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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

(様子がおかしい)

 と、期待を込めて様子をうかがった。

 すると、なんと鋼鉄の火龍の頭部に亀裂が走り。

 ばり! 

 と、大きな音を立てて砕け散ったではないか。頭部に続き、細長い胴も同じように亀裂が走って、それから砕け散って。

 鋼の破片は空に散り。氷のように溶けて消えてなくなってゆく。

「!!」

 貴志フィチはある書物に掛かれたことを思い出した。硬質のものでも急激に熱気と冷気を感じさせることで、割れることがあると。そのからくりはわからないが、急激な温度差は硬いものを壊すのだと。

 青い炎と赤い氷を交互にぶつけられることで、鋼鉄の火龍にそんな破壊がもたらされたのか。おそらく間違いあるまい。

「やった!」

 鋼鉄の火龍の頭部が破壊されたのを見て、多くの人たちが拳を握りしめて歓声を上げた。

 龍玉と虎碧は素早く金の羽を伝い、筆の天下から出でた鳳凰のもとへゆき。鳳凰も身を寄せて、背中を向ける。聖智がいて。健闘を称えるように凛々しく頷く。

「見事だ」

 鳳凰の背に乗る龍玉と虎碧に向かい、聖智は称賛を惜しまなかった。

「まあね、えっへん」

「あ、ありがとうございます」

 龍玉は耳と九つの尾をぴんと立たせて得意になり、虎碧は頬を赤らめて、はにかみ。その対照的な態度にも、聖智は好印象を抱いた。

 鋼鉄の火龍は、跡形もなく消え去ってしまっていた。

(儚いものだ)

 貴志は、破壊は一瞬とはよく言ったものだと思わざるを得なかった。

「だがまだ終わりじゃないぞ!」

 瞬志スンチが諭すように言う。そう、まだ終わりではない。悪い鳳凰の天下がいる。

 逃げ出して彼方に消えて。それを穆蘭と鵰が追っているが。

 さて、どこに行ってしまったのだろうか。まさかそのまま異世界に行ってしまったのか。それとも都の漢星ハンスンか、しんの都の大京だいけいか。

 それとも、これを機に自分たちがどこかに行かされてしまうのか。世界樹の思し召しと言う気まぐれは、予測不可能だったから、何が起こってもいいように気持ちの準備だけでもするに越したことはなかった。

 だが心の準備をするだけで済みそうで。空の彼方から、悪い鳳凰の天下が舞い戻ってくる。後ろには穆蘭ぼくらんくまたか

「よし、あとひと頑張りだよ!」

 龍玉は気合を入れなおし、青龍剣の柄を握りなおし。虎碧もうんと頷いて、赤虎剣の柄を同じく握りなおした。聖智は筆の天下を握りしめた。

「ちょっとー、その筆!」

 などという叫びが穆蘭から放たれる。目がいいものである。筆は貴志を象徴するものではあるが。

(今はそれどころではないだろうに)

 まったくいい性格をしているものだと聖智は苦笑する。

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