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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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憤怒的鬼

 源龍といえば、香澄が手首を抑えて、迂闊な真似はせぬよう抑えている。羅彩女は、香澄に他意がないとはいえ面白くなさそうだが、源龍を抑えられるのが香澄しかいないので仕方なく託すしかない。

 子どもたちは黙って成り行きを見守っている。麗は一行と一緒にいさせられて、これも黙って成り行きを見守っている。

 公孫真も諸葛湘を見知っていて、包拳礼をして、

「お久しぶりでござるな」

 と言えば、相手は公主同様にかしこまる。

「ほんとうに、辰の公主なのですね」

 瞬志が諸葛湘の様子を見て、劉開華が公主なのを認めたが。かといって、不必要にかしこまることもしない。

「宰相、どうかお話をお聞きください」

「ううむ。ここでは何ですので。中へ……」

 こうして一行は中へ導き入れられる。

(いったい何がどうなっているのか。まるで物の怪に化かされているようじゃ)

 太定は驚きと戸惑いを禁じ得ない。留学をしていたはずの五男坊がなぜか帰ってきて、行方不明になった朱家の令嬢、どころか辰の公主や得体のしれない者たちまで一緒。

「この者ら、意味不明なことを口走るのです」

 瞬志は太定に耳打ちし、ますます不安になる。しかしそこは一国の重責を担う宰相をつとめる男である。つとめて冷静に振る舞う。

 諸葛湘も太定と同じような驚きと戸惑いを覚えていた。彼もまた大国を担う大使である、徐々に落ち着きを取り戻し。劉開華と公孫真の後ろをしとやかについてゆく。

 貴志は懐かしの我が家ではあるが、懐かしさや感傷など感じるどころではない。逆に麗はほっとしている様子である。

 他の者たちは、なるべくきょろきょろしないようにしているが。思わず気になるものに目が行ってしまう。

「暁星の服は辰とは違うんだな」

 特に女性の、上腹部から足首まで垂れるチマ(裳)は印象的で象徴的だった。

「いて」

 突然羅彩女に尻をつねられ、思わず声を出してしまう。

「きょろきょろするんじゃないよ」

「なんだよ、別に他意はねえよ」

 源龍は荒っぽいが禁欲的な男だ、辰との違いを感じる以上のことはない。それでも羅彩女にとっては落ち着かない。

(このふたりの微妙な距離感は、どこから来るんだろう?)

 貴志はふとふとそんなことを考えた。

「ひとまずは、ここでおくつろぎください」

 大広間に通されて。そこには用意された広い円卓と、周囲には椅子が並べられて。一同はそれに座った。

 大広間は窓も広く取られ、両開きの窓の扉が開け放たれて。陽光と秋の爽やかな空気を中に取り込み。和む雰囲気づくりがなされていた。

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