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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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憤怒的鬼

 さて、所は変わる。

 辰の宮中は人食い鳳凰の出現、宮殿に飾っていた船が飛び去り、公主が失踪するなど、混乱の極みにあったが。時が経つにつれて落ち着きを取り戻しつつあった。

 気落ちする皇帝と皇后をなだめ、取り乱す者を容赦なく罰し、鄭拓は宰相としての辣腕を振るった。

 特に緘口令を布くことに力を入れ、宮殿で起こった出来事のことを話す者は狂言をもって混乱を招く者として死刑であるとし。実際に迂闊に口にした者が容赦なく処刑された。

 そういう方法をもってしてのやり方が強引なのは鄭拓もわかっているが、力を示すのが何よりも合理的なのはその通りだったし、それを躊躇なく実行できるのが鄭拓の鄭拓たるゆえんであり。

 皇帝と皇后の信頼も厚かった。

 無論公主の失踪も秘密にされ、劉開華は病床にあるとされ。鄭拓の選んだ密使を帯びた者たちが捜索に当たった。

 鄭拓の働きあって、落ち着きを取り戻した皇帝と皇后は、信頼する宰相に相談を持ち掛けた。

 私的な雑談を装い、皇帝の私室に招き入れ、余人を交えず。

「それは本気で仰られているのですか?」

 鄭拓はたいそう驚いたそぶりを見せた。

(ついに一線を越えたか)

 たいていのことに驚かぬ鄭拓だったが、これには本当に驚いた。なにせ、皇帝と皇后が元皇太子の劉賢を暗殺したいと言い出したのである。

(まあ、あの劉賢さまは気が狂ってしまった。とても皇位を継げる有様ではなかったしな)

 弟の鄭弓に命じて監禁して見張らせているが、さていつまでああするのかと気にはなっていた。が、ついに一線を越えようという時が来たようだ。

 皇太子の廃嫡と、劉開華が変わって皇位に着く事はすでに決まっており。また、然るべき男子を迎えさせて。子をなせば、それがまた皇位を継ぐのである。

 が、劉賢にはまだ伝えていない。伝える必要性も感じなかった。そしてそれを娘は理解してくれると、康宗と靖皇后は本気で考えていた。

「どうだ、引き受けてくれるか?」

「わかりました」

「さすが、私たちの鄭拓です。しかと頼みましたよ」

 即返事をした宰相に、康宗と靖皇后は喜色を浮かべた。それを包拳礼をしながら、

(もはや人の心を捨て去ったか。重畳、重畳)

 心の中でほくそ笑んだ。

 皇帝の私室を離れ、すぐに自分の邸宅に戻り。弟を呼び寄せ、事の次第を告げれば。

「兄者、それは本気で言っておるのか」

 と、驚きを見せた。あんなのでも皇族である。後々災いがないか不安は隠せないものだ。

「皇帝皇后両陛下より直々のご命令。罪を得ぬゆえ、安心いたせ」

「……わかった、やろう。しかし」

「しかし、なんだ」

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