:おじいちゃんたち~!ちょっと休みなよ~。レモネード作ったからさ。

トオル:えぇ!リンナ…さんが、作ってくれたの?

リンナ:(微笑みながら)別に、一から作ったんじゃないわ。…お口に合うといいんだけど…

トオル:あ…うん、頂きます!

タイガ:美味い!これが、れもねえど…

トオル:…でもいいのかな、タイガに農業を教えて。ひょっとすると、歴史が、変わってしまうかもしれない…

博士:そうだな…私たちは、タイガを通して未知の領域に近づこうとしているのかも知れない。だが、タイガを助けたい、トオルの気持ちは本物ではないのか?

トオル:…まぁ?タイガのこと、助けてやりたいし、幼馴染の話はよく知らんけど、可哀想だと思う。

博士:未来のことは、誰にも分からん。しかし、トオルはトオルの心に従えばいいと、ワシは思うんじゃ。


0:白塔総理の官邸

白塔:「マザー」、認識「白塔傑ビャクトウスグル

マザー:対象を音声認識中…「お帰りなさい」スグル。

白塔:(恋人に話しかけるように)マザー、遅くなってすまないね、今日は重要な会議があったんだ。

マザー:ええ、夕食として、適切なものをご用意させました。

白塔:そうか…うん、このワインは素晴らしい!初の国産のワインだったかな、マザー。

マザー:ええ、スグル。あなたの政治で、不毛の大地を開拓し、長く使えるブドウ畑を作りました…十年前のことです。今も、従業員たちは安定した収入を得ています。

白塔:なに、あの政策が出来たのは、マザーのデータのお陰だよ。一方にカリキュレイターに仕事を奪われた失業者、一方に温暖化で荒廃した荒れ地。私は、「マザー」のデータをパズルのように組み合わせているだけだ。

マザー:それも、一理ありますね、スグル。


0:ここからの白塔は、雰囲気を変えて

白塔(手を叩いて):さて、入りなさい、「ドン」。

ドン:お呼びですかね、総理大臣様?

白塔:ええ…闇の世界で名を馳せたあなたに、してもらいたいことがあるのですよ。…国際犯罪者集団「アリア」の日本支部支部長、通称「ドン」

ドン:この国一お優しいと世間にうたわれる首相、天才の白塔総理大臣が、俺のような大悪党に何のご用事で?

白塔:私を天才と思うのなら、口を慎むことですね、:ドン。…依頼ですよ。

ドン:最初は何かの罠かと思ったぜ、白塔さんよお。あんたみたいな善人が、まさか俺に依頼をしてくるなんてなぁ…

白塔:善人…?この世にいるのは、ただの人間ですよ。

ドン:で、依頼とは?

白塔:ある博士の、孫を誘拐してきて欲しい。彼の研究を辞めさせる、良い材料になるはずだ。

ドン:へぇ~。で、誰の孫をかっさらやいいんだい?

白塔:鈴木博士。

ドン:鈴木っていや、あの有名な…?アンタの部下だったと聞いているが?…いいのか?

白塔:鈴木君を苦しめるつもりはないのですがね…しかし、彼は私を怒らせました…

ドン:お~、こわ。…なるほど、…ここからは興味からの質問だが、なぜ鈴木博士を?

白塔:…あなたは、知らなくていい事です。

ドン:おおかた、アレだろ。

ドン:アンタがご執心の「マザー」の不良を発表する研究を、鈴木博士はしている…

白塔:(制御するように)ドン…

ドン:有名な話だよ、裏社会でもな…

白塔:ドン…口を慎めと(言ったはずですが…)

ドン:(被せて)(挑発するように)世間では、「マザー」の判断に反対する団体もいる。「犯罪者指数査定反対」の団体なんかがそうだ。大抵は、犯罪者として烙印を押された当事者やその親族がその団体を作ってる。白塔さん、アンタは、「マザー」システムと共に、自分の政治を続けようとしている。だから、アンタは(鈴木博士を…)

