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断罪者 ~絶望を知った少女が救済する物語~  作者: 冬野 冷
第一章 出会いと復讐
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12 復讐を成すとき(4)

お久しぶりです!! すごくシリアスが続いているので、面白くないと感じる人が多いとは思いますが・・・・・・それでも読んでくださっている皆さんには感謝しかありません!! まだまだ続きますので、出来るだけ長く読み続けていただけると嬉しいです。よろしくお願いします!

 恨んでいる。ああそうとも、恨んでいるよ。師匠を殺したこの国を・・・・・・。恨んでいるから壊すんだ。


 少女の問いかけが今も私の心にはびこっている。

「あなたは・・・・・・この国を恨んでいますか?」


 そうだよ、恨んでいる。恨んでいる・・・・・・はず、なんだ。





 私は1階をある程度周り終わり、階段のあるホールの所でうろうろしていた。理由? おいていってしまったブレイブたちを待っているんだよ。空き時間に凍らせたやつらを回収したんだけど・・・・・・遅くない?なんでこんなに遅いの? 同じ階にいるのはわかるんだけど、全然こっちに近づいてこない。なんか、遅くない? ・・・・・・仕方ない、迎えに行ってやろう。

 私がブレイブたちがいるところへ行くと、ブレイブたちが大量の氷像を周りにおいて、ばてていた。

「どしたの? 夏バテ?」

「「「「「違う!!」」」」」

皆が一斉に答えた。

「これ、ユージェスの仕業だろ?」

「そうだけど・・・・・・」

「アスは、この城にいるやつらを全員謁見の間へご案内してくださいって言っていたんだぞ・・・・・・たとえ氷像にされていたとしても連れて行かなくちゃ、アスが怒る」

「ああ、なるほど。それでこんなにたくさんの氷像を・・・・・・なんでアイテムボックスに入れなかったの?」

「・・・・・・俺たち、そんな便利スキル持ってねえよ」

「はぁ、仕方ない。私のアイテムボックスに入れてやろう」

 私が手を一振りすると、氷像たちはアイテムボックス内に収納された。

「姫様!! そんなことしたら、かろうじて生きている氷像の人たちが死んじゃうよ!!」

「え? うわぁぁぁ!! ユージェス、早く出せ!!」

クリューが慌てたようにそういうと、ブレイブが私の肩をつかみ揺らしながら、鬼気迫る表情でそう言った。

「だ、ダイジョウブダヨ、死なないよ。だからちょっと放そうか、脳が、揺れる」

「ご、ごめん!!」

 ブレイブは、私の肩から手を放し、平謝りしてきた。

「なあ、姫さん。死なないってどういうことだ? オレが知っているアイテムボックスと、違うんだが・・・・・・?」

「私のアイテムボックスは、限界突破してからちょっと進化したんだよ・・・・・・。生き物も入れられるようになったし、アイテムボックス内は時間が進まないから生ものも腐らないし・・・・・・」

「何だよそれ・・・・・・」

 反則じゃねえか、とつぶやいてバルトは手で顔を覆った。

「と、とにかく、これで問題ないよね? さあ、謁見の間に行こう。早くいかないとアステリオに怒られてしまうよ?」

「もしかして」

「もしかしなくても、アステリオたちはもう、謁見の間にいるよ?」

「マジで!? よし、急げみんな!! 走れ、アスを怒らせたらヤバイ!!」

「「「「オォーーーー!!」」」」

 みな、鬼気迫るような顔で走っていった。・・・・・・アステリオって、怒ったらそんなにヤバいの? 

 私はそんなことを考えながら、皆の後を追うのだった。









 謁見の間に近づくにつれ、何か、黒いものが湧き上がってくる。何だ、これは? 

「あ~、着いた。アス、怒ってるかなぁ?」

「怒ってるんじゃないですか? リーダー。な、姫さんも、そう思うだろ?」

 皆の声が、遠い。

「あれ、姫様どうしたの?」

「具合、悪い?」

「ん? おーい、姫ちゃん、聞いてる?」

 何かが、おかしい・・・・・・。

「開けて」

「え?」

「扉を・・・・・・開けなさい」

「っ!?」

 おかしい、何かが・・・・・・そう、何かがおかしいんだ。いつもなら、もっと冷静に考えることができるはずなのに・・・・・・思考に霞がかかったみたいだ。






 ブレイブたちの手によって開かれた扉をくぐった謁見の間には、既にアステリオたちがいた。貴族や文官、果ては下働きのものまで集められていた。玉座には・・・・・ブクブクと太った豚がいた。

「おや、遅かったですね。ブレイブ」

「アス・・・・・・」

「どうしたんですか、ブレイブ? ユージェスさんがついていながら、計算よりも遅かったですが・・・・・・ユージェス?どうしたんですか?」

 

