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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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憤怒的鬼

「いやいや、そこまでしなくてもよい。窮屈な思いをさせるだろうが、ここを我が家と思い、ゆっくりしなさい」

 太定は椅子から立ち、跪く子どもたちの手を取って立たせた。

(さすが、音に聞こえし名宰相)

 李太定の名は辰人も知る。公孫真はその名が遠くにまで及ぶ理由を見た気がして。この方なら公主を預けられると、安堵する。

「それでは、わしは王宮へ向かい、王様と話をしてくる。これは国家の一大事になりかねぬゆえにな。秘密の話になるが」

「それなら、私も同行させてください」

 劉開華も椅子から立ち、礼をしながら太定に動向を願い出るが。

「今日はゆっくりなさり、明日改めて王宮に来られればよかろう。我が君、雄王ウンワンは寛大なお方。……そうそう、光燕世子からは、距離を置くよう取り計らいもしますゆえ」

 それを聞いて麗は頭を下げた。太定も麗の苦労を知らぬでない。後でゆっくり話を聞くつもりだったが、世子に迫られていたことを悩んでいたことは確信を持てた。

 おかげで朱家は上を下への大騒ぎであった。今も両親は心労を抱え、娘の帰還を祈って臣下の任を果たしているという苦しい状況であった。

「瞬志よ、朱家にゆき、お嬢さまが帰られたことを伝えにゆきなさい。もちろん秘密の話としてな」

「はい。では」

 瞬志は立ち上がり、一礼をすると大広間を出てゆく。その背中を見て、麗は大粒の涙をこぼす。

 それから、源龍に目を向けた。目を向けられ、源龍も思わず睨み返す。しかし太定は微笑む。

「そのような怖い顔をしなくてもよい。そなたもそれなりの武芸者と見た、武具は取り上げぬゆえ、公主や仲間たちを守ってあげなさい」

 そう言われ、思わず、

「本気か、じいさん」

 と聞き返してしまった。もし瞬志がいれば、

「じいさんとはなんだ!」

 と烈火のごとく怒り、源龍とつかみ合いの喧嘩もしたかもしれなかった。が、太定はうんうんと頷く。

「本気じゃよ。貴志もそれなりに武芸の心得はあるが、この通りどこか心もとない」

 と、縮こまりっぱなしの我が子に目を向け苦笑する。

「父上、それはひどい」

 貴志もそこまで言われて、咄嗟に抗議する。しかし縮こまっていたのは確かなので、何も言えない。香澄はそれを見て微笑む。

「ともあれ、よろしく頼む。やはり身近な者が一番の頼りになってやらんとな」

「お、おう……」

 高貴の者が頭を下げて頼みごとを言い。源龍はかえって戸惑い、返事も思わずうわずった。それも微笑ましく香澄は眺める。

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