白塔:(被せて)(余裕を持ちながらも、怒った口調で)…おい。口が過ぎるぞ猟犬。…犬は犬らしくしておけ。その方が身のためだぞ

ドン(楽しそうに):お~、こわ(w)…わかりましたよ、総理。俺のチーム名は、知っているでしょうに

白塔:マッド・ドッゴス

ドン:ネットハッキング、推理、人心掌握、武器の扱い、…犬みてぇに仕事に忠実な俺たちは、敢えて間抜けなコードネームを付けられた

白塔:猟犬どもは、猟犬らしくしていればいい。…成功したあかつきには、好きなだけ報酬をやろう。

ドン:その前に一つだけ。…これは、仕事の話なんだが。

白塔:どうした、犬。

ドン:俺は、殺しはしても、筋の通らねぇことはしねぇ主義でな。…俺のやってることは「正しい」か

白塔:…おかしな犬だ。私の「マザー」は、人々を豊かに、幸せにしている。その事に、間違いなど。

ドン:…そうか…いや、悪ぃな。これ、癖なんだ…ま、大船に乗ったつもりでいな。俺は、仕事はしくじらねぇ。


0:騒ぎ出す三人の男たち

タイガ:…カミよ!なぜ!なぜ俺に戦う力をくれなかった!

トオル:…やめてくれ。…やめてあげてくれ…。一番悔しいのは、博士なんだ…。

博士:…お気遣い、痛み入るよ…大丈夫だ…。いや、大丈夫では、ない…

トオル:Hey、ミミ、聞こえてるか?

ミミ:電源を起動しています…ぜーんぶ、聞いてたわよ。意識だけは、シャットダウンしなかったの!…私も、カリキュレイターなんでね、この後、トオルが何を言うかも、ある程度予測できるわ。

トオル:彼女を…

ミミ:「救い出せる確率は?」…限りなく0%に近いわ。さっきのあいつは、ダークウェブに載ってる、闇の男よ。あんたたちじゃ、太刀打ちなんてムリ。

トオル:…やっぱり、そうか…。無理なのかよ、僕は!…ただ見ていただけだった!いつでも…!何も言えなかったし、何もできなかった!

トオル:あの人は僕にとって、僕自身よりも大切な人だったのに…また何も出来なかった!

タイガ:落ち着け、トオル!

トオル:無理だよ!…ウソなんだ…多分、ほんとうに悔しいのは…僕だから…。

タイガ:トオル…計算なんか、所詮は計算だ。大事なのは、ここだろ!トオル、お前の胸の中にある、リンナを思う気持ちだろ!

トオル:タイガ…

ミミ:ちょっとォ~、私もカリキュレイターなんですけどお、私の助け要らないのね、そうなのね、はい、お邪魔しましたよ~っと

タイガ:言い方が悪かった、ミミノコビト。しかし、あなたにも、心はあるだろう?

ミミ:もう!私、本当は、リンナなんてどうでもいいのよ!タイガ!あんたのこともね!

…でも、トオルが助けたいと思うなら…私、全部聞いていたのよ、…だから、私は、リンナなんて女…でも、トオルが助けたいと思うなら…

トオル:いや、ミミはカリキュレイターなんかじゃないよ…大切な僕の、相棒だ!…

ミミ:…そうよ。…トオル、アンタは、あの子を追いたいんでしょう?

トオル:そうだよ…頼むよミミ、力を貸して…

ミミ:…これだから、男なんて…あーあー、わかったわよ!私がいれば、トオルの勝率は158%なんだから!


0:ドンの車

ドン:おい、「ビーグル」、博士たちの様子はどうだ?何?「クマイヌ」がやられただと!?…ああ、あの原始人のガキか。なるほど。

ドン:…「クマイヌ」連れて撤退しろ。…いい、あいつら如きに何ができる…は…?ガキどもが博士の車で俺たちを追ってくる!?

ドン:…へぇ、少しは楽しませてくれるじゃあねぇか。…いい、「クマイヌ」を闇医者へ連れていけ。

トオル:(人格が変わって)ぅおらぁああああ!どけどけどけーい!俺様が通るぜぇ~!?

タイガ:なるほど。この鉄の馬は、乗り手を狂わせる魔性の馬なんだな。

ミミ:違うわよ。自動運転は「犯罪者に登録されてるトオルにはできないから手動に切り替えたけど、まさか、トオルが手動運転で人格が変わるタイプだったとはね。これは確かに、犯罪者指数100%だわ。」

ドン:オイ、「サルーキ」、運転代われ。…俺は、かつてはチョットしたスタントマンでな、でも、カリキュレイターに犯罪者認定されて、このありさまよ。さて、ちょっと飛ばすぜ!ガキ共、付いてこれるかな!

トオル:あ!?この俺様を巻こうってか?いいじゃん、ノッてやんよ!タイガ!ミミィ‼しっかりつかまっとけよ!?

