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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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遇到公主

 公孫真は丁寧に、獣に苦労する庶民の話をして。貴志は頷いて、その苦労を少しばかり想像できるようになった。

「窮奇は我らには聖獣であっても、庶民には魔物なのです。そのような違いが出るのも、仕方がない話なのです」

「武侠小説では虎退治は話はよく出てたし。倒そうと思えば倒せるものだと思っていたよ」

「そんな簡単なものじゃねえぞ。特に子どものいる母虎は手強いぜ」

「虎退治をしたことがあるのかい?」

「ああ、まあな。やられたやつもいる。オレも死ぬ思いだったぜ」

「そんなにか」

 そんな虎が翼を得て空も飛べたら、攻撃は変幻自在。無敵の存在になる。

 翼をもつ虎、窮奇が王侯貴族にとって聖獣なのは、その恐ろしさを知らないのに加えて、強さにあやかりたいという気持ちの表れでもあった。

「そういえば、君とこうしてじっくり話をするのははじめてだね」

「なんだよ、あらたまって。気持ち悪いな」

「しかしなんだか色んな遇到(遭遇)があるなあ」

 源龍はそっぽを向くが、それが照れ隠しなのがわかっている貴志は笑って見過ごす。

 それを見て羅彩女はしみじみと、

「お上があんたらみたいな人ばかりなら、あたしら庶民は苦労しないで済むのにねえ」

 と言った。

 香澄はほほえんで様子を眺めている。

 劉開華は羅彩女の言葉が胸に刺さった。

「そのために、暁星の翼虎イグホに会いにゆくのよ」

「力を借りて、悪者と戦うんだよ」

 リオンが口添えする。

 世界樹の導きによって、集まった一行は、暁星にゆき聖獣・虎翼の力を借りて悪者と戦うという。

「世界樹は私たちに何をさせたいの?」

 香澄はふと、ぽそりとつぶやく。

 自分たちが悪者と戦うは、なんのため。なぜ自分たちなのか。その答えは、リオンも子どもも、わからないと笑ってごまかした。


 人食い鳳凰や鬼の騒ぎ。さらに宮殿から船が飛び立って、公主(姫)の劉開華が逃げ出したと。

 宮殿は上を下への大騒ぎがいつ終わるとも知れなかった。

 人食い鳳凰は失せても、鬼は残ったが。その鬼どもも、時間が経つにつれて、霧のように散って消滅していって。どうにか騒ぎは治まったが。

 あまりにも現実離れした非日常な出来事にただ驚くばかりであった。しかし驚くばかりもいられず、無理やりにでも現実に戻らなければならなかった。

 それでも、宮殿の飾りとして置いていた船が空を飛ぶなどありえぬという戸惑いをぬぐい切れず。

 皇族の失踪という、あってはならぬ醜聞が起こり。皇帝皇后の面子は丸つぶれであった。

「日ごろから反抗的ではあったが……」

 康宗は政を鄭拓に任せて自室にこもり、靖皇后とともに歯噛みしながら、命じた青藍公主捜索の報告を一日千秋の思いで待ちわびた。


遇到公主 終わり

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