表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
55/539

天湖着水

 この暁星も、建国されて二百年。歴史だけを見れば辰より古い。しかし、周辺諸国の一つとして朝貢している。

 大陸からの強い影響を受け、その文化も似通っている。

 などなど考えていて、ふと、かくんと頭が下がった。睡魔に襲われた。

「寝るか」

 船べりから離れて、船室に入って。女子どものいる部屋の隣の部屋に入って。隅で寝ている源龍の、反対側の隅に横たわって、目を閉じて寝た。

 眠りから目を覚まして、船室から出れば。

 船は天頭山の山頂にある湖、天湖チェホに着水して浮かんでいた。

 天頭山の山頂は大きく窪んだ火口ながら噴火はなく、長い時をかけて土砂で埋まり、さらに雨水がたまり。山の頂に湖をなし。人々はそれを天湖と呼んだ。

 噴煙を上げているのは、山のふもとにある三つの別の火口のひとつ。

 天頭山の周囲は天頭山に付き従うように高低様々な山々が囲み山地山脈のていをなし。険しい山々は人を寄せ付けず。

 それが国境の役割も果たすことになった。

 それでも、人は未知の世界を求めて、道を切り開き。暁星の朝星半島と辰の大陸をつなぐ山岳交通路を開拓した。

 その交通路から、そびえる天頭山を眺められ。その堂々としたさまに感じ入り、歌人や詩人が天頭山を称える唄や詩を読んだ。

「それにしても、なんか臭うねえ。卵の腐ったようなというか」

 天湖に浮かぶ船の上、羅彩女は鼻を揉まれるような臭いを感じ眉をしかめた。他の面々も、臭いを感じ鼻をふさいだ。

 天頭山のふもとの三つの別の火口があり、北と南と東の方角に大きなくぼみがあり。北と南の火口もいまは噴煙を上げず水がたまり、小天湖と呼ばれたが。

 噴煙を上げるのは東の火口。

 火口から噴煙が上がるとともに、何かしらの匂いも一緒に風に運ばれた。それが羅彩女が言う、卵の腐ったような臭いだった。

「灰も……」

 香澄が掌を上にしてかざす。白い雪のようなものが降っていると思ったが、それは灰、火山灰だった。

「……これはいけない!」

 公孫真と貴志が一緒に叫んだ。

 火山の噴き出す噴煙、および臭い。それにまかれてしまうと……。

「喉や肺をやられて、死ぬこともある」

「な、なんだってー!」

 貴志が死ぬと言うと、他の面々は驚き思わず叫び声をあげてしまった。

「リオン、船を動かせないのか?」

「ああ、ごめんね、なんか動いてくれなくて」

 リオンは肩をすくめ、困った顔で皆に船が動かせないことを告げる。どうしてもこの天湖にいなければならないようだ。

「ん、臭いがしなくなったな」

「風向きが変わって、こっちに来なくなっただけだ。また来るかもしれない」

「ずっとここにいたら、煙や臭いにまかれて死んでしまうの」

 劉開華は顔を青ざめさせて、天を仰いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