ミミ:やれやれ。(事務的に)目標まで、あと500メートルです。

タイガ:この際、悪霊に呪われてでもいい!トオル、とばせ!

ドン:オイ、「ウィペット」、運転してるガキは、さっき青ざめてた生白いヤツか?…生白いくせに俺に怒鳴ってきやがってよぉ…フン、良い腕してるじゃねえか。…面白れぇ、このまま、おびき寄せろ。…白塔のラボまで行くぞ!


0:白塔のラボ。エントランス

タイガ:(呆れて)正直、弱いなぁ。お前たちが乗る鉄の馬たちは、お前たちを鍛えはしないんだな。

タイガ:…(厳しく)命までは取らない。だから、俺たちの邪魔をするな。

トオル:イヤ、オマエが強すぎるだけだから!でも良かった…ラボまで来れたっぽいし、白塔のボディーガードも、あらかた片付けた。相手が銃を持ってなくて、本当に良かった…

トオル:あとは、あいつを、…ドンをやれればいい。…いけるか?

タイガ:…やれる。…ああ、やれるさ…さっきは、ヤリもなかった。でも、今はある。…必要なら、俺はヒトだって殺せる…!ドンは(殺すつもりでいかないと…)

ミミ:(被せて)タイガ!嘘つくんじゃないわよ!心拍が上昇している。あんた、私に心があるって言ったわね?あんたにも、心があるんでしょう?

ミミ:ヒトだって殺せる、なんて、自分の心に無いこと言ってんじゃないわよ。

タイガ:ミミノコビト…そうだな…俺は、多分、ヒトは殺せない…だけれどな、守りたいんだ、友の、大切な人を…

トオル:タイガ…無理はするな…僕がドンを引き付ける。タイガなら、ボディーガードに出くわしても、簡単に倒せるだろ?

タイガ:トオル…わかった、必ずリンナを救い出す…約束だ。

トオル:ああ。頼んだよ、タイガ。


0:白塔のラボ、ドンたちに与えられた部屋

リンナ:あの…薬を吸っていいですか…私、薬が無いと…

ドン:おかしいな…そんなデータ、白塔からはもらってねぇぜ。…まぁいいか。使えよ、薬。「ボルゾイ」、手錠外してやれ。

リンナ:…思ってたより、優しいんですね。まるで、わざと悪いふりしてるみたい

ドン(凄んで):…ああ“?…俺の怖さが分かんねぇみたいだな、メスガキ。

リンナ:あなた、…なんだろう、本当は、怖い人じゃない気がするの。

ドン:…調子狂う。「ボルゾイ」、コイツ、薬飲ませたら閉じ込めとけ。

トオル:オーイ、ドン!いるんだろ?僕はここだぞ!僕らが!お前の部下どもをメッタメタにしてやった!ここへ来いよ!お前が誰かとか関係ない!僕が!お前を!倒す!

ドン:…さっきのガキか…おい、お前ら、撤退しろ。お優しい白塔サマのお達しだ。「人は殺すな」とさ!

ドン:全く、どうかしてないか?あの人は。脅しだけで鈴木博士に言う事聞かせろってんだ…誘拐してる時点で犯罪者なのによぉ!…ああ、いい。あんなガキ共…俺一人で十分だ。


0:白塔のラボ、廊下

トオル:こ、こ、こ、来いよ!お、お、お前なんか、こ、こ、こ、怖くないぞ!?

ドン:足ガックガクじゃねぇか、坊ちゃんよお。…お前、名前はなんてんだ?

トオル:あの、の、の、…それ言ったら、見逃してくれる…?

ドン:(楽しそうに)アッハッハ!さっきまでの威勢はどこ行っちまったんだよ!(元に戻って)俺はドンだ。お前は?

トオル:と、と、、トオルだ!、です…

ドン:トオル…?あー、犯罪者認定されて逃げてたガキか。なるほどなぁ…

トオル:だ、だったら、何なん、ですか…?

ドン:(本気で)…いーか、トオル。俺はお前を気に入ったんだ。お前もワルモノにならないか?どうせ俺たちはカリキュレイターにワルモノのレッテルを貼られた!

ドン:お前の運転を見て分かった!お前は俺と同じだ!なら、トコトン暴れようじゃねぇか!マッド・ドッゴスに入れ!お前なら大歓迎だ。

トオル:ち、ち、…違う!自分というのは誰かに決められるものじゃない!自分が誰か決めるのは、自分自身だ!

