1 人生に退屈する君へ
新しい作品です。更新が遅いと思いますが、飽きずに読んでくださるとうれしいです。
やっと、面倒なテストも終わった。学生にとって、1番大変な時期はすぎたといってもいいだろう。これからは、またゲーム三昧漫画三昧な日々に戻る・・・・・・。平穏な日常、平和な日々、それがいつまでも続くと退屈だと感じる。娯楽の多い国で助かった。でないと、私は退屈のあまり死んでいたかもしれないからね。ああ、そうだ。テスト期間が終わったらダウンロードしようと思っていたゲームがあったんだった。早速、ダウンロードしてしまおう。家に着くのに、まだ、時間があるからね。
最近、出たばかりのスマフォのアプリゲーム、『アルグレイル』。最近よくあるRPGといえばよいだろうか。自分でアバターをカスタマイズできるというところが気に入ったのだ。課金要素はあるが、課金しなくても楽しく遊ぶことができるらしい。RPGによくある、職業という縛りがないのもいい。レベルの上限もなく、どこまでも上を目指せる。
もうすぐ、だなぁ。楽しみだ。
お
おお
おおおおお!!
ダウンロードが終わった!!いよいよだ。よ~し、さっそく!!
え~と何々?まずはアバターの設定。おおお!!なんと、自分でパーツの位置を決められるのか。ならば、とびっきりの美形にしてやろう。肌は透き通るような白さ、目と髪は漆黒にしよう。本当に純粋な黒色だ。唇は綺麗な紅色。うんうん、これぞ我が理想。っと、いけないいけない、体系の設定もしなくちゃ。体型か~。全体的にすらりとした、モデル体型にしようかな。うん、そうしよう。余計な肉は戦うときに邪魔になるし、あ、ゲームだから関係ないか。まあいいや、次は・・・・・・『プレイヤー名を入力してください』か。名前ねぇ。どうしようかな、う~ん。じゃあ『ユージェス』っと、ん?何この表示。『君は・・・・・・』
『君は、この世界に退屈してはいないかい?』
『平和な日々が続くと、ちょっとした刺激が欲しくなるだろう』
『そんな君に特別サービス!!』
『異世界に行く権利を上げよう』
『君が了承すれば、君は、次の瞬間異世界に飛ばされる』
『もちろん、すぐに死ぬことがないように』
『ちょっとした、贈り物を上げるよ』
『なに、心配はいらない』
『君は、君の好きに生きればいいんだ』
『簡単だろう?』
『さあ、選びたまえ』
『平和で退屈な日常か』
『それとも、刺激的で少し危険な日常か』
『YES or NO』
何かのゲームかな。『YES』を押したらどこかのホームページに飛ぶとか?・・・・・・面白そうだし『YES』っと。さて、どんなゲームかな!?何!この光、まぶしい!!
あまりのまぶしさに、思わず目を閉じてしまう。
「やあ」
誰だ?いったぁ、まだ目が開かないんだけど。声からして、少年かな?まだ小さいくせに無駄に美声だな。
「ああ、ごめんね。目がやられてしまったのか。」
そんな声が聞こえて、目に、何か温かいものを感じたと思ったら、目が開くようになっていた。
「目が、見える!?」
「ふふふ、やっと僕の事を見てくれたね」
「え?」
目の前には、白い髪に、金と赤のオッドアイの少年がいた。無駄に美形な少年だ。この世にこんなきれいな子がいるなんて、なんという目の保養!!そんなことを思いながら見ていると、少年が苦笑いをしながらこちらを見る。
「こんにちは、『篠原 優雨』さん。いや、今は『ユージェス』と呼ぶべきかな?」
「え~と、君は?」
「僕?僕は・・・・・・そうだね、君たちの言うところの、いわゆる、『神様』って奴かな?」
「かみさま・・・・・・で、その神様が何の御用で?」
「順応早いね、さすが僕の選んだ子だ」
「そ、それほどで・・・・・・ん?」
選んだ子?つまり私は・・・・・・自称神様に選ばれたと!!何たる奇跡!!しかし、なぜ私なんだ。私みたいなダメダメな奴より、もっとふさわしい子がいると思うんだけど。
「いや、君よりもふさわしい子なんて、いないよ」
そうかな?って、
「私の心を、読んでるーーーーーー!?」
「うん、正確には、『読めてしまう』、かな。僕は意図して心を読んでいるわけではないんだよ」
「なるほど・・・・・・大変そうですね」
「まあ、慣れてしまえばそこまで大変ではないんだよ」
そっかぁ、心が読めてるんだー。・・・・・・えっ?じゃあ、さっき私が考えていたことも・・・・・・
「うん、知ってるよ」
目をそらされながら肯定される。その表情も、Goodだね!!萌えっ萌えだね!!
