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断罪者 ~絶望を知った少女が救済する物語~  作者: 冬野 冷
第一章 出会いと復讐
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4 復讐と決意

「うそ、だよね?」


 目に入った光景を疑いたくなる。だって、師匠は強いんだよ? この死の森で、1人で生き延びていけるほどに・・・・・・。なのに、なのに。


「どうして!?」


 私は師匠の下へと走った。走って走って走って。


「師匠!!」


見間違いでは、なかった。キレイでまっすぐだった、腰ほどの長さのあった、あのプラチナブロンドは今は肩にかからないほどしかない。あのきれいな紅の瞳は、閉じられた瞼に隠されている。いたるところから血が流れ、服はボロボロだ。心臓部分を剣で貫かれている。


息を、していなかった。


「治癒魔法『ハイヒール』!!」

すぐに治癒魔法を使った。剣をゆっくりと抜きながら、高位の治癒魔法を、全力で。剣が抜けた。傷は一向に癒えず、大量の血が流れる。白色の私の服が大量の血を吸って、深紅に染まる。布を取り出して傷口にあて、止血を試みる。


 ・・・・・・治らない。治らない治らない治らない治らない!!なんで!?なんで治らない!?

 ・・・・・・ふと、記憶がよぎった。たしか、師匠と一緒に、治癒魔法の鍛錬をしていた時のことだった。





「すごいわ、ユウ。完璧な治癒魔法よ!!」

「ほんと?」

「ええ、さすがはユウね」

「ねぇ、師匠」

「なあに?」

「治癒魔法が効かないことってあるのかな?」

「ん~? よっぽどのことがない限り、治癒魔法が効かないことはないはずよ?・・・・・・ああ、一つだけあったわ」

「一つだけ?」

「対象者が死んだときよ。・・・・・・すべての生物には魂が宿っている。これは、前に話したでしょう?」

「うん。確か、良い人の魂は白くて、悪い人の魂は黒くなるんだよね? 魂の色を見ることができる人がいて、そういう人が悪い人たちを裁くんだっけ?」

「そうよ。・・・・・・白い魂も黒い魂も関係なく、魂が宿っている人は、治癒することができるのよ。ただし、魂が抜けてしまうともう治癒はできないわ」

「つまり、心臓が動いていなくても、魂がまだ宿っていたら、治癒魔法で治せるし、対象者は目を覚ます、ってこと?」

「その通り!! さすがユウね」

「えへへ」






 治癒魔法で、傷が癒えない。つまり、魂が宿っていない。それが意味することは・・・・・・死。


「ぁ・・・・・・う、あっ・・・・・・アアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァアァァァァッッ!! 師匠、起きて!!起きてよ!!」


 いくら訴えても、師匠は起きなかった。頭の中では理解していた。師匠はもう、死んでしまっているんだって。でも、理解したくなかった。この世界に来たばかりの私を拾ってくれて、いろんなことを教えてくれて、家族のように接してくれて・・・・・・たくさんの愛情を与えてくれた、私の、この世界の、たった1人の・・・・・・私の家族。


「わたしを、ひとりにしないでよぉ」

心がいたいと悲鳴を上げる。


 私は師匠の亡骸の前で、一人、泣き叫び続けた。






 塔の中に戻った。塔の中には誰もいないことは、ちゃんと確認したから大丈夫だ。先ほど、師匠の墓を作り終えた。塔の庭の、師匠がお気に入りだった花壇がよく見える場所に。

 荒らされることなく、5日前と全く変わらない部屋を見渡す。ふと、机の上に、封筒が置かれていることに気づいた。封筒には、『ユージェスへ』と師匠の字で書かれていた。開くと、1枚の紙と、小指の爪くらいのサイズの赤い石のついたネックレスが出てきた。


『 ユージェスへ


 この手紙をユウが読むことはないだろうけれど、ただ、書かせてほしい・・・・・・。私はおそらく、この戦いで死んでしまうでしょう。いくら強くても、数の暴力の前では生き残ることはほぼ不可能でしょう。精一杯、生き延びるために努力はしようとは思うのだけれど。

