神離れの儀式とは
「ミリアちゃんに説明してくるね〜」
そう言いマモンはミリアの方に走っていった。そして、ミリアに話しかけた。
「ミリアちゃん、君は今年で十歳だよね?」
「うん、そうだよ。」
ミリアは頷きながらそう言った。
「本来ね、君の歳になると、神離れの儀というものをするんだけど、君はまだだからね。本来はもうちょっと早くするんだけど、君たちは色々あるからね。」
マモンはそう言いながら頷いている。ミリアは目を輝かせながら聞いた、
「神離れの儀って、大人の仲間入りをするための儀式なんだよね!?」
マモンは顎に手を置き言った。
「うーん、まぁそんな感じの意味もあるけど、その歳まで生きててくれてありがとうって意味の方が強いな。あと、一人で生きていくための力を備えさせる意味も。」
それを聞いてミリアが首を傾げた。
「どーして?」
「ほら、外にはたくさんの危険がある。貧乏だとまともな治療を受けられない。だから、ある程度の歳になる前に死ぬことも少なくない。だから、生きていてありがとうということだね。」
マモンが神妙そうな仮面に変えてをしてそう言った。
ミリアはそれを見て、驚いた、
「仮面の顔が変わった!どうして!?」
「ああ、これは特注なんだよ。魔道具で、つけてる人の気持ちや表情で変わるんだ」
ミリアは目を輝かせながら、
「すごーい」
と言った。
「まぁ、話は戻るけれど、生きているのとは素晴らしいのさ。」
そうマモンが言い終わるとミリアも喜びながら
「私が生きていられてるのもとってもいいことなんだね!」
と、キャッキャと騒いだ。とても嬉しそうにはしゃいでいる。
「そうだね。中には生きられない子も沢山いるから、生きていることはある意味奇跡に近いんだよ。」
マモンは真剣な声音でそう言った。
「まぁ、そういうわけだから、ミリアちゃんとトアくんはしばらく泊まっていきなよ。」
マモンがそう言い出した。ミリアは目をキラキラとさせとても嬉しそうな顔をした。
「ほんと!?」
「ほんとだとも。何日でも泊まっていきなよ!じゃあ、案内させるね!」
そういい鈴を鳴らした。そして、最初からいたが影の薄い美人のメイドさんが近づいてきて、
「ご案内致します。」
と言い、歩き出した。ふと、ミリアは聞いた、
「あなたのお名前は?」
メイドもハッとしこちらにくるりとむき
「申し訳ございません。名乗るのを忘れておりました。わたくし、サタナキアと申します。お二人がこの屋敷の滞在中は基本わたくしがお世話させていただきます。」
そういい頭を下げた。
コツコツとサタナキアが、前を歩いている。
階段をあがり、二階に上がるとある部屋の前で足を止めた。
赤色の宝石がドアに嵌められていて、薔薇を基調とした美しい装飾がなされている、赤色の宝石は太陽の光を受けて美しく輝いている
「こちらが、ミリア様のお部屋となります。」
「うん?部屋は別々なのか。」
トアはてっきり、兄妹なので一緒の部屋だと思っていたのだ。
「はい、ミリア様もう子供ではなくなりますので。トア様とは部屋は別々なのです。」
そう淡々とサタナキアは言った。
確かに、ミリアももう神離れの儀式をするし、トアはもうとっくの昔に済ましている。
二人はもうある程度自立しなければいけないのだ。
トアもミリアと一緒に居るのが当たり前で忘れていた。
「それもそうですね。ミリア一人で寝て起きるんだぞ。」
心配だが仕方ないと思うトアである。
「うん、そんなの大丈夫だよ。前々からお兄ちゃんとは別の部屋にしなきゃって思ってたんだよね。」
うんうんとうなづきながらミリアは言った。
「本当か?大丈夫か?」
「私はもう、子供じゃないんだから大丈夫!」
怒ったように頬をミリアは膨らませながらそう言ってソッポを向いた。そして
「お兄ちゃん、早く部屋に案内してもらって。」
グイグイとトアの背中を押した。
そして、バタンとドアを閉めた。
ポリポリと頭をトアがかいていると
「では、参りましょう。」
と言い、サタナキアは階段へ向かい上に登って行った。
三階へあがり、少し廊下を歩きながら、サタナキアは説明をした
「一階は、共同の部屋があります。二階は女性の部屋と神離れ儀式前の子供のになります。」
「なるほどな。」
もうしばらく 緑の宝石が嵌められた葉と茎を基調とした装飾がされているドアの前で立ち止まった。
「こちらが、トア様のお部屋になります。」
「ありがとう。」
そう言ってトアは部屋に足を踏み入れた。
部屋はシンプルなシングルベッド、品の良い机とイス、クローゼットに壁には高そうな剣が飾られていた。
シンプルにまとまっているが、どれひとつとっても高価であるだろう。
トアが部屋を見回していると、サタナキアが入ってきて
「もしもご用事があれば、このベルをお鳴らしください。」
サタナキアが手を出した方を見ると、ベルが置いてあった。
トアがそれを手に持ち首を傾げながら聞いた
「こんなので、聞こえるのか?」
「トア様の疑問は、確かでございます。このベルは魔道具となっておりまして、私の魔道具と対になっておりまして鳴らすと私に連絡が来るのでございます。」
なるほどとトアは首を縦に振った。
「では、ご用事があれば、遠慮なさらずにベルをお鳴らしください。」
そういいサタナキアは一礼をして、部屋を出ていった。