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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 筆の天下から出でた鳳凰は聖智に気付き、下降し、尾羽を垂らせば。聖智は跳躍して腕を伸ばし、尾羽を掴んで。素早く背まで上った。

 得物の軟鞭は腹に巻き。筆の天下を右手に持ち。鋼鉄の火龍、ではなく、悪い鳳凰の天下が消えた彼方をじっと見据える。

 自分が背に乗り身を預けるこの鳳凰も、筆の天下から出た、聖智が出したものだ。どんなからくりがあるのか知らないが、心は筆の天下に奪われたように携えていたくなったのだった。

 龍玉と虎碧は鋼鉄の火龍に備え得物を構える。

 鋼鉄の火龍もこちらを見据えている。砕いてやると言わんがばかりに大口を開けて、鋼の牙を見せつける。

 と、すると、鼻先から伸びる髭の、左の方がとつぜんひび割れて。破片をくうに散らかすではないか。

「?」

 龍玉と虎碧もこれには驚く。自分たちの攻めが効いているのは確かだが。どんなからくりなのか。

「効いてるね、どんどんいくよ!」

 驚きつつも、龍玉は素直に喜び。青い炎を放つ。虎碧も赤い氷を放つ。同時に迫る。鋼鉄の火龍は素早く避ける、かと思われたが。あにはからんや、避けない。

 青い炎と赤い氷は、あろうことか、青い炎が赤い氷を溶かしてしまったではないか。その青い炎も赤い氷のせいなのか、勢いが弱まり。そこに紅蓮の火焔が放たれて、巻き込まれて。そのまま火焔は龍玉と虎碧に迫った。

「あ、やっべ!」

「危ない!」

 ふたりは咄嗟に避けた。火焔とそれに伴う熱風が我が身を撫でる。心胆を寒からしめる。

「もう、なんでよ、効いてると思ったのに!」

「あ、そうか!」

「え、なに!?」

 何か閃いた様子の虎碧。龍玉は何事かと尋ねてみれば。

「私と龍お姉さんの攻めの間隔を空けるのよ!」

「……。そうか、炎と氷が一緒じゃ都合悪いもんね」

 龍玉も意を察し。金の羽を飛び伝いつつ、鋼鉄の火龍と対峙し。攻めの機会をうかがう。

 髭が割れて多少動揺するかと思われたが、そこは生物ならぬ鉄の塊ということなのか。平然として、火焔を放ってくる。

 しかし虎碧は逃げない。龍玉もとどまる。赤虎剣から赤い氷迸り出て、それは大きな盾のようにふたりの前にそびえて。火焔を防ぐ。

 熱で溶かされ、溶け切るまえにひび割れて。破片が空に散る。虎碧は赤虎剣をもってそれらを打てば、打たれた破片は鋼鉄の火龍目掛けて飛んだ。

 小賢しいとばかりに鋼鉄の火龍は破片を避けるが。入れ違いに青い炎が迫った。動きを読み、避けた方へと青い炎を放った。読みは当たって、赤い目の鋼鉄の顔面を青い炎が包んだ。

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