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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我想展示

 あとには、空にぷかぷか浮かぶ雲の皇帝と、世界樹が残された。

 

 ……

 

 どのくらい、暗闇の中を漂っただろうか。 

 洞の中に吸い込まれ、あるいは飛び込み。

 香澄こうちょう源龍げんりゅう羅彩女らさいにょにリオン、コヒョの面々はそれぞれが視認できるくらいの距離間で、暗闇の中になぜか流れがあって、その流れに身を任せて漂っていた。

「一体全体どこに行かされるってんだ。ったく、ざけんじゃねーよ」

 さすがに源龍はへらず口を叩く。

 自分たちは水の中にいるのかどうか、身動きもままならず、流れに持っていかれるばかり。

 源龍も羅彩女も得物を手に、暗闇の中で手足をばたつかせてしまう。リオンとコヒョも、じたばた短い手足をばたつかせてしまう。

 香澄も漂っていたが、目を閉じ腰に佩く七星剣の柄と鍔、鞘に優しく触れて。その感触を確かめて。それから意を決して目を開けて、姿勢を正して。頭を流れの方向に向けて、人魚のように泳ぎはじめる。

 ふと、光が見えた。

「!!」

 光が見えた、と思ったら。その光から何かが飛び出て、広がって。香澄は咄嗟に避けたものの、他の面々、源龍と羅彩女にリオン、コヒョが、あろうことかそれにつかまってしまった。

 それは蜘蛛の巣だった。白く光り、光から飛び出て、広がって、四人を捕まえてしまったのだった。

 歴戦のつわもののはずの源龍と羅彩女でさえ、それを避けられなかったとは。

「なんだこりゃ!」

「こいつ、ねばっこくて切れないよ!」

「うひゃーいよいよやばいことになってるよ」

「むぎゅうう苦しい」

 蜘蛛の巣は網となって四人を捕まえて、ぎゅうぎゅうに包み込んでしまった。そのまま押しつぶされるかと思ったが、かろうじてのところで止まった。

 香澄は七星剣を抜いて、蜘蛛の巣の網を切ろうとするが。それは意思でもあるかのように、香澄から逃げるではないか。

 いや、見よ、蜘蛛の巣が飛び出た光が、それまでもが意思あるもののように香澄に迫ってくるではないか。

「……」

 香澄は七星剣を握りしめたまま、再び人魚のように泳いで、光に向かった。

 光は香澄を包み込んだ。その先に進めたのか、姿は見えなくなった。

「畜生、香澄のやつ、オレらを見殺しにするつもりか」

「香澄に限って、まさかそんなことはないよ」

「そうだよ、何か考えがあってのことだよ」

「だといいんだけどねえ」

 源龍は恨みを漏らし、リオンとコヒョは香澄をかばい。羅彩女は言葉もない。

 香澄を飲み込んだのか導いたのかわからないが、光はかわらず存在し、暗闇の中で光る。が、周囲がそれによって照らし出されることはなく。

 暗闇は暗闇だった。

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