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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 天頭山はふるさとではないが、知らぬ間にふるさとと思う慕情を抱くようになっていた。色々あって性根の悪い信徒は出てゆき、性根の良い信徒が残り。その信徒らとの暮らしは、華やかさはない地味な暮らしではあったが、不思議と心は晴れやかであった。

 貴志も、香澄も、源龍も羅彩女も、龍玉と虎碧も、リオンとコヒョ、マリーも、鳳凰の背から天頭山を見下ろしていた。それと並ぶ鵰の穆蘭も同じくだった。

 天頭山は高かった。

 雲海から火口が突き出し、水を湛える天湖チェホが陽光を反射させて光り輝く。

 今にも翼虎イグホが羽ばたき飛び出しそうな荘厳な雰囲気さえあった。

「って言うか、まさか」

 鳳凰はその天頭山に向かって降下している。鵰も続く。

「あー、やっぱりそうなるんだな、もう慣れたぜ!」

 源龍は打龍鞭の柄を握りしめて臨戦態勢だ。羅彩女も同じくする。みるみるうちに火口は、天湖は近づく。

 天湖は一段と輝く。湖面に白い翼虎の姿が映し出された、ような気がした。

 ざぶん!

 と、激しい水音を立てて、鳳凰は天湖に飛び込んだ。鵰も続いた。

 飛び込んだ勢いのまま、底に激突!

 ということはなく。

 天湖に飛び込んだはずなのに、鳳凰と鵰はまだ空にいた。

「あ、世界樹!」

 リオンとコヒョは下を見下ろして言う。その通り、世界樹がそびえ立っているのが見下ろせる。

 緩やかに凹凸のあるだだっ広い草原の丘陵地帯に、ただ一本世界樹の大樹がそびえ立っている。

 快晴だった。爽やかさを感じそうだった。しかし、感じられない。

「子どもたちは?」

 リオンとコヒョ、マリーは心配そうに草原を見下ろす。そう、世界樹の世界にはたくさんの子どもたちがいるはずなのだが、いないのだ。

 それに、見よ、東西にふたつの太陽。

 これは明らかに世界樹の世界に異変がまだあるということを示している。

 鳳凰と鵰は降下してゆき、着地。一同は背から下りて、草原を足で感じる。確かに自分たちは地に足を着けている。それが生きた心地をも感じさせた。

 源龍は打龍鞭を構えて臨戦態勢。香澄もすぐに抜剣出来るように備え。他の面々も同じくする。

 リオンは青銅鏡を覗きこんだ。しかし今はただの鏡として自分の顔を写し出すのみ。コヒョとマリーは通心紙を取り出し、様子を見るが。今はただの厚紙だった。

 貴志は筆の天下を取り出して、虚空に何かを書こうとしたが、何もない。

 これから何があるのか。誰もわからないが。一同、ふたつの太陽を見上げる。

 といってもずっと見ていられるものでもないので、顔を下げて目をそらし。

「そうだ、木陰にいよう」

 と、いうコヒョの呼びかけに応じて、一同木陰に隠れた。

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