「だから、聞こえてるって!!」
「わざとだよ」
顔を真っ赤にして抗議してくる神様。美少年の照れ、頂きました!!
「美少年美少年って・・・・・・」
「だって、美少年じゃないですか」
「・・・・・・青年の姿にもなれるんだけど」
「マジですか、みたいみたい!!」
神様が輝いて、青年の姿になる。とんでもなく美しくてキラキラしくってどこか妖艶さがあってでもいやらしさはなくって神々しさもあっ「うわぁぁぁぁぁヤメテヤメテ!!」
少年らしさがなくなった、落ち着いた美声が腰に、来る。
「ああ、そういえば心が読めるんでしたっけ」
「そうだよ!!忘れないで」
とんでもなく美しい青年姿で顔をほんのり赤くしながら涙目上目遣いで私を見つめる神様。意外と・・・・・・
「純情なんですね」
「言葉にしないでーーーー!!」
「いや、だって結局聞こえてしまうんですから、」
「心の中で思われるのと言葉にされるのじゃあ、全然違うんだよ!!」
「神様って、もっと色欲にまみれてるものじゃないんですか?」
ほら、日本の神様って一夫多妻?じゃん?神様ってこんなに純情なものなの?
「確かにそういう神様もいるけど、僕は本当に愛している子だけって決めてて、その」
つまり、D「わぁぁぁぁぁだめだよ、女の子がそんな言葉使っちゃダメ!!」
「今どき女子は汚れてきてるんです。諦めて?」
我が国は、そういう情報は氾濫してるからね。
「うぅぅぅ、もうっ!!話し戻すよ!?」
「どうぞ」
「君には、僕が作った世界に来てもらいたいんだ。僕の世界はファンタジーの世界?っていうのかな。魔法がある世界なんだ。君がダウンロードした、ゲームの世界と限りなく近い。」
「なるほど、で、特典は何ですか?」
「ほんと、順応早いね、君」
「順応が早いのもそうだけど、未練のあるなしも関係しているのでは?私、元の世界に未練ってないですし、私自身天涯孤独な身の上に友達もいませんし」
そうだ。私は天涯孤独の身。親もいなけりゃ友もなし。幸い学校でいじめれることはなかったけど、全く関わったことのない人から陰口をたたかれ、立っているだけで邪魔だといわれ、人に迷惑をかけて、性格もひねくれて、いつの間にかひとりぼっち、私が生まれてくる意味ってあったのかな・・・・・・。心の奥からどろりとしたものが湧き上がってくる。ああ、死にたい、死にたい、死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい
「『優雨』!!」
「っぁ・・・・・・」
今、私は何を考えてた?
「優雨、落ち着いて。大丈夫だから」
温かい、人の体温だ。ふわりと香る優しい、どこか懐かしい、甘い香りがが私の心を落ち着かせる。こうやって、誰かに抱きしめられたのっていつぶりだろう?
