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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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憤怒的鬼

 あれこれ考えて、諸葛湘は自分が落ち着かないのに気付いて内心苦笑する。

(そういえば、あれからどのくらい経った?)

 源龍は、船で宮殿を逃れ、天頭山の天湖に着水し、嵐に運ばれ海に降り。さらに亀甲船に拿捕されて、この邸宅に来るまでを思い出した。

 まず空飛ぶ船で一晩を過ごし、翌日天湖着水。そこから嵐に運ばれ海に降りるまでに一晩。また落ち着いた海で拿捕されて、港の詰め所で一晩過ごして、ここに至る。

(三日、まだ三日しか経っていないのか!)

 色々あって随分と時を経たような気になるが、まだ三日である。

 たとえ宮中から人を暁星に遣っても、まだ着かぬ。

「しかし、公主さまのお話のはじめより、今に至るまでまだ三日とは。皇帝陛下が使者を派遣したとて、まだお着きにならぬであろう」

 と、太定が言うのを聞いて。源龍はだるい思いでぼーっとして、人の話を聞いていなかったのに気付き、苦笑する。

「しばしここで過ごされてはどうでしょうか。騒ぎを起こさぬために外出はお控えいただかねばなりませぬが」

「はい。宰相殿に全てを委ねます」

 覚悟を決めた劉開華は、太定の言うことに従うと言う。 

 一行はしばらく李太定の邸宅で居候をすることになった。その一方で諸葛湘が人を遣って宮中の様子を探り。また、辰からの使者も来るかもしれないので、いつ来てもよいよう構えておく。

 ということが話し合われた。

「しかし、肌の白い、金髪碧眼の子と、褐色の肌の子もおるとは。そなたら、いずこから来たのかね?」

 太定は子どもとリオンに目を向け、優しげに語り掛ける。その目には、慈愛があふれていた。

「え、えーと。それが、色々あって、記憶がないんです。この人たちに助けてもらって、一緒にいるんです」

 子どもは笑って誤魔化す。世界樹の事は秘密だ。ただでさえおかしいと思われているのに、そこに世界樹の話まですればもっとややこしいことになる。リオンも同じように頷いて、そうですと言う。

「そうか。それはかわいそうに。しかし、助けてもらえてよかったのう」

 好々爺そのものの笑顔で子どもとリオンに頷く。

(この子らは虐待に遭った様子もない。ならば、この者らは信用してもよいということか?)

 やはり源龍らその他の者たちがいかなる者か気掛かりであり、用心の心はぬぐえない。が、子どもの様子を見て、劉開華の顔に免じて、居候させてやることにした。何かの秘密があるかもしれないが。

 こちらが害意を示さねば、向こうも何もしないであろう。と、不思議な確信を覚える。特に、静かに控える香澄という少女を見ると。

「はい。おじいさま、ありがとうございます」

 子どもとリオンは椅子から降りて、うやうやしく跪いた。

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