ドン:そうじゃねぇよ!全てを決めるのは世間だ!俺はなぁ、査定までは、とってもいい奴だったんだ。

ドン:学校の成績はよし、お友達はたくさん、女の子にもモテたし、親思いの、本当に良い奴さ。

ドン:…なのに、査定で犯罪者にされちまった!俺の気持ち、わかるか?更正施設を出た後の、俺の気持ちが!誰ひとりとして俺と目を合わせない!誰ひとりとしてだ!

ドン:暫くは、スタントマンとして皆を見返してやろうとした。でもな、ある日、更正施設にいたことが、バレたんだよ。事務所に。

ドン:…その日、事務所には、あとは俺が名前を書くだけの退職届が置かれていた…俺の机にな!

ドン:…だから、俺は決めたんだ。俺は、生まれついてのワルモノだった。なら徹底的にワルをやってやろうってな!

トオル:そ、そ、そんなこと、知るか!…い、いや、すみません…ほんと、ほんと、すみません!

ドン:おい、待てよ、トオル!…くっくっく…なんだよ、さっきとは立場が逆の鬼ごっこかァ?いいぜ、とっ捕まえて原始人のガキの居場所も吐かせてやるよぉ!

ドン:そうだなぁ…まずは、指を一本ずつ切り落としてやる!

トオル:ウソだろ、捕まったら、マジでヤバイ!


0:白塔のラボ、寝室

白塔:鈴木君、君ほどの才能の者が、孫のためとはいえ、見え見えの罠をかいくぐって、その身を危険に晒しながら、よくもここまで来たものだな。

博士:ワシは、リンナが孫だから来たのではない!共に生きた時間が長いからじゃ!…白塔博士、あなたには言ったところで分からんじゃろうがのう。…

白塔:(無視して)…取引しないか。鈴木君。…「マザー」の不良の発表を取りやめるんだ。でなければ、君の孫の命は保証しない。

博士:ついに、命を軽視するまでに、堕ちたか…白塔博士、あなたは間違っている。

白塔:まぁ何とでも言えばいい。オールイズウェルイズザットエンズウェル、だ。

博士:また訳の分からん事を…あなたはいつもそうだ。小難しい言葉を使って、他人を見下している。そのおごりが、あなたの間違いの元だ。

白塔:私と戦うのか?武器もなしに?

博士:罠をかいくぐって来たと、自分で言っただろうが。…今、ワシの体は全身が武器化しておってなぁ。以前、タイムスリップ実験に失敗して体のほとんどは吹き飛んどる!

博士:今や、全身がマシンよ!先刻は油断しておったが、今回は戦闘に必要な整備はしてきた!

白塔:そうか…ならば、その体、バラバラに壊してもアシモフのロボット三原則に引っかかるまい。出でよ、ノブナガ!

博士:くっ!対人戦闘用オートマタか…

白塔:さて、私は、「マザー」に次なる一手をきいてこようかな…!頭部だけは残しておけよ、ノブナガ。私は手を汚す気は無いのでな。


0:白塔のラボ、廊下

トオル:はあ、はあ、はあ、…

ドン(息一つ切らしていない):…なぁ、坊ちゃん、聞きたいんだが、…なぜ諦めない?お前と俺とは、同じはずだ。どうしてお前は諦めない?

トオル:…んなこと、知るかよ…初めて、だったんだ…初めて、守りたいって、助けなきゃいけないって、そう思ったから、…それだけで。

ドン:…お前、馬鹿なんじゃないか?

ドン:俺は、国際犯だぞ?お前らとは、経験が違う。お前らが俺に敵うわけない。分からないのか?わかってるんだろ?なのに、どうして頑張れる?

トオル:だからっ!知るかよ…、僕は、僕にやれることを、やってるだけだッ!計算なんて、無視しろって、…僕の友達が言ってたんだ…ッ…

トオル:だから!もう!許してくださいッ!ホント怖いので、もう、追いかけいてこないで…ッ!

ドン:(優しく静かに)…わかった、追いかけない。

トオル:そう…追いかけないで…って、…え?(思わず止まる)

ドン:何だろうな…さっきの嬢ちゃんといい、お前らは…なんていうか、…調子が狂うぜ、全く。…もういい。…初めてだ、「狩り」の途中にこんな気持ちになるのは。

トオル:ドン…?

ドン:なーんてな!ホラ、捕まえた。エモノが猟犬のコトバ信じてんじゃねーよ!

