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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 黒蜥蜴龍は不穏な悲鳴も止まり。長い首もばたりと倒れて、ぴくりとも動かなくなった。それから、影の身にひびが入って、ちり芥のように粉々になって風に吹かれてそのまま消失してしまった。

「か、勝ったのか」

 貴志は感心と驚きとをないまぜにしてつぶやいた。羅彩女は得意げに頷き。他の面々も感心した面持ちで頷く。

「そんなもの、あたしだって」

 などと穆蘭はささやく。

 同じ打龍鞭を投げ当てるにしても、地上からより世界樹に上った方が効果はあったが。

「私には出来ない事ね」

 香澄は感心しながらいたずらっぽくささやいた。世界樹に上るなんて彼女には出来ないことだった、それはそのような存在であるということであったが。源龍にはそんなことはお構いなかった。

 だが源龍は勝利に浮かれない。

「なんだよ、こんなもんかよ!」

 などと、打龍鞭を振り上げ西の太陽向かって叫んだ。もっと強いのかと思えば、意外にもあっけなく。拍子抜けする思いだった。

「ご不満のようだな。努力不足を詫びよう」

「ならもっと強い奴を出せよ!」

(何を言ってるんだ!)

 貴志は面食らった。源龍の性格を思えばとは思うものの、一国や二国どころか人の世そのものの命運が掛かっている戦いで言うことではないと、さすがに賛同出来ない。

「あの影の蜥蜴は、それほどたいした奴じゃないんじゃないの? とりあえずの様子見みたいな」

 と、龍玉が言い。虎碧と聖智も、言われてみればと頷く。

(おやおや、いい感じの取り合わせになってるかな)

 コヒョはこの三人がいつの間にか仲良くなって良い連携を見せるようになったことを、今の状況の中ながら好もしく思った。

「次の手があっても源龍なら勝てるさ!」

 と羅彩女は言う。龍玉は「はいはい」と軽い調子で頷く。このやりとりもまた微笑ましいと言えば微笑ましいか?

 香澄は無言で、様子をうかがっている。影の黒蜥蜴龍が様子見であったのは、そうかもしれない。

 すると、空に浮かんでいた筆が動きを見せた。雀のような素早い動きで周囲を周回し、皆の様子をうかがっているようだ。

「今更改めて言うまでもないだろうが、香澄や、暁星の宰相の子息殿には特に」

 西の太陽こと鄭拓は、不意にそんなことを言い出す。

「筆を制する者が天下を制す!」

「……」

 貴志は絶句した。香澄も。

 雀のように飛び回っていた鄭拓の筆は、西の太陽のそばまでゆくと、白かった穂首がにわかに黒くなったと思えば。くうに、

「羽」

 と書いた。

 すると、どうであろう。空から羽が、金の羽が雪のように舞い降りてくるではないか。これには一同驚かされたものだった。

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