11 復讐を成すとき(3)
目の前にはレブリアス城。ここに・・・・・・ここにいるんだね。さて、ここまでは魔法で姿を消してきたんだけど・・・・・・わざわざ、姿を消したままこっそり侵入して騒ぎを起こすなんて、そんなことをしても面白くない。だから・・・・・・
「やあやあ、兵隊さん。お仕事ご苦労!!」
私は展開していたスキルをすべて解除した。そして、ゆっくりと、堂々と、顔をさらしながら歩く。視線が私に集まる。
「そして・・・・・・お疲れ様」
魔力の放出の影響で、ふわりと髪が浮き上がる。おそらく、今私の瞳は魔眼を発動した影響で赤くなっているだろう・・・・・。ふむふむ、賄賂にちょっとの横領、罪の押し付けに隠蔽、魂の色は黒に近いグレー、か・・・・・・。魔眼で読み取れた兵士の情報に、少々思うところがあるけれど・・・・・・まあ、こんなのは序の口か。もっとヤバいことをやらかしている奴だっているだろうしね。私は無数の氷の矢を作って、無差別にうちはなった。ああ、もちろん民家には打っていないよ。あくまでも、城に向かって無差別に放っただけだ。
「ウワァァァーーーーーー!!」
門の前にたっていた兵士たちは、あっという間に氷付けになった。あ、やっべ。勢いあまって門の扉まで凍らせちゃったわ。仕方がない・・・・・・破壊しよう。拳に魔力を集めながら走り、門の中心に届くように跳躍して・・・・・・一気に殴る!!
「ちょ、ユージェス!!」
ブレイブの声が聞こえた気がするけど気にしない。ドゴゴゴゴーーー、と音を立てて門がへしゃげた。ちっ、一発じゃ壊れないか。私は殴った勢いそのままに、今度は回し蹴りをはなった。すると、バキッ、と音を立てながら扉が外れて倒れた。
「アハハ!!ハハハハ!! このまま一気に突っ込んでやるわー!!」
「え!? まって、俺たちを置いていくなよ。ユージェスーーーーーー!!」
ブレイブの叫び声を聞きながら、私は一人で城へと侵入したのだった。
+
「ウフッ、アハハ、アハハハハハ!! あいつはグレー、こいつは黒、こいつも黒・・・・・・黒黒黒黒、黒ばっか!! すごい!!こんなに黒いやつらばっかりだなんて!! さすがレブリアス王国だ!!」
私は走りながら、城内の人々を次々と氷漬けにしていた。床とか天井も時々凍ったりしちゃっているけど、ダイジョウブだよね? みんなキャーキャー言いながら逃げ回っている。そんな姿を見て、私は・・・・・・すごくイラついた。だって、この国の平民たちはもっとつらい目にあっていたんだよ?師匠だってそう。なのに・・・・・・なのにどうしてこいつらは、こんなに逃げ回っているんだ? イライラする。まあ、いっか。どうせ、こいつらは今後の処分次第では断頭台に立たされることになるんだしね。
そんなことを考えていると、一人の少女を見つけた。少女は14歳くらい、輝くような金髪に紫の瞳のなかなかの美少女で、シンプルな紫色のドレスを身にまとっていた。その子も氷漬けにしようかと思ったんだけど、やめた。だってこの子、真っ白な魂だったんだもん。この城の中で初めて見つけた、真っ白な魂の持ち主。驚いてしまって、足を止めてしまう。見た感じ、貴族みたいだけど・・・・・・ふ~む。
「もし、麗しの方。よろしければ、わたくしとお話しませんか?」
んん? 麗しの方? 誰のことだと思って振り返るって、あれ? い、いねぇーーーーーー!! ブレイブたちいねえし!! まって、もしかして、私、置いて居ちゃった!? ・・・・・・まあ、いっか。何とかなるっしょ。ブレイブたち、強いし。と、なると、麗しの君っていうのは私のことか・・・・・・。
「ごめんね、あいにく急ぎの用事があってね? お話する時間はないんだよ?」
「それは、革命を成功させるためですか?」
少女のその言葉に、私はピクリと反応してしまった。
「やはり、そうなのですね・・・・・・」
少女は悲しそうに目を伏せると、キッと、私をにらむように見た。
「革命をとめてはもらえませんか?」
「何故?」
「この革命の主戦力はあなたでしょう。そのあなたが他の革命軍の方を止めてもらえば「それはできない」・・・・・・」
「それはできないんだよ、少女。私はね・・・・・・革命軍を勝たせるために、そして復讐のためにここにいるのだよ」
「ふく、しゅう・・・・・・」
少女は、私の言葉に何か思うことがあったのか、うつむいてしまった。
「まあ、復讐といっても、個人的なものなのだがね。・・・・・・少女、君は凍らせない。君は真白だからね。この国にいながらも真白でいられたのだから、君はきっと、本質がとてもいい子なのだよ。いいか、少女。私は君を凍らせない。自分の足で歩いて、この国の行く末を見届けるんだ。君のようないい子には少々酷なことだろうが・・・・・・これは君のためになる。場所は謁見の間だ。謁見の間はわかるかい?」
そう聞くと、少女はこくりと小さくうなずいた。
「お話はこれでおしまいだ。私は行くよ、彼らを誰一人欠けさせることなく革命すると、私は彼と約束したからね」
私がもう一度走り出そうとしたとき、少女が待ってください!、と声をかけてきた。少女は私のことを見ていた。
「あなたは・・・・・・この国を恨んでいますか?」
少女の瞳が私を射抜いた。
私は嗤った。
「ああ、恨んでいるとも・・・・・・この国を滅ぼしたいと思うほどに」