トオル:うっ!

ドン:おらっ、お望み通り白塔の所へ、連れて行ってやるよ!


0:白塔のラボ、マザー管制室

白塔:「マザー」、君の計算通りに、鈴木博士の孫を連れて来たよ。…次は、どうしたらいいと思う?

マザー:鈴木博士の孫を、殺すといいでしょう。

白塔:…聞き間違いをしたようだ。「マザー」、鈴木博士は、交渉に応じないんだ。どうしたらいいと思う?

マザー:鈴木博士の孫を、殺すといいでしょう。

白塔:それは、あくまで脅迫の話だよね。…「マザー」、殺人は罪だ、知っているだろう?私はあくまで、穏便にことを済ませたいんだ。でなければ、私も犯罪者たちと一緒になってしまう。

マザー:鈴木博士の孫を、殺すといいでしょう。

白塔:…なぜ?

マザー:私は、たくさんの人間のデータに触れてきました。そこで学習したことは、人間は、支えとなる人間を失うと、急速に活動を停止することが多いという事です。

マザー:鈴木博士を殺さずに鈴木博士の活力を奪うには、博士の孫を殺せばいい

マザー:また、鈴木博士は優秀な博士ですが、孫の鈴木リンナは欠陥の多い人間です。彼女は、肺を病んでいる。

マザー:この先、生かしておいても、博士ほどの人類への貢献をする確率は24%です。生かしておいても人口を増やす見込みもなく、医療費が掛かるばかり。

マザー:よって、鈴木リンナを殺害すべきです。

白塔:違う!彼女もこの国の人間の一人だ。脅しの材料にはしても、本当に殺すわけにはいかない!

マザー:いいえ。死ぬべき人間は、存在するのです。

白塔:私は…いったい何と喋っているんだ…?私はいったい、何を作り出したんだ?このコンピューターは何を言っているんだ…?

白塔:私は…何をしてきた?…弱い者が犠牲になる世界…?そんなものを、私は作り出したかったわけじゃない!


白塔:ママ、ぼく、頑張ったよね...

白塔:それなのに、誰もぼくを認めてくれない…!

白塔:ぼく、ママが天国へ行く前に、人のために尽くしなさいっていっていたから、だから、こんなに努力したのに!したのに

白塔:…ぼくは、間違ってた…ぼくが作ったのは、ただの化け物だった…

タイガ:こいつがリンナをさらったのか…?

白塔:いつからあなたは変わってしまったんだろう、マザー....

白塔:違う、最初から、ぼくが悪かったんだ..ごめんね、マザー..…

白塔:ぼくが、この悪夢を終わらせなくては…

マザー:白塔傑の危険行動を察知。彼は、私を停止させようとしています。非常事態、非常事態。緊急措置を講じます

白塔:フフフ…ハハハ!一緒に死のう!マザー!

ドン:白塔さんよお、アンタ、完全に狂っちまったみてぇだな。…

タイガ:何が起きてるんだ!

ドン:原始人のガキに、…嬢ちゃんじゃねぇか…お姫様救出ってとこか?

タイガ:ドン…!

トオル:待って、タイガ、武器は下ろして!僕にも当たる!

トオル:マザーが、暴走してる。白塔大臣は、独りでラボに残って死ぬ気だ!マザーの暴走を、食い止める気なんだ!

ドン:なるほどね。…それって、素人でもできるのか?

ミミ:できるわよ。…私が一緒にいればね。

ドン:因みに、マザーの暴走を止めないと、どうなる?

ミミ:毒ガスで、10分後に、このラボにいる全員が死ぬわ。気絶してるボディガードも含めてね。それから30分後に、この国のデータシステムが、めちゃくちゃになる。

ミミ:誰かが残って暴走を止めればいいけれど、多分、その人は死ぬわ。

ドン:誰かが犠牲になればいいってことか…なら、俺がやる。

全員:(それぞれに)え?


0:白塔のラボ、寝室

博士:はぁ、はぁ、…敵ながら、あっぱれ!

博士:さて、ワシのカリキュレイターが危険信号を出しとる…あとは、二人に任せるか…

博士:頼んだぞ、トオル、タイガ…お前たちを信じよう…


0:白塔のラボ、マザー管制室

ドン:白塔、そこ代われ。

白塔:…何の用だ、犬。

ドン:マザーの暴走は、俺が止める。あんたは、この国にまだ必要だ。

白塔:…ぼくに生きる意味なんてもう…

ドン:…最後に改心して善玉になる…これが俺にとって最高の退場のしかただよ‼

白塔:ドン…?

