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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我想展示

 雲の鳳凰と言えば、一瞬慌てた様子だったが。今はもう落ち着きを取り戻し、再び香澄と対峙し。鋭い嘴を向けている。

「ふう、冷や冷やさせるねえ」

 羅彩女は安堵のつぶやきを漏らす。源龍も、あぶねえところだったと漏らす。

(いけない、私としたことが)

 相手が恐慌をきたしたのを見て油断をしてしまったなんて。

 あの豪奢な尾羽を軟鞭なんべんのように振るって、打ち付けてくる。雲とはいえ実体があり、受ければ打撃も受ける。迂闊に近づけない。

 剣身の七つの紫の珠が光る。

「天光北斗弾!」

 ふたたび放たれる光弾。

 雲の鳳凰は避けようとしない。それどころか、豪奢な尾羽を振るって光弾を打ち返そうとするではないか。

 果たして、光弾は尾羽とぶち当たって。打ち返された、と思われたが。その灰色の雲の中に入って、中で紫色の爆発が起こった。

 しかしこたえていなさそうだ。

 得意になったように、雲の鳳凰はけたたましくいななく。

「マジかよ!」

 源龍は歯噛みしてその様子を眺めたが。身動きが取れず、他の三人とともにもどかしい思いをするしかなかった。

 香澄はコヒョの念に乗ってくうを舞っていたが、

「もういいわ」

 と、自ら地に下りて。大小様々な岩石転がる凸凹の岩盤の地面で、足元に気を使いながら地面を踏みしめて七星剣を構える。

「ふう」

 コヒョはため息をつく。香澄に念を送っているうちに、疲れが出た。身動き取れない中でのことだから、なおさらだ。

 雲の鳳凰は、効かなかったとはいえ光弾を放たれたことに対して忌々しいとばかりにいななき。地上の香澄を睨み、嘴を向けていた。


……


 ところは変わって、慶群キョンぐん

 人狼と画皮が操る鋼鉄の阿修羅を撃退したかと思えば、鳳凰の天下。

 貴志フィチの描き出したくまたかの背に身を預けて、穆蘭ぼくらんは、その鳳凰の天下と対峙する。

 地上はといえば、突如現れた鳳凰に対して、

「おお、なんとめでたい!」

「凶兆のあとに、吉兆が来た!」

 などと、手を合わせて拝む人が多く。雰囲気は俄然よくなった。庁舎の者たちも、鳳凰の出現を見て。

「ありがたや」

「ありがたや」

「ありがたや」

 などと、ありがたく拝み出す。

 鳳凰はよき幻獣として、人々に親しまれている。天下のことを知らぬ者は、疑いなくありがたがるだろう。

「鳳凰ですって!?」

 騒ぎを聞きつけた虎碧こへきにマリーが外に出てきて、空を見上げて、絶句。

 本来めでたいはずの鳳凰が、その実は人を食らう化け物であったなど。

 志明チミョンも絶句し、氷のように固まってしまっている。瞬志スンチはそこまでいかずとも、絶句せざるを得ない様子に変わりはなかった。

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