+
(少女視点)
今日は何かが違う。そう思った私は、城へ登城しました。普段なら自分から登城することなんてないのですが、いやな予感がしたのです。
この国は腐っています。王族も、貴族も。腐っていない王侯貴族なんてほんの一握りしかいないのです。誰もが自分のことばかり。平民の方たちのことを考えてもいないのです。
その付けが回ってきたのでしょう。いえ、この国の平民たちのことを思えばやっと、というべきなのではないでしょうか。・・・・・・革命が起こったのです。
革命家が生まれたという情報を我が家は入手していました。対策なんてしません。革命家が生まれたということは、この国を亡ぼすことを神が決めたということなのです。それでも、この国が正しくなれば、革命家がいなくなることは今までの歴史からわかってたのです。やれることはやりました。我が家は公爵家。権力も十分にある。お兄様たちも、お父様もお母様も、この国を正しい方向へと導こうとしました。ですが、この国が正されることはなく、腐敗していくばかりでした。
そして・・・・・・ついに今日、革命が起こりました。
突然のことでした。私が、お父様の働いている部署へ足を運んでいるときに、何かがへしゃげるような大きな金属音が城中に響き渡ったのです。私の周りには誰もおりませんでしたが、遠くから人々の叫び声が聞こえてきたことから、皆がパニックに陥ったことがわかりました。
間に合わなかった・・・・・・。私の胸にはそんな気持ちが広がりました。
しばらく呆然としていると、どこかから女性の笑い声が聞こえてきました。
「ウフッ、アハハ、アハハハハハ!! あいつはグレー、こいつは黒、こいつも黒・・・・・・黒黒黒黒、黒ばっか!! すごい!!こんなに黒いやつらばっかりだなんて!! さすがレブリアス王国だ!!」
その声は、まるで天上の調べのような美しい声でした。黒?グレー? どういうことなのでしょう? しばらくすると、その声の持ち主であろう方が回廊を走ってまいりました。その方は・・・・・・本当に生き物なのでしょうか。精巧に作られた人形か天使だといわれたほうが納得するような、そんな美貌の持ち主でした。赤を基調とした衣をまとい、黒く長い艶やかな髪をそのまま背に流し、白く透き通るような肌は美しい。長いまつ毛に縁どられたその瞳は、暗く紅く光っていました。そして・・・・・・その方はとても恐ろしい、きれいな笑顔を浮かべていました。
その方は私に目を向けて、獰猛な笑みを浮かべたかと思ったら・・・・・・突然立ち止まり、キョトンとした顔で小首をかしげ、じっと私を見てきたのです。その方は、私と同じ年の方に見えました。
私は思わず、その方に話しかけてしまいました。
「もし、麗しの方。よろしければ、わたくしとお話しませんか?」
そう切り出すと、その方は後ろを振り返り、納得したかのように一つ頷き・・・・・・
「ごめんね、あいにく急ぎの用事があってね? お話する時間はないんだよ?」
「それは、革命を成功させるためですか?」
私の言葉に、その方はピクリと反応しました。
「やはり、そうなのですね・・・・・・」
どうやら彼女は革命軍のメンバーのようです。彼女の強さからして、おそらく、革命軍では相当強い方なのでしょう。それならば・・・・・・
「革命をとめてはもらえませんか?」
私は彼女にお願いしました。
「何故?」
「この革命の主戦力はあなたでしょう。そのあなたが他の革命軍の方を止めてもらえば「それはできない」・・・・・・」
「それはできないんだよ、少女。私はね・・・・・・革命軍を勝たせるために、そして復讐のためにここにいるのだよ」
「ふく、しゅう・・・・・・」
彼女は正しく革命軍の方でした。そして、復讐者でもあったのです。彼女の瞳を見ればわかります。それが本心からの言葉であるのだと。そして、この国が本当にどうしようもないくらいにひどいのだと。
「まあ、復讐といっても、個人的なものなのだがね。・・・・・・少女、君は凍らせない。君は真白だからね。この国にいながらも真白でいられたのだから、君はきっと、本質がとてもいい子なのだよ。いいか、少女。私は君を凍らせない。自分の足で歩いて、この国の行く末を見届けるんだ。君のようないい子には少々酷なことだろうが・・・・・・これは君のためになる。場所は謁見の間だ。謁見の間はわかるかい?」
真白とは何でしょう? 私の本質? 国の行く末? あなたの復讐って何? 聞きたいことはたくさんありました。
「お話はこれでおしまいだ。私は行くよ、彼らを誰一人欠けさせることなく革命すると、私は彼と約束したからね」
けれど・・・・・・
「待ってください!」
彼女は私の言葉に足を止めてくださいました。怖い・・・・・・怖い。けれど、ここで聞かなければ、きっと後悔してしまうと思うのです。
「あなたは・・・・・・この国を恨んでいますか?」
一拍。彼女はゆるりと振り返りました。その瞳は先ほどよりもまがまがしく、紅く光り、その麗しい顔には、あざけるような笑みが浮かべてありました。
「ああ、恨んでいるとも・・・・・・この国を滅ぼしたいと思うほどに」
気が付けば彼女は私の前から姿を消していました。
お久しぶりです。読んでくださっている皆さん、ありがとうございます!! 活動報告にイラストを乗せていますので、見てみてください!!