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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 が、

「もう、仕方がないね!」

 というぼやきが聞こえ。鵰の背に着地させられた。その背にあるのは、穆蘭だった。

 急降下し、丁度いい低さまで来ると、小さな二人の背を軽くたたいて鵰の背から下ろし。急上昇した。

 源龍と羅彩女はそれぞれの得物を持って、受け身を取って着地した。リオンとコヒョはよろけつつも着地して、ふうとひと息ついた。

 リオンは青銅鏡を確かめる。幸い何事もなく無事ではあった。

「みんな!」

 厳しい表情の顔の香澄だったが、ぱっと顔をほころばせた。亡者の雲の鳳凰が中から光ったかと思えば、鵰と穆蘭が現れて。それに続いて、龍玉と虎碧に聖智、貴志がマリーを抱きかかえて、亡者の雲の鳳凰から飛び出し。それぞれ上手く受け身を取って着地した。

 龍玉は耳と尻尾を出しっぱなしは言うまでもない。貴志はマリーを優しく下ろし、マリーも丁重に礼を言い。娘の虎碧も続いて礼を言い。

「いえいえ、どういたしまして」

 貴志ははにかみながら応えた。

(貴志のおぼっちゃんって、なかなか艶福だね!)

 女性に囲まれてもおかしなことにならず、照れながらも人として接する貴志に龍玉は好感を増し。またその内なる恋も応援したくなったものだった。

 それから、さらに雲の鳳凰の中から現れたのは、筆の天下から出でた善い鳳凰だった。翼を広げ、岩盤の亡者の灰色の空にて、光を放ってまるで太陽が現れたかの如くであり。その威厳ある姿はまこと聖獣としての鳳凰であった。

「まだいやがったのか!」

 源龍は打龍鞭を構えるが、香澄が左手を伸ばして制す。

「この鳳凰は善い鳳凰よ」

「なんだと」

 事情を知らなければ鳳凰の天下がまだいると思うところだが、香澄にはわかるようだ。

 貴志も手短にながら事情を説明する。源龍と羅彩女は一瞬ぽかんとしてしまう。

 それよりも、見よ、善い鳳凰が現れてからの、雰囲気に変りようを。

 灰色の空から雲が光に払われるように消滅してゆき、青い空を見せ始めて。雲の鳳凰は鳴き声ひとつもあげられず、空で固まったまま。それが、融けてゆくように消失してゆくではないか。

 聖智はこの目で見ながらも、信じられない気持ちだった。これを自分が出したのかと。

(あ、そうだ!)

「ありがとうございました」

 と、筆の天下を貴志に返した。貴志も笑顔で頷いて受け取り、懐におさめた。

「ちょっとー!」

 という、相変わらずな声も空からしたが、いちいち相手もしない。

 こうしている間にも、空は晴れてゆく。あの重々しい灰色の空を創り上げていた灰色の雲たちは瞬く間に払われて。雲の鳳凰も呻き声も減らず口もひとつもないままに、消え去っていってしまった。

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