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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我想展示

 聖智は筆の天下を貴志に返しながら、驚愕の目で自らが描き出した鳳凰を、心を奪われたように見つめていた。

 金の墨汁から姿を変えた鳳凰は急降下し。豪奢な尾羽を振り下ろす。その先には、慶群の庁舎。

 聖智に龍玉、虎碧は咄嗟に跳躍して、腕を伸ばし、尾羽を掴んだ。

「飛べ、鳳凰、飛べ!」

 聖智は血を吐くかのような叫びを放った。

 そしてその叫びの通り、鳳凰は飛翔し。空高く舞い上がった。

 聖智と龍玉、虎碧は尾羽を力強く握りしめた。油断をしていたら手放して落下しかねない。しかし、不思議と不安はなかった。握りしめるほどに、心が強くなってゆくのを感じていた。

「悪い鳳凰を生んだのが人の心なら、良い鳳凰を生み出すのもまた人の心」

 貴志は筆の天下を握りしめて、ぽそっとつぶやいた。

「ううむ」

 瞬志はうなって。筆より生み出された鳳凰を見上げている。将軍職を務めるだけあり、肝は座り、事態の急変に対しても慌てず冷静でいた。そのおかげで、志明をはじめとする庁舎の役人や召使も、最悪の恐慌は免れていた。

「まずそうだ!」

 というあらぬ轟き。悪い鳳凰の天下は、突如現れた鳳凰やその尾羽から背によじ登った三人を見据えて、威嚇の雄叫びを上げ。同時にまずそうだと叫んだのであった。

「あたしらも行くよ!」

 鵰をけしかけて、穆蘭は悪い鳳凰に向かわせ。

「天光北斗弾!」

 青い七つの光弾が放たれた。

 悪い鳳凰の天下は咄嗟に逃げようとするが間に合わず、七つの光弾をもろに受けてしまった。

 耳をつんざく破裂音が響き、次いでけたたましい悲鳴も響いた。

「おのれ、まずそうな奴らが!」

 などというあらぬ叫びも続いた。

 聖智の描き出した鳳凰と、それに乗る三人は、さあ悪い鳳凰を倒そうと迫るが。咄嗟に速度が鈍り、距離を開けた。

 悪い鳳凰は爆発から生じた煙を払おうと、翼を激しくばたつかせている。それと同時に、ひとつひとつ……、無数の羽が抜け、宙に浮いて漂う。

 煙は払われてなくなって、抜けて宙を漂う羽ひとつひとつが集まって。また別れて。それは、金の羽で出来た龍に姿を変えた。

「悪い鳳凰から、悪い龍が出たのか」

 貴志は空を見上げて唸る。その周辺、無数の小さな粒が漂っているように見える。それは羽であった。すべてが集まって龍になったのではないようだ。

「なんて奴なの!」

 天光北斗弾の七つの光弾すべてを受けながら、多少は傷ついてもびくともせずに、新たな敵を出現させる悪い鳳凰の天下のしぶとさや往生際の悪さには、性格のきつい穆蘭もさすがに舌を巻いた。

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