表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
80/539

嵐将携帯

 もちろん貴志は一見お人好しそうでも、武術の素質あることは兄だから知っている。

「兄さん、これには訳が」

 と貴志が口を開こうとしたら。

「おい!」

 と源龍は威嚇をはじめ、公孫真と劉開華に香澄がなだめる。

 それに弾かれるように、瞬志は右手を素早く伸ばし、貴志の胸倉をつかむ。

「これはどういうことだ!」

 兄に胸倉をつかまれ、貴志は石のように固まる。もちろんその会話は暁星の言葉だ。

(貴志さんが簡単につかまるなんて!)

 劉開華は息を呑んだ。重い鎧をまといながら、貴志が逃げられないほどの素早い動きを見せ、胸倉をつかんだのである。そう、わざと貴志が捕まったのではない、純粋に相手の動きに負けてつかまったのだ。

(下手な抵抗をしても、全滅するだけだ)

 公孫真も息を呑む。

 船の上には十名ほど乗り込んでいるが、亀甲船にはまだ数十名と控えているようだった。

 甲羅から出て、こちらに向けて鋭い眼光を放っている。

「兄さん、僕の話を聞いてください」

「瞬志オッパ、お願い、助けて。これには訳があるの」

 麗は瞬志にすがりつき、おいおいと泣き始めた。

 それを見て何も思わぬではないが、

「言われるまではない、話は聞いてやる。しかし、いかなる訳があろうとお前たちが不審者なのは変わらぬぞ」

 麗にも鋭いまなざしを向ける。

(あのお優しい瞬志オッパが、こんな怖い顔をされるなんて)

 麗は衝撃のあまり腰を抜かしてよろけ、たおれそうになるが。香澄が素早く駆け寄り、

「しっかりして」

 と支えて、静かに座らせる。

「――!!」

 瞬志の背筋に電撃が走る。

(気配がわからなかった)

 誰がどのような動きを見せようと、それを見切る自信はあったのだが。なぜかこの少女の動きは察せられず。気が付けば麗のそばだった。

(不本意だが、下手に刺激をするのもまずいか)

 もし戦いになっても数の力で勝てるかもしれないが、痛手も大きいだろう。下手に血気に逸り、王より預かった兵士を犬死にさせるのは忍びなかった。

「おい、こっちを見ろ!」

 打龍鞭を携え、今にも飛びかからんがばかりに源龍は吠えた。

「仲間にかすり傷ひとつでもつけてみやがれ、お前らを血祭にしてやるぜ!」

(なんという楽しそうな顔をしているのか)

 吠える源龍と視線をかわせば、両者の間に火花が散るようであった。

 一見して玄人の戦士であることを察した。ちなみに瞬志も高貴の家の出であり、教養として辰の言葉を学んでいるから、源龍が何を言っているのかわかる。

(下品な言葉遣いだ)

 そう軽蔑しながらも、この男は、戦いを無上の喜びとして生きているようだ。らんらんと輝く目がそれを物語っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