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アリアの力

クローウェルが帰った後。

『ありあーな』は、とても荒んだ目をしていた。


……無理もない。


今日のクローウェルは、いつもと態度が違う(ありあーな)の困った顔が気に入ったのか、目が合うまで視線を追い掛けたり、何度も手にキスをしたり、いつも以上に密着してみたり――と、全てありあーなの反応を見ながら()()に行為を繰り返したのだ。


あんなのは嫌がらせとしか思えない……。


最初は無視していたありあーなは、執拗で幼稚な行為を繰り返すクローウェルを虫けらを見るような目で見ていた。

そんなありあーなの反応に、何故か気を良くしたクローウェルがちょっかいを出し続けるというエンドレス……。


「ごめんね……ありあーな」

私が複製体(ありあーな)を作ったばかりに、嫌な思いをさせて……。


「…………」

ジーッと私を見たありあーなは、フルフルと首を横に振った。


「辛い思いをさせて、本当にごめん。もうあなたのことは使わないから安心してね」


ありあーなに向けて『消去(デリート)』と唱えようとすると、ありあーなはまるで『嫌』と言うように首をブンブンと横に振りだした。


……え?


「『きえたくない』って、いってるよ?」

答えたのはアリアだ。


「でも……」


私と同じ大きさの複製体(ありあーな)をこのまま置いておくのは、どう考えても無理がある。

家人や侍女達に複製体を作ったことを説明をしなくてはならないし、勿論、作った理由を聞かれるだろう。

……つまり結果的に私の行動がバレてしまう。

それはとってもマズイことだ。


「だいじょーぶ、わたしにまかせてー!」

私の不安を他所にアリアは両手を腰に当て、平らな胸を反らしながらドヤ顔をした。


「ほにゃらら~」

ありあーなに向けて、呪文を唱えたかと思うと……ありあーなが目映い光に包み込まれた。


『ほにゃらら~』って!どんな呪文!?

反射的に目をギュッと瞑りながら、心の中で突っ込んでおく。


「アリアーナ、なまえをつけてあげて」

……なまえ?


首を傾げながらそっと目を開けると、目の前にはアリアと一緒にもう一人、羽が生えた私にそっくりな小さな女の子が……………………ってまさか!?


「そうだよ!ちっちゃくしてみた!」

えっへんと、アリアはまた平らな胸を仰け反らせた。


ぽっこりお腹の幼児体型が可愛…………じゃない。


「ち、ちょっと待って!小さくなってるのはまだしも……アリアのように羽が生えているって…………どういうこと!?」


「えーっと、ありあーなも妖精になったのー」

「……そんなことできるの?」

「んー?()()()じゃない」


……いや、できてるけどさ。

私が聞きたいのはそうじゃない。


「そ・れ・よ・り・も!なまえ!」

アリアがプウッと頬を膨らませる。


ああ、()()か。


「名前が必要なの?」

「うん!はやくなまえをつけてくれないときえちゃう!」

「え!?」

状況はまだサッパリ理解していないが、ありあーなが消えてしまうのは嫌だ。


今までずっと『ありあーな』と呼んでいたので、名前を付けるという行為が不思議な感じがするが……あくまでも『ありあーな』は複製体の総称にしたい。


それならばどうするか……。


アリアが両手サイズなら、この子は片手サイズ。無口で表情は乏しいが……月明かりのような優しさと暖かさを感じる。半透明な羽がキラキラして綺麗だ。

()()()()……か。


そうだ!


「……『ルーナ』はどうかな?」

「……!!」

ありあーな……もとい、ルーナの顔が明るくなった。


どうやら気に入ってくれたようだ。

グルグルと私の周りを飛び回っている。


これでルーナを消さなくて良くなった。

そのことがとても嬉しい。


今日のご褒美を兼ねてクッキーを渡すと、更に喜んでくれた。

荒んだ目をしていたあの子はもういない。


「あー!ずるいー!」

「はいはい。ちゃんとアリアのもあるよ」


テーブルの上で並んでクッキーを食べるアリアとルーナ。


ふふっ。可愛い。


私はそんな二人に癒されながら、今後のことを思案した。

作者はサブタイトルを付けるのが苦手です……(汗)

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