我画願望
(このまま放置かもしれないわね。私たちを放置したまま、こ現実世界に戻って、っていうこともありうるわ)
虎碧はそんなことも考えた。
香澄は自身の七星剣を手にし、剣身の紫の珠を見るが。闇に呑まれて輝きはない。穆蘭も同じように自身の七星剣の青い珠を見るが、同じく闇の中で光はない。
(それだけに……)
やはり近しい誰かの存在が心強かった。
もっとも源龍と穆蘭は離れているが。それでも穆蘭は鵰と寄り添い合っている。源龍はひとりだ。膝を着いて、得物の打龍鞭を杖代わりに身を安定させるようつとめている。
(でも、人は闇の中に閉じ込められたら、例外なく発狂すると聞いた。いつまで持つのか)
と貴志が考えた時、不意にぎゅっと手を握られて、どきりとした。その感触から女性のようだが。いや、この一同の中で男は自分と源龍で、子どもはふたり、他は女性だ。
(だ、誰だろう)
不安のあまり手を握ったのかどうか。そんなことをしそうな女性は。と考えて、さらにどきりとした。
(このまま闇に閉じ込められるくらいなら、いっそ……)
そんなことを考えながら、マリーは我知らず隣の相手の手を握った。誰だかわからないが、自分でも思った以上に不安に襲われているのは否定出来なかった。
(辛いことだけれど、どうしてもこらえられなかったら、殺してと……)
さて手を握った相手がそれを、いや、それを聞いてくれるだろう人がこの一同の中にはいるまい。それがかえって辛かった。
不安のせいか、握った相手の手の感触までは感じられなかった。
(強がっても意味はねえか。オレもいよいよ年貢の納め時か?)
源龍は闇の中で静かに考える。鄭拓という奴はいけ好かない奴だが。どうこう言っても頭はいいようだ。下手に魔物を仕掛けるより、こうした方が確かに効果はありそうである。
減らず口も無視されてしまった。このまま放置して果てさせるつもりだろう。
と言っても、このままやられるのは癪なものだ。それは穆蘭も考えていた。
(勝てないまでも、何か意地見せられないかな)
しかし、にわかにいい考えが浮かぶような甘いことはなかった。そばの鵰も石のように固まっているのか、何の気配もない。
(真っ黒だなあ)
(本当に真っ黒黒くなっちゃって)
リオンとコヒョは、これが鄭拓の心境なのだと思うと、哀れみも覚えるのだった。コヒョにとっては他人ごとではない。
(……)
香澄は、ふうと深呼吸をすると、七星剣を鞘に納めて、歩き出した。
「どこに行くんだ?」
という声もない。ただ肩を触れ合わせていた者は何事かと驚いたが。
(……、ままよ)
と続いて歩き出す。




