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9/21

現実逃避

拙作をお読み下さり、ありがとうございます!

更新が遅れてすみませんでした(>_<)

「これ、おいしいよー?」

「……(コクン)」

アリアとルーナがクッキーの乗ったお皿をマリリンとレイに差し出す。


「「……いただきます」」

どこか緊張しているようなマリリンとレイは、ゴクリと唾を飲み込みながら、クッキーに手を伸ばした。


「うん。たべて、たべて~!」

「……(コクン、コクン)」

そんな二人をアリアとルーナはワクワクした瞳で見ている。


サクッ。

「……あら、本当。おいしいですわ」

「絶妙な砂糖のさじ加減と……隠し味の塩が良い仕事をしてくれてるんだと思います」


「へ~、かくしあじがわかるなんてすごいねぇ~」

「……(コクン)」


マリリンと、レイ、アリアとルーナがクッキーで頬をパンパンにさせながらニコニコと笑っているのを、私は頬杖をついてぼんやりと眺めていた。


――『マリリン』と『レイ』とは、前回のお色気担当と前々回のオタク担当だった『ありあーな二号』と『ありあーな三号』である。

二人ともルーナと同じく、私の元に残るのを選んで妖精になったのだ。


四人は私が用意したドールハウスで、のんびりのほほんとお茶会をしている。


自分と同じ顔をしてはいるが……小さな妖精になった三人はとても可愛くて、そして個性的である。


ルーナは私から表情を無くし、そのまま小さくしたような姿。


マリリンは私を小さくした姿なのにもかかわらずボンキュッボンな体型をしている。髪はウェーブのかかったロングヘアーで、小さい身体ながらも色気がある。

本人(わたし)はツルペタなのに……どうして!?


コホン。……レイは私を小さくしたような姿だが、ぐるぐる渦巻く眼鏡と三つ編みおさげ……と、ちょっと個性的である。


余談だが――マリリンは、かの有名な「マリリン・モン○ー」から。レイは「ガ○レオ・ガリレイ」から、それぞれ名前をいただいた。

『名は体を表す』というが、この名前は二人の個性に合っていると思う。


可愛いな。

プニプニの頬っぺたや手足がとっても可愛い。


可愛すぎていつまでも見ていられる……!



「……(あるじ)は一体どうしたのかしら?」

「今朝からずっとあんな感じですよ」

「……(コクコクコク)」

マリリンとレイが声を潜めコソコソと話をするのに合わせて、ルーナが高速で何度も頷いている。


「きょうのアリアーナはへんだよねぇ~。いつもよりも~」

アリアは相槌を打ちながら大きな口を開けてクッキーを頬張った。


マリリン達は私のことを何故か【(あるじ)】と呼ぶ……って、アリア!?『いつもよりも』は要らないと思うのだけど!?


でも……私が『変』なのは否定しない。


何故ならば私は現実逃避の真っ最中だから……。



――事の始まりは、今朝届いた一通の手紙。


執事から受け取った手紙の封蝋には、クローウェルが使用する印璽が使われていた。


つまりは、クローウェルからの手紙ということだ。


……へえ?珍しい。


そう思いながら簡単に手紙を開けてしまったことを…………激しく後悔した。

その手紙の中身は、私の想像を遥かに越えたものだった。



「実はコレなんだけど……」


私はみんなと視線を合わせないようにしながら、テーブルの上にクローウェルから届いた手紙を広げた。



*・*・*・*・*


『愛しのアリアーナへ


天使のように愛らしくも可愛い君の顔を一週間もの長い間、見られないだなんて辛すぎて胸が張り裂けてしまいそうだよ。


無口な君もおしゃべりな君も積極的な君もいつも通り優しい君も。

どんな君であっても僕にとって大切で愛しい存在には変わらないよ。

こうして君のことを考えていると、早く会いたくて、会いたくて堪らない。

今すぐに会いに行きたいよ。


僕に会えない寂しさから、他の男に気を移したりしたら……。


ああ、君の艶やかな髪に触れたい。

君の匂いを嗅ぎたい。

君の柔らかい身体を思い切り抱き締めたい。


会いたい。会いたい。愛しい君に会いたいよ。

仕事が終わったら絶対に会いに行くから楽しみにしていて欲しい。

いつも君だけのことを見ているよ。


クローウェル』



*・*・*・*・*


「「「………………………………」」」


「……ええと、これは~?」


三人の妖精達が揃って顔を青くしている中。

アリアがゴクリと唾を飲み込みながら尋ねてきた。


「……これは今朝、クローウェルから届いた手紙だよ。仕事が忙しくて暫く来れないらしいよ……あはは」

私は四人から視線を反らし、斜め上を魚が死んだような目で見上げた。


「「こ、怖っ……!」」

「……!(コクコクコク)」

「う~わぁ~……」


……うん。怖いよね!?怖すぎるよね……!?

私は両手で顔面を覆った。


これまでにクローウェルが邸を訪問できないことなんて沢山あった。

その時はただ、訪問できない旨の伝言があった位で、こんな風にクローウェルから直筆の手紙が届いたことはなかった。


クローウェルとの婚約が解消される気配は全くないし……寧ろ、溺愛度が上がっているような気がする。


……どうしてこうなった。



「『他の男に気を移したりしたら……』の『……(ここ)が怖いわよね……』

「『君の匂いを嗅ぎたい』もヤバいですし、『いつも君だけのことを見ているよ』もかなりヤバイですよ……?」

「アリアーナ、かんきん……」

「……(コクン)」

「やーーめーーてーーよーー!!」


私がクローウェルに恋をしないから?

恋をしないからクローウェルがおかしくなったの!?


私は頭を抱えながらテーブルに突っ伏した。

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