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断罪者 ~絶望を知った少女が救済する物語~  作者: 冬野 冷
第一章 出会いと復讐
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3 甘い夢から覚める

主人公が異世界に転送されてから4年たってます。この4年での出来事はまたいずれ、閑話とかで書きたいな~と思っています。

 私が異世界に来てから4年の月日が経った。






「シッ!」

ドスン、と音を立てていったいのドラゴンが倒れる。首は切り落とされ、どくどくと血が流れでる。瞬殺である。かたいうろこも無視してきれいに切断された首をよけて、体を解体する。サクサクと手際よく、部位ごとに分けられていくドラゴン。

「よっしゃ、今日は肉だわ」

どうも、上位種のドラゴンを、一人で、一撃で倒せるようになりました。ユージェスです。アイテムボックスに解体したドラゴンをポンポンと投げ入れて、その場を移動する。私がいるのは『死の森』の少しだけ深いところ。

 ここ、『死の森』には危険な生き物がたくさん跋扈しているため、並の人が入れば、たちまち帰らぬ人となってしまうそうだ。そんな場所の、そこまで深く入っていないとはいえ、危険な生き物の命を一撃で刈り取る私は、今ではたいていのことはできるようになっていた。それもこれも、すべて『師匠』のおかげだ・・・・・・。





 見慣れた『我が家』に足を踏み入れる。

「ただいま~。師匠、()()()を狩ってきたよ!!」

「まあ、本当?」

ふわりときれいなプラチナブロンドをなびかせながらこちらに歩いてくる美女。・・・・・・そう、私を拾ってくれた、クリスティーナお姉さんが私の師匠である!! 師匠は私に、この世界の常識やら、魔法の使い方やら・・・・・・戦い方やらを教えてもらった。今回は、師匠からのテストだった。一人で竜種を狩ってこれたら合格、そうでなかったらもう一度師匠に鍛えなおしてもらうことになっていた。このテストを見事こなしてきた私を、師匠がほめてくれた。アイテムボックスから解体したドラゴンを取り出し並べる。

「うん、竜種で間違いないわ。解体の仕方もあってるし、血抜きもきちんとされている。・・・・・・文句なしで合格よ!!」

「本当!?」

「ええ、おめでとう、ユウ。約束通り、あなたに『死の森』の深くに入る権利をあげます。・・・・・・ただし、無茶はしてはダメよ。」

「わかってるよ? 無茶はしない。そういう約束でしょう?」

「うん、そうね。・・・・・・よし!今日はお祝よ!!」

「肉!?」

「そうよ!!せっかくだから、ユウが刈ってきたドラゴンの肉を使いましょう!!」

「わぁ~!! 師匠、私、手伝うよ!!」

「ありがとう、ユウ。じゃあ、手伝ってもらっ!!」

師匠が西の方角に顔を向ける。警戒しているのだろう。肌がピリピリとする。

「師匠?」

不安になる。この師匠が警戒するだなんて、どんな強敵が現れたのだろうか。

「・・・・・・ユウ、地下から地上にっでるまでの道は覚えているわね?」

「うん。ちゃんと覚えているよ? それがどうしたの?」

怖い顔で、まだ西の方角を見ている師匠に、いやな予感がした。まさか・・・・・・まさか。

「ユウ。アイテムボックスにユウの部屋の物をすべてしまいなさい。できるだけ、早く」

「・・・・・・わかった」

私は、自分の部屋まで走った。

 師匠の言うとおりに自身の部屋の物をすべて収納していく。師匠と出会ったときから4年。はじめは少し殺風景だった私の部屋も、今では師匠がくれたものでごちゃごちゃとしている。服や本はもちろん、箪笥や部屋の照明、ベッドも、アイテムボックスにしまった。急いで師匠の下へと向かう。

「師匠、収納してきたよ」

師匠は、いまだに厳しい顔だ。あたりをひどく警戒しながら、私に近づいてきた。

「これも収納しておきなさい」

そう言って押し出されたのは、いくつかの大きな箱だ。私の肩くらいまである箱には、文字が書かれていることがわかる。

「師匠、これは何?」

「これは、生活必需品よ。あっちの箱には食料が入っているわ。時間停止魔法がかかっているから腐ることはないわ。どの箱に何が入っているかは箱の文字を見てくれたらわかるから」

言われた通り、箱を収納すると、今度は地下に連れていかれた。塔の地下は限られた者しか入れないように魔法で細工がされてある。そのため、この部屋には大切なものがいくつもしまわれている。

