我画願望
「マリーさんにリオン君、あなた方はその西方の人のようですが、ご存知ありませんでしたか?」
「ああ……」
「まあ、その~」
問われてマリーとリオンは苦笑する。虎碧は物憂げに母を見る。
そう、西方世界は東方世界と人種が違い、肌の色に目の色、髪の色が違っている。マリーは金髪碧眼の、西方世界の人種だった。リオンも西方の、そのまた南方に多い人種の容姿であった。
「貴志さんを立てて黙っていたんだよ」
「そういうことにしておいてください」
リオンとマリーは珍しく戸惑いつつ笑って貴志を立てつつ誤魔化した。
世界樹の子どもたちは、裏に様々な事情を抱えているのは今までの事でわかっていることではあったが。
貴志も気になることはあるが、今はそれどころではないと、問い詰めるようなことはしなかった。リオンとマリーは貴志のそんな優しさにいたく感謝したものであった。
で、貴志はそんなマリーの微笑みに、なんだか心地の良い甘酸っぱさを禁じ得なかった。
ともあれ、源龍と影の龍である。
源龍は打龍鞭を担いで影の龍と対峙している。
「こんな蜥蜴でオレを楽しませられるのか?」
「ご期待に添えられるよう最大限の努力はした」
「ならその努力を見せてもらおうか!」
ぶうんと打龍鞭が唸りを上げた。
その唸りに呼応するように、西の太陽に何やら黒点が出てきたと思えば。その黒点は宙に浮かんで、西の太陽から離れて。こちらに迫ってきて。
「あれは」
「なんか細長いねえ」
虎碧と龍玉がそう言えば、貴志は筆の天下をしっかりと握りしめた。
「筆だ」
そう、西の太陽から筆が出てきたのだった。
「まさか、この筆も?」
貴志は鄭拓である西の太陽でなく、香澄に問えば。彼女は静かに頷いた。
そうしているうちに、源龍は黒蜥蜴龍と渡り合っていた。打龍鞭は唸りを上げる。その向かう先に、鋭い牙。そのまま噛み砕いて遣るとばかりに大口を開けている。だがひるまずそのまま突っ込む。
そのまま大口の中に飛び込んでゆきそうな勢いで、打龍鞭は鋭い牙向け振るわれた。だが、残念でした! と言わんがばかりに、ふっと黒蜥蜴龍はいなくなった。
蝙蝠の羽を羽ばたかせて宙に浮いたのだ。
源龍は置き去りにされた。ということはなく、今度は太い脚が上から迫って来る。踏みつぶそうというのだ。
「しゃらくせえ!」
頭上の足を見上げ、咄嗟に後方へ、さらに頭上へと跳躍した。眼前の太い脚の太い爪が。ぶうんと打龍鞭を振るえば、その太い爪の当たって、砕けた。