 遠い。


「なんで・・・・・・何で殺してないの?」


 遠い。


「何であいつは生きてるの?」


 トオイ。


「ユージェス、どうしたんですか!? ブレイブ、なんでこんな!!」

「わかんねぇよ、そんなの! 気づいたらこうなってて!!」


 貴族たちもあの豚も、見たところここに集められただけのようで、身動きも自由にできるようだ。私は、豚のほうへ一歩一歩、近づいていった。

「ひっ!! く、くるな!! そこで止まれ!! そうだ、宰相、あれを持ってこい。あれなら、あれならこいつらを殺せるはず!!」

「はい」

 その言葉を聞いて、ふと、立ち止まった。私を・・・・・・殺せる? ああ、そういえば・・・・・・この城には魔眼持ちがいるんだっけ? でも、それは人だったはず。仮にも王子だったはず。物のように扱われることはなかったはず・・・・・・。

「早くしなさい!! この愚図が!!」

 ジャラリ、と鎖の音がした。宰相の手には鎖が握られていて、その先には・・・・・・少年がいた。

「陛下! 連れてきましたよ!!」

「よし、目隠しを外せ! そして、いつも通りに壊すのだ!! ベネディス!!」

 あの少年は、ベネディスっていうのか。少年は・・・・・・ボロボロだった。手と足には枷がはめられ、首輪には鎖がついている。口には猿轡がされていて、目には目隠しがつけられていた。長くぼさぼさの、くすんだ黒に近い灰の髪は、所々刻まれていて長さがばらばらだった。服は、まるで囚人が着る物のようにボロボロで、白い肌は所々黒く汚れている。

 宰相の手によって、目隠しが外された。少年は閉じられていた瞳を開けた。


 ドクリと、心臓が脈打つ音が聞こえた。


 その瞳は、アクアマリンのような、澄んだ水色の瞳だった。


 その瞳の美しさに、心がひかれた。


 少年の瞳がキラキラと光り、朝焼けのような美しい赤色になる。猿轡をされている口がわずかに動く。


 少年の瞳から、雫がこぼれた。


「 ニ ゲ テ 」

 かすれた音が耳に届く。


「見つけた」


 私は、魔眼を使った。瞳が赤く染まっていくのを感じながら、能力の封印を解いた。そして・・・・・・

 バリバリバリーーーーーー、と轟音が響き渡った。バチバチと火花が飛んだ。私と少年の魔眼の能力がぶつかり合う。

「な!! なぜ、あれの能力が効いていない!?」

「わ、わかりません!! あの女が打ち消しているとしか・・・・・・」

外野が何かわめいているが、気にせず前へ進む。私は更に魔眼の力を強めた。少年の力が押されていく。

 少年との距離がゼロになった。私は膝をつき、少年と目を合わせた。力が反発しあい、押し返される。それでも私たちは、互いの瞳に見入ってしまっていた。

「ねえ、君の願いはなんだい?」

「っ?」

 彼の足に手を伸ばすと、ガン、と音を足枷が外れた。彼の手首に手を伸ばすと、ゴトン、と音を立てて手枷が外れた。彼の首に手を伸ばすと、バキン、と音を立てて首輪が壊れた。彼の頬に手を伸ばすと、パンッ、と音を立てて猿轡がはじけた。瞳の色が元に戻った。彼は、アクアマリンの瞳を大きく見開いて私を見た。

「ぼ、くは・・・・・・」

 この城に入ってから、私は情緒不安定になり、感情の起伏が激しくなっていた。さっきなんて、思考が鈍くなり、自身の黒い感情に飲み込まれそうになっていた。その理由が・・・・・・目の前の少年だった。少年の魔眼は、正常に起動していないうえに壊れていた。彼の強い願いが魔眼を通して、この城全体に広がっていたんだ。しかし、無意識に発動していたものなうえ、目隠しで魔眼を疑似封印されていたので、城内の人々に害が及ぶことはなかった。そんな城に、同じ魔眼持ちである私がやってきた。私の魔眼が彼の魔眼の影響を受け、私自身に害を及ぼしていた、というわけだ。

「君の願いは?」

「ぼくの、ねがいは・・・・・・・」

 彼はかすれた声で言葉を紡いだ。


「たすけて・・・・・・このくにを、こわして。あいつを・・・・・・」


「ころして、ほしい」


 ああ、やはりと私は納得した。彼は、私と同じようにこの国を恨んでいたんだ。しかし、そうするだけの力がなかった。だから、ずっと願っていたんだ。いつか、この腐った国を、誰かが壊してくれることを。自分を虐げたものを、誰かが殺してくれることを・・・・・・。


 私は、笑った。


「ああ、いいとも・・・・・・その願い、この私が引き受けた」 






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