我想展示
「おろろ~~ん」
人狼と画皮が襲われたのに反応したのか、他の雲の破片たちが不気味な唸り声を響かせる。
「……」
香澄は無駄口は叩かず。静かに降下し、着地した。人狼と画皮らは追ってこななかった。が、何とも思っていないわけもなく。
「てめえこのアマぁ!」
「お返ししてやるぅ!」
人狼と画皮は変に語尾を伸ばす物言いをして、一見間抜けっぽいが、その目は灰色の雲ながら禍々しさを禁じ得ない。他の雲の破片の面々も、無表情なようだが目だけは異様に鋭い。
鳳凰に食われてもなお、あらぬ心を捨て切れなかった者たちである。まともな目つきをしているはずがない。
「くそ、なんとかならねーのかよ」
「もう、忌々しいね!」
源龍と羅彩女は蜘蛛の巣の網をどうにかしようと思ってもどうにもならず。捕らえられて、浮かぶままであった。
雲の破片らは、こちらには関心を示さない。気が付いていないようにも見える。四人を包む光が目くらましになっているかのようだった。
「……、あいつら、あたしたちに気付いてないの?」
「言われてみりゃあ……」
人狼や画皮らは香澄ばかり気にしている。そのことに源龍と羅彩女はやっと気付いた。
「世界樹が守ってくれてる?」
「この光がそう?」
リオンとコヒョは、自分たちを包む光が世界樹によるものだと理解するようになった。
「守られてるったってよお。このままじゃ何もできねーぜ」
「全部、香澄頼みってこと?」
「……。そういうことだね」
「香澄なら何とかしてくれるよ」
「仕方がねえなあ」
「あいつらを片付けて、あの七星剣でこの網を切ってもらうしかないんだねえ」
結局、四人は香澄に全てを託すしかないと観念する。
コヒョはいつでも香澄を飛ばせるように身構えている。が、その力も無限に涌き出るわけではない。
香澄もそのことを考えて、最初剣がかわされた時に着地して、コヒョの力を温存するよう気を配ったのだった。
で、人狼と画皮らは、どうするのかというと。
「てめえら、こっちゃこい!」
「合体だぞ!」
などと言う。それに呼応するかのように灰色の雲の破片は人狼と画皮のもとに集まり出して。さらに、雲と雲が溶け合ってひとつになるように合体してゆくではないか。
人狼と画皮も自ら進んでその中に取り込まれてゆく。取り込まれながら、
「目にもの見せてやる!」
などと意気盛んなことを叫んだ。
見よ、雲の破片は合体してひとつになってゆき。みるみるうちに膨らんでゆく。
膨らんで、あの、雲の皇帝にでもなるのかと思ったが。そうではなく、別のものに姿を変じてゆくではないか。




