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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 すると、

 ガンガンガンガンガン!

 と、鐘の音がやたらと早く鳴るような音が轟いた。そうかと思えば、

 ぼっ、

 と、火が起こって闇の世界を照らす。

 これに一同驚いて、音のした方、火の起こった方へと咄嗟に振り向く。

 見よ。

 沈黙の闇の中であるにもかかわらず、闇の空に火が起こり、それがまた鐘を乱打するような早打ちの響きを出しているではないか。

「な、なんだあれは」

 貴志は茫然としてしまう。隣にいるのはマリーで、その隣にはコヒョにリオン。同じように呆然としてしまっている。

「あれ、声が出せる!」

 リオンは沈黙がなくなり声が出せることに気付いて、

「あ、あ、あああーーー!」

 などと、ありったけの声を出してみる。面白いくらいに声が出る。

「すごい、声が出る、声が出る!」

 コヒョもすっかり子どもになって面白がって声を出す。

 そんなことをしている間に、だっ、と源龍は得物の打龍鞭を担いで駆け出していた。穆蘭は鵰に飛び乗る。香澄、龍玉に虎碧、聖智も同じように咄嗟に駆け出していた。

 貴志はすっかり出遅れて、置き去りにされた。が、

「あんたはこの人らを守ってて!」

 龍玉は駆け様に貴志にそう言った。何があるかわからない。戦えないマリーとリオン、コヒョを守る役目は貴志に、と。彼も出遅れながらも、

「わかりました」

 と、一緒にいることにした。筆の天下を手にして。

 リオンは青銅鏡を覗きこんだが、鏡面は真っ暗で何も見えない。

「何が起こったのかしら?」

 マリーはにわかの太陽のように闇を照らし出す火を不思議そうに眺めていたが。その火の中に鄭拓の筆があることに気付いた。そう、火は筆から起こって包み込んでいるのだ。

「筆で火を起こす、か……」

 貴志はぽそっとつぶやいた。比喩か揶揄か、言葉にすると、何とも言えない気持ちにさせられるものだった。

 ふと、金色の羽が雪のようにはらはらと静かに降っていることに気付いた。羽の字を書き出してから降り出されて、沈黙の闇の中で溶けるように消えたと思っていたけれど。また降り出したのか。

 それを見た源龍は鳳凰の背に乗らず、跳躍し羽を飛び伝って鄭拓の燃え盛る筆を目指した。他の面々も同じように鳳凰の背でなく、自らの脚で羽を飛び伝った。

 それを見届けた鳳凰は、静かに羽を広げて、羽ばたき、他の者と同じように鄭拓の筆を目指して飛んだ。

 鵰は穆蘭を乗せて、鄭拓の筆を目指して飛んだ。

「熱い、熱い、燃える、燃える」

 自らが発した火ながら、抑えが利かせられぬようで。鄭拓は戸惑いの声を上げていた。

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