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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

「やったか!?」

 ふたりは、地上の人々も様子をうかがう。しかしいかに青い炎が熱くとも、鋼鉄を溶かすには至らない。が、赤い氷が咄嗟に迫り。鋼鉄の火龍も咄嗟に避ける。

「ああ、惜しい!」

 当たればいくらかでも打撃は与えられたろうにと、龍玉りゅうぎょくは出てる耳と九つの尾を震わせて惜しむが。虎碧こへきは、はっきりとでなくうすぼんやりながら、炎と氷を交互に放てば、という意識があって。

「龍お姉さん、あきらめずに交互攻撃で行きましょう!」

 と告げる。龍玉も虎碧を信用しているので、

「わかったよ!」

 と、快くうなずいた。

 その様を、頷くように、筆の天下から出でた鳳凰と聖智ソンチは見守っていた。

「当たらなくても、熱さと冷たさを交互に感じさせれば……」

 虎碧はぽそっとつぶやいた。青い炎と赤い氷は、当たらなくても周囲の温度に変化をもたらす。熱さと冷たさを交互に感じたら……。

 勝機はそこにあるような気がした。

 割れた左の髭。右の髭だけがなびいている。さすがに鋼鉄の火龍の勢いはそれで削がれることはないものの、それだけに右の髭には左の髭への情けなどない冷たさを感じさせた。

 そこに龍玉の青い炎が迫った。火焔で応じずに咄嗟に避けて、大口開けて咆哮する。そこに虎碧の赤い氷が迫り。これがうまい事に開け放たれた大口の中に突っ込んで、口内を埋めた。

 しかし、バリバリバリ! と鋼の牙で氷を嚙み砕き、漏れた氷の破片が散って、霧消する。やはり顎の力も相当なものだと思わされた。が、しかし。

「あッ!」

 龍玉思わず声を出す。なんと鋼の牙の右の上側が、途端にひびが入って、割れて砕け散り。噛み砕いた氷の破片を追うようにして鋼の破片も散った。

「効いてる!?」

 虎碧も唸った。やはりからくりはわからない。氷が思った以上に硬かったのか。それとも他の理由によるものか。

 威勢の良かった鋼鉄の火龍だったが、髭に続き牙まで砕けたとなればさすがに危険を感じたのか。そっぽを向いて逃げようとするではないか。しかしそこの前に筆の天下から出でた鳳凰が逃げ道をふさぐ。

 くうを轟かす咆哮。

(恐れている?)

 禍々しさは変わらぬが、そこに恐怖が加わったかと、聖智は思った。その鋼鉄の火龍の後頭部に、龍玉の放った青い炎がぶつけられ。一瞬火龍の顔は青い炎に包まれた。

 咄嗟に下方に急降下し、炎から、また筆の天下から出でた鳳凰から逃げようとするが。虎碧も動きを読んでいて、その後頭部に赤い氷がぶつけられた。

 青い炎で熱せられて、次いで赤い氷に急に冷やされて。

 鋼鉄の火龍は咆哮を轟かせた。何度も何度も轟かせた。

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