嵐将携帯
(気の合う仲間たちが出来て、支え合って。こんな生き方がしたかった!)
あらぬ形だったが、望みが叶えられて内心喜んでもいた。宮殿では公主として威厳を示さねばならない。人々は変に気を使ってよそよそしく。気の合う仲間、友達など、出来ようもなかった。
唯一心を許せる公孫真は年が離れており、武術も教えてもらったこともあり、完全に師匠であった。
皇族の自覚を持てと教えられたが、天性のなせる業か、天真爛漫で気さくな性格は宮殿を窮屈なものと感じさせた。
公孫真によく、外の世界のことを聞かせてとねだったりもした。いくらかは教えてもらえたが。あまりせがむと。
「お立場をご自覚あそばされませ」
と、堅物らしい答えが返ってくるのだった。
でも、今は……。
何があるかわからない試練の旅でも、充実感を覚えていた。
激しい雨音、揺れる船。続いて、空を揺らす風の音。
「……ん?」
皆異変を感じた。船が、動いている。風に運ばれているのか、船が動いているようだった。
このまま岸につけば、閉じ込めから脱出できるのでありがたい。と思ったときに、風の音よりも空を揺らし、耳をつんざく雷鳴が轟きわたった。
「嵐ですな」
「きゃあああ!」
麗の悲鳴が響く。服を着て男たちは女たちのいる部屋に入った。子どもたちも続く。
「麗さん、しっかりしましょう」
「貴志オッパ、怖い、私怖いわ」
暁星の言葉で麗をなだめるが、そう簡単には気を取り直せないようだ。
(死を覚悟したのが、緊張が解けて恐怖が湧き上がってきたのか?)
「人間、簡単には死ねやしないもんだね」
しがみつかれる羅彩女はぽつりとつぶやきながら、背中をなでる。
香澄と劉開華もそばにいて、麗に大丈夫と声をかけてなだめる。
船は動いているが、どこへと動いているのか。源龍は部屋を出て船室の扉を開けて外の様子を眺めたが、辺り一面霧に覆われて。自分がどこにいるのかの感覚がつかめない。
その間に稲光が迸り、雷鳴が轟く。
「嵐だな」
舌打ちをして、室内に戻るしかなかった。
麗は相変わらず羅彩女にしがみついて震えている。雨音に風の音、雷鳴の轟きにもおびえてしまっている。
羅彩女は源龍に目配せして、
(どうしよう)
と目で訴える。さすがの源龍でも、か弱い女性の扱いには全然慣れておらず。肩をすくめる仕草を見せて、成り行きに任せるしかなかった。
ずん。
船は風に乗って動いていたが、何かにぶつかったように揺れて、止まった。岸に着いたようだ。
一同驚いたが、雨が止んだら船を降りようと喜色を浮かべて頷き合った。
が、しかし。
「んん、ん?」
「おい、おい」
「あら、あらら?」
岸に着いたと思われた船だったが、突如上に突き上げられるように縦に揺れたと思えば、なんと斜め、船首を下に斜めの体勢になって。部屋の中の一同は
「うわあー!」
と思わず声を漏らして転がって、壁に当たって。寄りかかるしかなかった。




