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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 彼女が言えば響きはいいのだが。

(要はヤバいやつってことじゃん)

 羅彩女と龍玉、穆蘭はそう思った。ただ羅彩女は、

(そのヤバさもまたいいんだよねえ)

 などと考えていた。

 貴志は絶句してしまって。リオンとコヒョ、マリーも余計なことは言わずに黙って、源龍に託すしかないと思っていた。

 それにしても、この鳳凰の背は居心地がとてもいい。身も心も安らぎ、疲れが溶けてなくなってゆくのを感じる。

「影が雁首並べやがって。お前らは楽しませてくれるんだろうな」

「ご期待に添えられるよう、力を尽くそう」

「期待してるぜ」

 鄭拓の声も、源龍同様なんだか楽しそうだ。この緊張感の中で。いやその緊張感こそが楽しい要素なのだ。

 源龍を取り囲んでいた影は、その目前で一つに溶けあってまとまり、黒い太陽のような丸く黒光りするような存在になった。

 それからまた姿が変わってゆく。首や手足に、尾が伸び。何かの生き物の姿になってゆく。

「龍?」

 誰もがそう思った。そしてその通り龍のようではあった。しかし、

「龍っていうか、蜥蜴とかげみたい」

 穆蘭はそう言った。そう、その黒い影は龍のような、蜥蜴のような姿となった。丸い胴から長い首と尾が伸び。胴から伸びる前足後ろ足も太く、四つん這いで、龍というよりも首長の蜥蜴のような姿であった。

 さらに、その背からは蝙蝠のような羽まで生えてくるではないか。

 黒光りする羽のある太い蜥蜴の影は、なんとも言えぬ禍々しさを放っていた。

 龍玉が問う。

「ねえ貴志のおぼっちゃんさ、なんかあたしらが知ってる龍とは違うみたいなんだけど、本とかで見たことないの?」

「うーん……」

 貴志もその影の龍の造形に驚かされながらも、それまでに読んだ書や本の記憶の糸を手繰り寄せる。

 すると、おぼろげながら見えてくるものがあった。聖獣を扱う書物の中で、はるか西方地域の龍はそんな胴の太い蜥蜴のような造形をしていたことが描かれていた、というのを思い出した。

「この龍の造形は、遥か西方世界のだと、書物で読んだことがあります」

「さすが! こんな時、貴志のおぼっちゃんは頼りになるねえ」

 龍玉は耳も九つの尾も機嫌良さそうに立たせて貴志を讃える。虎碧も続いて「すごいです」と感心し、マリーも微笑んで頷く。他の面々も同じように微笑んで感心する。

「貴志お兄さまに知らないものはないわ!」

 鵰の背の穆蘭は声も高らかに絶賛し。それには嬉しいを通り越して苦笑してしまう。

 とはいえ貴志はひっかかるものがあった。

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