「優雨、落ち着いた?」
そうだ、確か、神様と話をしている途中だった。そうか。・・・・・・うん、とりあえず
「この状態、続行で」
「うん、すぐ離す・・・・・・っえぇ!!」
「続行で」
「いいの!?」
「いいのも何も、私が望んでるんです。神様いい匂いだしイケメンだし。神様に抱きしめられて嫌になる人いないと思います」
「正直者だね」
「ありがとうございます」
「いや、うん・・・・・・とりあえず話を戻すよ?」
ちょっとごめんね?といって、神様が私を抱えなおす。・・・・・・私、神様を床に座らせちゃってるんだけどいいのかなぁ・・・・・・。神様が何も言わないってことはいいってことなんだろうけど・・・・・・うん、気にしないでおこう。
「さて、君にあげる特典はいくつかあるんだけど・・・・・・一つは僕からの加護だよ」
「加護?」
「そう、これがあるかないかでだいぶ変わってくるからね。実際に体感したほうがわかると思うから、説明は省くね。他の特典は、君に選んでもらわなくちゃいけないんだ」
そう言って神様が指を鳴らすと、目の前に半透明の何かが現れる。
「これは君のステータス画面。ここで、君自身を強化してほしいんだ。僕の世界に行ったとき、君はレベル1の状態だと思うんだ。行ってすぐ、君に死なれてしまうと困るから、いろいろなスキルを選んだり、初期ステータスを強化してもらおうと思って。HPは生命力、MPは魔力量のことだよ」
「スキルって、たくさん選んでもいいんですか?」
「うん。ただし、あまりに強化しすぎると若返ってしまうから気を付けて。君の名前と見た目は、さっき、君が設定していたものになるからね?」
・・・・・・とりあえず、選んでいくか。えっと、これとこれとこれと・・・・・・うん、こんな感じで。
「神様、出来ました」
+++++ステータス+++++
レベル:1
名前:ユージェス
歳:6
種族:人族
HP:100
MP:200
状態:———
〇魔法属性
火(Lv1)・水(Lv2)・風(Lv1)・土(Lv1)・光(Lv3)・闇(Lv1)・時(Lv2)・雷(Lv1)
〇職業スキル
暗殺者(Lv3)▽・魔導師(Lv2)▽・錬金術師(Lv1)▽・剣士(Lv1)▽・狩人(Lv1)▽・薬師(Lv1)▽・神官(Lv2)▽
〇ユニークスキル
《鑑定Ⅲ》《アイテムボックスⅢ》《神聖結界Ⅱ》《千里眼Ⅱ》
〇スキル
《身体強化Ⅳ》《危険察知Ⅳ》《直感Ⅱ》《物理攻撃耐性Ⅳ》《魔法攻撃耐性Ⅲ》
〇加護
【主神・ミラの加護】
〇称号
なし
++++++++++
いろいろ強化していたら6歳になってしまっていた・・・・・・。ま、まあ、何とかなるでしょ。ていうか・・・・・・
「【主神・ミラの加護】・・・・・・」
「あ、それは僕がつけた加護だよ」
「ミラ・・・・・・」
名前が女の子っぽい。いいの?神様見た目男だよ?いやまて、普段は、あの、超絶美少年姿なんだよね?それなら
「いける!!」
「なにが!?何がいけるの!?この名前そんなにおかしい?」
「女の子の名前みたいです」
「・・・・・・生まれたばかりの神には性別というものが存在しないんだよ。時を経るにつれて性別が決まっていくんだ。僕の名前は、僕が生まれたときにつけられた名前なんだ。だから女の子っぽい名前なんだよ。」
「へぇー、神様は両生類だったんですね」
「言い方!?」
神様の幼少期は両生類。知らなかった。まぁ、私には関係ないか。とりあえず、サクサク進めていこう。
「よし。神様、次は何をすればいいですか」
「・・・・・・あとは君を転送をするだけだよ」
いよいよ、か。
「僕が創った世界は君にとって危険な世界だと思う。すぐに死なないでね?」
「あああぁぁぁぁ!!異世界!!楽しみ~」
「聞いてないし・・・・・・え~と、じゃあ、転送します!!」
「どうぞ!!」
神様から離れ、床に立つ。神様が指を鳴らすと、足元がキラキラと輝き始めた。徐々に大きくなっていく光に私は飲まれていく。
「神様!!」
「何?」
これだけは言わなくちゃ。伝えなくちゃいけない。
「私を見守ってくれて、助けてくれて」
本当に、本当に
「ありがとう!水落お兄ちゃん!!」
「!?」
にっこりと笑うと、神様が慌てだす。そして私は
「大好きだよ」
異世界に転送された。
<神様視点>
「気づかれていた?」
一人しかいない空間に、僕の声が響いた。
優雨は僕の世界に行った。最後にとんでもない爆弾を残して。なぜ、気づいたんだろうか。僕が水落であると、いつ、気づいたんだ!?
