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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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嵐将携帯

「なんだ、どうしたってんだ?」

「雨で湖の水があふれて、船を押し出したみたいね」

「そんな馬鹿な!」

 信じられない、と思ったのもつかの間。今度は、船は勢いよく滑り出す。山の斜面を滑って駆け下っているようだった。

「ひゃー、こんな展開は予想してなかったなー!」

 子どもとリオンは目を丸くして驚く。ふたりにも予想外の出来事だった。

 天頭山は頂上の火口付近は草原地帯でなだらかで、高い木もないから、滑降にはよい地形かもしれないが。

「いくらなんでも、めちゃくちゃだ!」

 源龍もあまりの展開に声を荒げる。が、斜めの船室、壁によりかかり、成り行きに任せるしかなかった。

 船は滑る、滑降する。嵐の中を。

 どこをどう滑っているのかわからない。いつ止まるのか、と思っていれば。今度は急に船首が上の斜めに変わり。船室の一同はわあわあきゃあきゃあと反対側の壁に転がってゆく。

 船は下り坂から上り坂に差し掛かったわけだが。しかし、勢いは衰えない。

 リオンは必死の思いで手を合わせ、イチかバチかで船を飛ばそうと試みていた。

「船さん船さん、どうか僕の言うことをきいておくれ!」

 そんなことで飛ぶか! と突っ込みたくなるが。実際にそれで飛んだのだから、何も言えず託すしかなかった。

 すると、ふわり、と地に足がつかぬ感覚に襲われた。何も知らない麗は羅彩女にしがみつき、どうなっているのかと、ただただ怖く。恐慌を抑えるために羅彩女にしがみつくしかなかった。

 下り坂で勢いをつけ、上り坂をまるで跳躍台にするかのように船は浮かび。帆は嵐の強風を受けて、速度を増した。

 強風にあおられて、船は揺れる。がたがたと音がして、バラバラになるのかと思わせた。

「この船、もつかな?」

「辰の一級の船大工が造ったものだから、大丈夫だと思うけど」

 劉開華も船がもつことを祈るしかなかった。

「船さん船さん、頑張っておくれ」

 船は斜めから平行にもどったが。リオンが必死に語り掛けるように、船は強風にあおられて揺れて、きしみ、バラバラになりかねなかった。もしそうなれば、一同は……。

(落ちる!)

 いかに武術の達人であろうが、上空から落ちて地面に叩きつけられれば、ひとたまりもなく死亡は免れない。

「落ち死んでも、また世界樹が生き返らせるのか? もう御免だぜ。死んだら死なせてくれ」

「ほんとほんと、死にたくても死ねないなんてむごいもんだよ」

 源龍と羅彩女は眉をひそめて言う。麗にもそれが聞こえたが、何も知らないので要領を得ず。

(信じがたいことをおふたりは言われるわ)

 と、驚きを禁じ得なかった。

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