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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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天湖着水

 いわば限られた地域に根差す土俗信仰でそれ以上でもそれ以下でもなかった。

 朝星半島は大陸から人や物がよく流入した。それは文化的な、形のないものも運んで、多大な影響を及ぼし。その中に宗教もあり。半島で主に信仰されているのは仏の教えだった。

 天頭山の大噴火からさらに一千年さかのぼり、遥か西方アソーカ国を発祥とする宗教が起こった。それは目覚めた者を意味する仏と呼ばれる者の教えだった。

 仏の教えは様々な苦難の果てに多大な広がりを見せ、長い年月を経て東へも伝えられ、ついには朝星半島にまでいたり。

 一番信仰されている宗教となって、他の宗教を寄せ付けないほどだった。

 ともあれ、粗暴な世子や何かを企んでいる教団と、なんだか話がややこしくなっているのは間違いなかった。

 その中で最悪なのは。

「世子と教主が手を組むということは考えられませんか?」

「それは僕も考えていました。教主に下心があれば、ありえますね」

 粗暴で傲慢な性格ならば、一地域の土俗信仰に世子自ら近づくことはないだろうが。教主の方で接近をはかり、いかなる手段をもってしてもお気に入りになろうとすることはありえた。

 いかにしてお気に入りになるか。信徒を手駒として使い、必要とあれば命すら捨てさせるようなことを。若い女性信徒は、夜伽に差し出す、などが考えられる。

(悪者と戦うのだと世界樹に言われたが。この有様では戦うに戦えぬ)

 おそらく自分たちは世子と天頭山教と一戦交えることになるのだろうが。しかし今の閉じ込められた状況で、いかにしてその戦いに移るのか。

 公孫真もさすがに悩む、悩みながらはっとする。

「あ、そうそう。肝心なことを忘れていました」

「なんでしょう?」

「天頭山に伝わる翼虎の伝説はいかなるものか、教えてもらえないでしょうか? 今後の参考に」

「ああ、そうでしたね。気が付きませんでした」

「いえいえ、我らこそ自分のことで手一杯で」

「伝説はですね……」

 貴志は天頭山の翼虎伝説をとつとつと語り始める。


天湖着水 終わり

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