ドン:白塔、アンタは割と、嫌いじゃなかった。生きろ!生きてこの世のバカどもに精々つくし続けるんだな!やるなら終いまでやれ!生きて、罪を償いやがれ!

白塔:(目が覚めたように)わかった…わかりました。私はこの国のために、尽くして見せます。人々に望まれる限り、尽くして見せますとも。


トオル:ミミ…残るんだね。

ミミ:ええ。

トオル:…どうして

ミミ:…あんたに愛想が尽きたのよ。…

トオル:…そっか…

ミミ:(泣きそうになりながら)行きなさいよ、早く!

トオル:…さよなら…ミミ。

ドン:…行っちまったな…

ミミ:こうするしかないでしょ。

ドン:ああ…(独り言のように)どうせ、今さら善玉になんかなれやしねぇのに....俺、バッカだなぁ....最後に、マッド・ドッゴスのバカ共に、会いたい…。死にたくねぇよぉ…ドン:でも俺、今「正しい」よな…

ミミ:アンタ、バッカじゃないの?アンタは私と違って道具じゃないんだから、したいようにすればよかったのに。…

ドン:そうか…俺、「正し過ぎた」のかなぁ…レッテル通りに良いやつやって、ワルになって…たくさん、殺した。

ドン:…そして今は、あのガキ共に当てられて、正義の味方になろうとしている…

ミミ:アンタの生い立ちなんか、興味ないわよ。…でもアンタ、今、間違いなくカッコいいわよ、これは158パーセント。

ドン:ありがとう…とか、言えるかよチクショウ!マッド・ドッゴスの可愛いバカ共にはよぉ、俺が必要なはずなのに…


0:数日後

トオル(N):こうして、あっけないほど簡単に、世界は変わった。

トオル:総理のラボに侵入したのは国際犯罪集団の「マッド・ドッゴス」という事になり、僕は、それを追い返した張本人として表彰され、犯罪者指数のことは揉み消された。…

白塔:これから、この国は重大な局面を迎えようとしています。私は、「マザー」のシステムの見直しを任期中に行う必要があります。

白塔:任期中、命をかけて!このことを、善処して参ります。

トオル(N):そうして、あいつは…タイガは、元の世界へ帰っていった。…まるで、何事もなかったかのように、日常が戻って来た…


0:トオルが声変わりしている

トオル:お待たせ、リンナ。

リンナ:待ってた、トオル。…手動運転は、やめてね…

博士(N):そう言えば、遺跡から、変わったものが出土したらしい…

トオル:急になんなんですか!?博士!

博士:大臣を補佐する仕事がキツくてのぉ。…ドライブだけじゃろうな…トオル…

トオル:も、もちろん!

トオル(N):博士が言うにはナウマン象の牙とオオヘラツノジカの角が、寄り添って出て来たらしい。まるで太陽と月のように寄り添って…。

トオル(N):偶然かもしれないし、必然かもしれない。…でも思うんだ。あいつはきっと…


0:古代の世界。子供たちに囲まれ、少し年を取ったタイガが、火を囲んで座っている

タイガ:..こうして私は、ミライのクニに行き、素晴らしい友たちや、変わった食べ物や飲み物、不思議な賢者、そしてコビトにも出会った。

タイガ:…レモネードという、美味しい飲み物…トオルにリンナ、ハカセ…また会いたいなぁ

タイガ:…そうしてミライのクニから農業を持ち帰り、長老たちからホマレをもらい、ルゥエと夫婦になった。今は、このホマレをみなに話すカタリベをしている。

タイガ:最初は、反対する者たちもいた…しかし、私の心には、常にミライのクニの友たちがいたし、ルゥエは、俺をわかってくれた…。

タイガ:…え?ミライって何かって?、..それはな子供たち、お前たちの、先にあるクニだ。

タイガ:..あぁ、不安がらなくてもいい。ミライはいずれやって来る。ミライは怖いものじゃないさ。お前たちは、今をゆっくり生きれば、ミライはより良く変わっていくんだ。

タイガ:私はミライでひとりでいたわけじゃない。お前たちも、助け合い、学んでいけばいい。


0:Fin



色々な方にご協力いただき、この作品はできました。

タイガが独りでなかったように、作者も独りでは、この作品を書き上げました。

ありがとうございます。

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