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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

「忌々しい者どもめ、食ってやる!」

 などという叫びも聞こえた。

「食えるもんなら食ってみな!」

 得物の青龍剣を振り下ろす。強い衝撃が全身を駆け巡った。赤虎剣も同じように嘴に当たった。そして青い炎と赤い氷が光をも放って迸った。

 嘴に裂け目が入った。悲鳴のような鳴き声がこだました。

 龍玉と虎碧は咄嗟に離れて間合いを開ける。

 聖智は頭上に位置したまま、様子を見た。下手な手出しは邪魔になるだけだ。

 龍玉と虎碧は金の羽を伝い落下するように下へと向かえば、その先には鳳凰の背中。そのまま背に乗る。

「手ごたえはあったけれど、まだね」

 虎碧は鳳凰の背にあって鳳凰の天下の様子を見る。嘴を二振りの剣によって傷つけられたが、その程度で倒せるなどと甘く見ない。龍玉も九つの尾を揺らしながら頷く。

 聖智は金の羽の上に片足を乗せたまま、鳳凰の天下を見下ろす位置にいる。

 悪い鳳凰の天下は、嘴が傷つけられて、何度も何度も鳴きながら、翼をばたつかせている。

 かっ、と目を見開き。意を決して、聖智は飛び降りるようにして羽を伝い降りて悪い鳳凰の天下に迫った。

「おのれ、これでも喰らえ!」

 亀裂が入りながらも大きく開かれた嘴から、灰色の霧のようなものが噴出されて。それが拳大の泡のような形になり。聖智に迫って、取り囲んだ。

「こんなもの!」

 鳳凰の天下に迫るのを一旦やめて、己を囲む泡を軟鞭を振るって弾き消す。が、しかし、

「おろろ~~ん」

 という不気味な呻き声が泡からするではないか。さらに、まだまだ多く残る泡の中から、多数の手が飛び出し、聖智に触れようとするではないか。

「女、女だ!」

「柔肌、柔肌!」

 などと狂喜、そして狂気の叫びまでともなって。さすがの聖智もぞっとして、一瞬動きが止まってしまって。その手が襟をつかんだ。

(しまった!)

 咄嗟に軟鞭を振るおうとするが、間に合わず、気が付けば泡から伸びた手がその腕も掴んでしまっていた。

「もう、仕方ないねッ!」

 という声とともに、光弾が飛んできて、伸びてくる手に当たって弾けた。

 危うく服を襟から引き裂かれそうになったが、光弾のおかげで間一髪助かり。聖智は素早く軟鞭を振るい他の手を払い、羽を伝って逃げることが出来た。

 穆蘭だった。やや離れてはいるが、聖智の危機を見て咄嗟に天光北斗弾を放って聖智を助けたのだ。

 筆の天下から出でた鳳凰の背の龍玉と虎碧も、その危機を見て咄嗟に跳躍し助けに行こうとしていたが。その必要はなくなり、聖智は光弾のおかげで危機を脱した。

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