「ユウ」

「師匠」

 しゃがみこんで私と目を合わせる。師匠の紅い瞳に私が写る。

「いい? 3日はこの地下にいなさい。3日経っても私が来なければ、あの通路でこの塔を出るの」

まっすぐに私を見る師匠は、何かを決意したような、そんな感じがした。

「師匠」

「何?」

「・・・・・・また、師匠と一緒にご飯を食べられるよね?」

師匠は、目を丸くして・・・・・・笑った。

「ええ、ええ。まだ、ユウが狩ってきたトカゲを調理していないもの。・・・・・・ユウがいるのは少し危険だから、ここに避難してもらうだけよ?」

「うん」

師匠が、私をぎゅっと抱きしめる。私も師匠の背中にそっと腕を回す。

「行ってくるわね、ユウ」

いつものように笑って、外への道へと踏み出す師匠は・・・・・・まるで、近所のコンビニに行ってくるかのような気軽さで。

「いってらっしゃい、師匠」

私はいつものように、師匠を見送った。





 ・・・・・・師匠が出かけて1日目。

師匠のいない食事はさみしかった。何度か野営をしたことがあるけど、その時よりもさみしい。外には出られないので、魔力のコントロールの鍛錬をしていた。これをすれば、魔法をスムーズに打てるし、無駄に魔力を使ったり、そういったことがなくなるんだって、師匠が言っていた。魔力コントロールだけではすぐに飽きてしまうから、錬金術の鍛錬もした。材料は、アイテムボックスの中にたくさんあるから、それを使った。武器も作ることはできるけど・・・・・・今はポーションを作っている。錬金術師のスキルレベルはこの4年で格段に上がっているから、ちょっと難しい薬も、最近では簡単に作ることができるようになったんだ。これも師匠のおかげだ。






 ・・・・・・師匠が出かけて2日目。

昨日と同じように過ごした。けっこうな時間鍛錬していたからかな? 久しぶりにステータスを見ると、スキルレベルが上がっていた。新しいスキルも増えていた。・・・・・・普通、ステータスは自分では見ることができないんだと、師匠が言っていた。師匠も自分のステータスを自分で見ることができるのに、何故?と聞いたことがあった。自分でステータスを見れる人は、高レベルの鑑定眼持ちか、神の加護を持っている人だけだって言ってたっけ。神様はたくさんいて、この世界を創造した主神・ミラ、太陽神・ソルイエ、月神・ルナレス、魔法神・ルドー、武神・ジュレン、戦神・ラミェ、生命神・アンネ、魔神・ウェイン等々。他にもいるけどこの8柱の神様たちが一番有名らしい。この神様たちは世界の理を司る神様で、この神様たちの加護にはいろいろな効果があるんだって。私には、主神・ミラの加護があるんだけど・・・・・・この加護にはスキル取得率上昇や経験値取得率上昇、ごく稀にスキルクラスチェンジなどの効果があるらしい。らしい、というのは私の成長を見て師匠が予想したことだから。主神・ミラの加護を受けたものは今までいなかったらしい。他の神様の加護を受ける人はいたんだとか。私が主神・ミラの加護を受けることができたのは、私とミラの前世が兄妹だったからなんだけど・・・・・・この世界の人達に知られたら、たちまち聖女として祀り上げられるだろうって言っていた。そうならないために、私自身が力を持つ必要があるんだって。理不尽を退けるための、力が。






 ・・・・・・師匠が出かけて3日目。

昨日と同じように鍛錬をした。今日、師匠が帰ってこなかったら、私はこの塔を出なければならない。でも、師匠ならきっと大丈夫だよね? 絶対帰ってくるよね? だって、師匠は・・・・・・。

 





 ・・・・・・師匠が出かけて4日目。

師匠は帰ってこなかった。でも大丈夫。まだ出ていくのは早い。もう少し待って居よう。もう少し、もう少しだけ・・・・・・。





 ・・・・・・師匠が出かけて5日目。

師匠が帰ってこない。なんで? 戦いが長引いているのかな? でも、もう3日も経ってしまった。出ていかないと・・・・・・。





 私は地下室にあるかくし通路を進み、外に出た。あたりはとても静かだった。ここは塔から100メートルほど離れている場所。ここからでも塔はよく見える。私は、千里眼で師匠を探した。透視のスキルも同時に使う。

・・・・・・いない。どこにもいない。私はてっきり、塔のそばにいると思ったんだけれど。もう少し、捜索範囲を広げてみる。途中、魔物が襲ってきたけれど炎で消し炭してしまった。しまった、これでは食べられない。まあ、いい。今は師匠を探すことに専念しないと。






・・・・・・開けた場所があった。

 

そこには、たくさんの人の死体と・・・・・・


「師匠?」


・・・・・・剣で体を貫かれて膝立ちになっている師匠がいた。







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