篠原水落は篠原優雨の兄だった。あの、事故が起きるまで。交通事故だった。僕たち家族が全員乗っていた車に信号無視をした車が衝突。前の座席に座っていた父さんや母さんは助けられないことを一瞬で理解した。ならばせめて、まだ5歳の、幼い妹だけは助けようと必死だった。ドアをけ破り妹を抱え車から飛び出した。ただ、少し遅かったようで。車が爆発して、炎上した。その爆風に飛ばされた僕は、頭を強くぶつけてしまい、死亡。優雨だけは、大きなけがもなく助けることができた。それが10歳の時の、水落の最後の記憶だ。死んだ僕が出会ったのは、神だった。その神は、何故か僕を神にしてくれた。僕は、神となって、とりあえず1つ世界を作った。その後、優雨のもとに降りた。
優雨は、僕たち家族がいなくなってしまってから壊れてしまった。自分がいなければこんなことにはならなかったとか思っているらしい。僕が優雨を守って死んだことを気にしていた。いつからか、自分はこの世界に必要のない人間だと、思い込んでいた。そんな優雨が心配だった。まだ生まれたばかりの神である僕は力が弱く、世界に降りてもそんなに影響はなかった。生前とは姿かたちが変わってしまった僕が、水落だったと気づかれることはないし、第一、人の眼には僕は見えない。優雨のそばで優雨を見守りながら、時々自分の作った世界の管理を行う。そんな生活を送っていた。
その日、優雨が死ぬ運命にあると気づいた。死因は事故死。トラックにひかれて死亡。僕は焦った。優雨を死なせたくなかった。だから、その世界の神にお願いして、優雨を僕の世界に転送する許可を得た。転送の許可は下りた。ただし、転送していいのは優雨が死んだ後だった。優雨が轢かれて死に、魂となった。その魂が、僕に渡された。僕は優雨の情報が消えていない、その魂で優雨を再構築した。まだ力の弱い僕にとって、魂の記憶から個人を再構築するのは至難の業だった。そして、魂の記憶を改変させることも。だから、死ぬ寸前の記憶だけを書き換えて、優雨をこの空間に構築したんだ。
なぜ、優雨が僕に気づいたのかわからなかった。僕の名前が前世と同じだったから?それとも、優雨が発作を起こしたときに、名前を呼んだから?
そんな僕の疑問に答えてくれる者は、いない。
僕の作った世界は、優雨にとっては優しいが、その他には厳しい世界だ。ファンタジー世界にしたのは、優雨がそういう世界に行ってみたいといっていたからだし。様々な種族を生み出したのは、優雨がエルフや魔族に会ってみたいといっていたから。どこまでも、優雨を中心として創られた世界。危険なのは本当だが、優雨にとっては楽しく過ごせるように、僕が創った世界だ。
本当なら、優雨を僕のそばに置いておきたかった。しかしそれは、優雨の幸せにはならないし、優雨の核がそこまで育っていなかった。僕が創った世界では、僕は優雨のそばにいられない。優雨が幸せであることが、僕にとっての幸せ。
願わくば、優雨が笑って過ごせますように。
僕は誰もいないこの空間で、そっと祈った。