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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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秋水長天

 自分でも何が何やらわからないが、武将から硬鞭を奪い取らなければ、という思いになぜか駆られる。

「逃げてばかりじゃ埒が明かねえな」

 源龍は家屋の壁に背中をつけて武将と対峙する。無駄なことをと、ほくそ笑んで硬鞭が迫る。

 目前に迫って、すんでのところでかわせば。硬鞭は壁を打ち砕き。瓦礫が音を立てて崩れ落ち。空いた穴からひびが走って、ついには家屋は倒壊した。

「なかなかの破壊力だな」

「お前もこうしてやる!」

 硬鞭は振り下ろされて、源龍はまたもすんででかわしざまに相手のふところに飛び込み。剣を閃かせる。だが相手もさるもの、咄嗟に後ろに飛び下がって、刃をやり過ごす。ただ少し遅かったようで、鼻先に線が走りそこから血が垂れる。

「やるな!」

 武将は傷ついた鼻先などかまわず、懐に飛び込んだ源龍の横っ面を硬鞭の柄を握る拳で横殴りにしようと振るうが。

 源龍は咄嗟に剣を捨てて、空いた手で武将の手首をつかんだ。

「むッ!」

 捕まった。しかし振り払ってやると、武将はそのまま剛腕を硬鞭と源龍ごと振り上げようとしたが。

 源龍も心得たもので、調子に合わせて跳躍し。かえって相手の腕を引っ張って飛び上がった格好になった。

 武将は不意を突かれてしまって、思わず体勢を崩し。その一瞬の隙を突いて、顔面に蹴りが飛んでくる。

 靴底ごしに相手の顔面を踏みつける感触を感じながら、源龍は顔面をそのまま踏み台にして跳躍し。武将の前で着地する。

 武将はたまらず尻もちをついてしまい。手も力が抜けて、硬鞭を放し、落としてしまった。

「しまった!」

 咄嗟に腕を伸ばして硬鞭を拾おうとするが、それよりも早く源龍の手が伸び硬鞭を拾い上げてしまった。

 源龍は硬鞭をかついで小走りに武将から離れ、くるりと向きを変えて長い柄を両手で握りしめて先端を武将に向けて得物を構えた。

 ずっしりと重い感触。こいつで打たれれば、どんな石頭も砕かれてしまうであろう。

「なかなかの業物だな」

 ずっしりと腕に来る重み、柄の握り具合に、精巧な竜の彫り物。なにより、血で汚れながらも不気味に青光るその様は。この鋼の塊の中に悪鬼羅刹でも宿らせているのかと思うほどの、凶悪さを感じさせたが。

 それは源龍にとって、心強ささえ感じさせた。

「おのれ」

 武将は起き上がって、己の得物をぶんどった源龍と対峙する。

「よくやった」

 また、脳裏に声が閃いた。

いったいこれは。

 周囲と言えば、武将が源龍にしてやられて配下の兵士らは動揺をきたしているようだ。そこへ、城兵であろうか、もう一方の兵士たちが盛り返して。戦況が変わりゆくのを肌で感じ取った。

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