 私が死の森にある、この塔に住み始めたのはちょうど6歳のころでした。私はレブリアス王国の第3王女として生まれてきました。その国は・・・・・・まだ幼い私が見ても、腐っているように見えました。横領は当たり前。人を不当に貶め、自身の犯した罪を人に擦り付けるのも普通。そして、我が国の民は苦しんでいました。いつ反乱がおきてもおかしくはない、そんな国でした。そのような、腐った国に生まれたの運の月だったのでしょう。赤い目瞳は不吉だと、忌み子であるといわれている、その国に生まれ落ちた私は・・・・・・瞳の色が赤だというだけで、差別され、軽蔑され、罵倒される日々を送ってきました。時には、使用人がするような仕事を押し付けられて、朝から晩まで働く日々。ついには死の森へと追いやられました。幸いにも、私には戦う力がありました。ときどき、図書館へとこっそり忍び込んで本を読み漁っていたので知識も。1人で暮らすことも何とかなっていました。それから時が過ぎて、ユウと出会いました。なんとなく、放っておけなかった。一緒に暮らし始めてから、どんどん楽しい思い出が増えていきました。ユウと過ごす時間が何よりの宝物。かわいいかわいい私の妹。血はつながっていないけれど、あなたは私の大切な家族。だから、あなたは・・・・・・必ず私が守る。

 あの旗の紋章は見間違いようがない。我が国、レブリアス王国のものでしょう。時々、近くの村に降りて国のうわさを耳にしていた。私にすべての罪を押し付け、傾国の魔女として私を殺す計画を。いつかはそうなるとわかっていた。国が立ち行かなくなると、民の不満は王族へと向かう。その不満を一時的にでも治めるには、他の人を生贄にするのが一番いい。その生贄として、忌み子である私が選ばれたというわけ。死ぬ覚悟はできていました。いつか、寿命を全うせずに死ぬことはわかっていました。

 でも、ああ、ただ一つ、心残りなことがあります。ユウに、このネックレスを直接首にかけてあげたかった。ユウは、私の瞳の色が好きだといってくれた。不吉だといわれてきた、私の色を!! その瞳の色と同じ宝石を使ったネックレスを、試験のクリアのお祝といして、一人前の証として渡したかった・・・・・・。

 最後に・・・・・・大事な大事な私の妹ユウ、あなたが生きていてくれる、それだけで私は救われます。私に、最高の贈り物をくれて、ありがとう。


クリスティーナより』


「・・・・・・レブリアス王国」

 師匠に刺されていた剣を取り出す。剣には紋章らしきものが。おそらく、この紋章がレブリアス王国なんだ。この国が、師匠を・・・・・・師匠を殺したのか!! 師匠が何をしたんだ。ただ、瞳が赤かっただけで、それだけで、こんな目に合うのか!? 

「許せない・・・・・・許さない!!」

 理不尽すぎる!! 絶対に・・・・・・絶対に復讐してやる!! ・・・・・・そのためには力が必要だ。どんな理不尽でも、ねじ伏せられる力が!!

 そうだ、死の森の奥深くには、人の手にも負えない化け物がいるんだって、師匠が言っていた。その化け物を、一人で相手取ることができたら、弄べるほどに強くなれたら? 国を相手にするんだ、最低限それだけの力は必要だろう。

 手紙をアイテムボックス内にしまい、ネックレスを首にかける。手には1本の剣を持ち、魔物どもをおびき寄せるために、わざと目立つ色の服を身にまとう。そして、わざと血の匂いをつけるために、血をつける。塔に神聖結界を張る。これは、私が解除しない限り、絶対に壊れないし途中で自動的に結界が解けることもない。これは神様のお墨付きの特別な結界だから。


 私は塔から出て行った。


 『死の森』の最奥を目指して。


 復讐を果たすために。


 そのための力を得るために・・・・・・。






必ず果たして見せる。絶対に・・・・・・絶対に殺してやる!!







 



『不老不死な魔王×勇者の異世界転生生活』と『元悪役令嬢な私と賢者様の生活』もよろしくお願いします!

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