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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

「ああ……」

 穆蘭は思わず呻いた。善い鳳凰の背の三人、龍玉と虎碧に聖智も思わず呻いた。

 人の文字に飛び込まれた悪い鳳凰の天下の身体が、なんと透けてきているではないか。消滅をしているのか。

 と思えば、透けて消滅しつつあるように見える鳳凰の中から、何かが見えてくるではないか。

「ようしっ!」

 何を思ったのか、穆蘭は意を決して鵰ごとその中に飛び込むではないか。善い鳳凰の背の三人も、戸惑いを見せたがすぐに気を取り直して。

「ゆこう!」

 と頷き合って。善い鳳凰も呼応するように、鵰と穆蘭に続いてその中に飛び込んだ。

「……」

 貴志は物言えず空を見上げていたが、

「貴志さん!」

 と自分を呼ぶ声。マリーだった。庁舎にいたのだったが、勇気を振りしぼって貴志を追いかけてきたのだ。

 驚きを禁じ得なかったが。貴志も意を決して。

「すいません、少し行ってきます!」

 と、人前で恥ずかしいながらもマリーを抱きかかえて、雪のように降り続ける金の羽を伝い上って、マリーと一緒にその中に飛び込んでしまったではないか。

 皆が飛び込んだ後、しゅうと、音はしなかったがそれが聞こえそうな感じでしぼんでいって。ついには消え果ててしまった。

 空は途端に静かになった。激闘が繰り広げられていたのがうそのように。

「まったく、仕方のない奴だ」

 瞬志は一瞬ぽかんとしてしまったものの、苦笑しつつ、気を取り直して部下たちをまとめ。治安の維持につとめた。

 

 所は変わる。

 石ころと岩盤ばかりの不毛な亡者の世界で、香澄こうちょうは亡者の雲の鳳凰と対峙していた。

 そこから離れた虚空に、光に包まれて、蜘蛛の糸の網にとらわれた源龍げんりゅう羅彩女らさいにょに、リオン、コヒョが戦いの様子を、歯噛みして見守っていた。

 ところが、亡者の雲の鳳凰の様子がおかしい。

 途端に翼をばたつかせて、

「お、お、お!」

 などと不気味に呻き声を放ちだした。

 何事か、香澄たちは用心して様子を見れば。雲の中から光が発せられたと思いきや、その光は広がって亡者の雲の鳳凰全体を光らせたと思えば、ついには光りは飛び出し丸く小さな太陽のようになったではないか。

「なんだありゃ」

「またなんか起こるの?」

 源龍と羅彩女は用心し、リオンとコヒョも固唾を飲んで見守る。

 すると、小さな太陽から、鵰が飛び出したかと思えば。その背に乗る者は刃を振りかざし、四人を捕らえる蜘蛛の糸の網を断ち切ったではないか。

「おおっと!」

 四人は途端に中空に放り出された格好となって。リオンとコヒョは、

「わーー!」

 と悲鳴を上げた。

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