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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 三人はほっとひと心地付けたものだった。同じ鳳凰とは思えぬくらいである。

 鵰の背の穆蘭も、余計な真似はせずに旋回しながら様子を見ている。

 地上の面々は、空に突如浮かんだ人の文字を指差し、何事かと語り合っている。

「人、か」

 貴志はぽそりとつぶやいた。全ては人なのだ。人あっての天下なのだ。天下あっての人ではないのだ。

 聖智は鋭くも賢い印象はあったが、以前はそれが悪い方向へと作用し、今は善い方向へと作用していた。感激すら覚えた。

 人の文字を眺めて、聖智の目から涙がこぼれ落ちた。

(私はなんと大きな罪を犯したのだろう)

 という、罪悪感が心にずしりと重かった。しかしその重みをはらおうとせず、子を抱き寄せるように罪悪感とともに生きる決意もあった。

 悪い鳳凰の天下は、人の文字と対峙し、

「お、お、お」

 という変な呻き声を上げるばかり。翼をばたつかせて空に留まってはいるが、それもいつまでもつのか。翼の動きも鈍くなって、徐々に降下しつつあった。

「とどめを刺してやる!」

 まさに好機と見て、穆蘭は青い珠の七星剣を構えて。天光北斗弾を放とうとしたが。

「!?」

 変化があった。鵰の背で青い珠の七星剣を構えたままで、動きが止まった。筆の天下から出でた善い鳳凰の背の三人も、悪い鳳凰の天下を凝視し。地上の面々も同じく空と天下を見上げる。

 空で人の文字と対峙し悶えていた鳳凰であったが、人の文字も天下の目前まで迫ったきり、変化がなさそうで、睨めっこをしているかのようだったが。

 突然人の文字が動き出したかと思えば、ひびの入った嘴の中へと飛び込んでしまったではないか。

「ひい、いやだ、いやだあー!」

 悪い鳳凰の天下は悲鳴を放った。むごたらしいほどに悲鳴を放って、翼をばたつかせた。

「そんなに人が怖いのか」

 貴志は唖然としながらぽそりとつぶやいた。書物で読んだ。傲慢は臆病の裏返しであると。その通りになっているではないか。

「しかし悪人は、変なところで強く賢いものだ」

 瞬志が空を見上げながらつぶやく。公人として宮中の色々を経験しているから、実感がこもっていた。

 でもその通りだ。実際この悪い鳳凰の天下にどれほど悩まされてきたか。そして、辰の今の状況。宰相の鄭拓ていたくが反乱を起こし、実権を奪い取り、公主の劉開華りゅうかいかと側近の公孫真こうそんしん暁星ヒョスンに逃げたという有様ではないか。

(嫌な予感がするなあ)

 まさかと思うが、鄭拓は何かしらの不思議な力を手に入れたのではないかと、そんな嫌な予感が脳裏をよぎるのであった。

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