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またしても風上におけないヤツ  作者: トキオリオン
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「死の香りよ永遠に」

最終話「死の香りよ永遠に」


 タロウの人生航路が座礁する原因になったあのマジックショップの店主の行方も分からず仕舞い。


 うっかり契約してしまった魔力・呪文要らずのオンリーワンレア魔術とやらの解約もままならず、タロウは、いつもの公園で途方に暮れる。


 医者かすら怪しいパンダ先生の提示した天文学的金額を稼ぐ当てもなく、今はただ何も考えずに普通のオナラをこきたい。


 普通って素晴らしい。普通じゃないオナラをこけるからと誰かに自慢できるワケじゃなし。


 下手すると産業廃棄物より危険な物を尻から出してしまう危険性を排除したかった。


 生活費くらいはなんとかなるにしても、この先、デス・スメルと一生付き合って生きて行くと言うのは嫌すぎる。


 魔術型疾患外来から帰って以降、ハナ先生ともご縁が切れたようで、この公園でひょっとしたら救いの手を差し伸べてくれる奇特なお金持ちと出会えるはずもなし。


 タロウに残されたのは、衣類を詰め込んだリュックサックと安物の自転車一台。

 

 タロウは考えた。


 デス・スメルのことを知っている人物はごく少数。


 タロウの屁を不幸にも食らって天に召されても、まさかオナラの魔術でお亡くなりになったとは、タロウ以外のほぼ大多数は気づかない。


 ひょっとすると、自動車事故や自然災害でお亡くなりになっている人類の方が多いくらいだ。


 なんだ。


 死の魔術師だからと人様に遠慮することないじゃないか。


 もう我慢はやめよう。我慢は体によくない。


 確かに、人生において我慢しなくてはいけない時はある。


 しかし、誰も居ない公園でオナラを我慢することはない。


 今夜も警備員のバイトがある。


 こける時こく。


 タロウは快楽殺人者でもテロリストでもないが、せめてオナラくらいは自由にこきたい。


 夜のとばりが降りる頃、外灯の下の思い出のベンチで、タロウは一発大きくデス・スメルをこいた。


 それはオナラ音源のサンプルにしても良いくらいオナラらしいオナラの音を、低く短く尻の肉を震わせ、生きた管楽器さながらにこいた。


 デス・スメルはやがて風下へ漂って行き、一人の鼻孔に吸い込まれた。


 ドタ!と短く何かが倒れる音がした。


 タロウが物音の方を振り向くと、ベンチから2~3メートルくらいのところで黄色の紳士が卒倒してた。


 タロウは、運のない男は自分が一番かと思っていたが、どうも運命は因果応報と言う巨大な歯車に動かされているようだ。


 黄色の紳士は、タロウにデス・スメルを売りつけた無責任極まりないマジックショップの店主だった。


 デス・スメル関連事件の諸悪の根源である黄色い紳士の正体も今となっては知る術がない。


 ただ、タロウはとてもすっきりした気分でその公園を後にした。


 もうこの公園で寝泊まりすることもないだろう。


 タロウはにげだした。


 公園の防犯カメラには、住所不定な男と、身元不明の被害者の不審な記録だけが残った。


 生活安全課刑事セイジ・タバタのファイルが数ページ厚くなる夜の出来事だった。


~完~


みんな!衝動買いと風上でのオナラはやめような!タロウさんとの約束だ!

と、言うワケで、タロウさんとハナさんのてんやわんやはひとまず完結です。スピンオフ作品「ハナ先生と一緒」へなんとなく続くような感じですが、ハナ先生の活躍をお待ちください。

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